もう、一年経ったのに。
気持ちは、まだ消えないまま、薄れないまま、ここにある。
思い出に残るその全てが……とても愛しい。
忘れられない、君に会いたい。
もう一度だけ、君に会いたい。



So long as you love me...


※作者の英語能力の都合上、
英語の会話部分は斜体になっております。


第7話、今もまだ…



 1 YEARS LATER……IN NEW YORK


「ねぇ、わたしと付き合ってくれない?」

その大学の入学式の終わりに、一人の綺麗な金髪の少女が、
少し年下と思われる日系の青年に話し掛けた。
しかし、そんな美人な少女の告白を、彼は即答で断わった。

「悪いけど、俺はあなたと付き合うつもりはありません。」

彼女がいくら青年にアタックをかけても、彼は何度でも彼女を振った。
今回もまた、ずっとマドンナ的存在だったような美貌を持つ彼女を。

「どうして?あなた、彼女いないんでしょ?」

私の何が不満なの?とでも言いたげな彼女に、彼は苦笑した。
確かに、彼には『彼女』と呼べる存在はいない。
けれど、彼の心の中には、もうずっと前から………

「彼女は、いませんよ。
でも…俺は一生そういう人を作るつもりはありませんから。」


彼はそう言って、うざったそうに行ってしまった。
頭のいいエリートばかりが集まる、ニューヨークでも有名な大学……
そこで、今年日本から入学した学生がいた。
その学生は…
そんな凄い大学側から特別な優遇を受けて入ってきた学生だった。
彼にまつわる噂は色々ある。

天才……だとか、ホームズ並の頭脳を持った名探偵だとか、
人の心を容易に見透かす男……だとか、
毎日何人もの美人女性にアタックされているにも関わらず、
片っ端から彼女らを振っている、とか。

「なぁ、お前何で断わるんだ?もったいないだろ。」

友人に尋ねられ、彼はいつも通りにどこか冷めた口調で答えた。

「悪いけど、こっちの女には興味ねぇんだ。」
「なんだ?日本に彼女でも居るのかよ?」


その言葉に、彼は寂しそうな顔で俯いた。

「彼女…か。『候補』ならいたかも知れねぇけどな。」

今でも、彼は悩んでいた。
どうして彼女に拒否されたのか、分からない。
そして、未だ彼女の事を忘れられない。

青年がアメリカにやって来たのは1年前。
心の底から愛した人と何故か喧嘩をしてしまい…
彼はこの学校にやって来たのだ。
そう、彼は言うまでも無く…本日大学生としてデビューした新一である。
学校中の人が大体彼を知っているのは、
やはり彼がこの大学に入る特別な条件もあっての事だ。
アメリカのなかでもかなりレベルの高いこの学校は、
授業がとても高度なため、英語が少ししか分からないような生徒は
とてもじゃないけど授業に追いつけない。
外国から試験を受けに来た受験生でも、試験の内容が変わる事は無く…
であるからして、入学試験を受けるには英語が既に自国語のように
ぺらぺらである事が第一条件なのだ。
だから、今までずっと日本に住んでいた彼が
入学金や学費免除等の条件までつき特待生として迎えられた事は、
初めての例だった。
そして、もう一つは彼が元々このアメリカで人気があったという事だろうか。
彼が高校生探偵工藤新一として日本で解決してきた様々な事件…
そして、国際的組織を壊滅させた彼の実績は、
アメリカ中に知れ渡っていたのだ。

「候補…ねぇ。お前にそんな甲斐性あったのかよ?」
「馬鹿にするなよ。俺だって…好きな女くらいは。」


友人が呆れた顔で言った言葉に、彼は苦笑して答えた。
まぁ、関係ない事だが…この友人の名はレオン。
大学に入る前に新一と知り合い、仲良くなった
20歳に成り立ての青年である。
彼も、今日新一と共に入学式を済ませてきた同期だ。

「でも、お前…もうちょっと早く決めてれば一年待つ事もなかったのによ。」
「しゃーねーだろ。俺にだって色々あるんだよ。」


新一がいくつもある大学からこの学校に決めたのは、入学式が既に終わった後だった。
編入制度のないこの学校では、いくらなんでもそこまでの特例は認められず…
一年待つ羽目になってしまったのだ。
その一年と言う間、混乱を防ぐため、
新一がこの大学に決めた事は内密にされていたのだが、
新一は彼なりに学校の雰囲気を掴もうと一年間何度か見学に訪れていたため、
そこで同じように見学に来ていた受験生と出会い、今ではかなり多くの友人がいる。

「それにしても…お前本当に凄いよ。
この一年間先輩やら受験生やらに告白されつづけて……結局皆振っちまうんだもんな。」
「だから、さっきから言ってんだろ?俺はこっちの女には興味ないって。」


すると、レオンは少し不満そうに新一を見つめた。
そして、その後…何かを思い出してにやけ顔で新一に言った。

「そう言えば、知ってるか?今回の新入生…
この学部に、お前とタメの日本人が入ってんだってよ。しかもかなり可愛い女。」
「へぇ……。」

急に輝いた顔で何を言い出すかと思えば…と、新一は興味なさげに返事した。
レオンは意外そうに新一の顔を覗き込んだ。

「何だよ、お前興味ねぇの?日本人の女だぜ?」
「あぁ。日本人だったら誰でもいいってわけじゃねぇんだよ。」


新一は苦笑しながら言った。
日本人は滅多に見ない大学だから、珍しいといえば確かにそうだが。
自分が手に入れたかった女は、ただ一人。
彼女以外に、新一が欲しいと思う女はいない。

「あーぁ、新一は硬いな。折角モテるくせに、勿体無い!
お前が彼女作ったら、俺は多分驚きのあまり寝込むぞ?」
「んな、おおげさな。」


新一はレオンの言葉に、再び苦笑させられた。


入学式から3日後…大学にも大分慣れてきた。
そして、これから始まる講義はあまり感心の無い講義……
ここで初めてそのレオンが言っていた『日本人の可愛い彼女』とダブるそうだが…
講義が始まる前から、新一はすっかり眠っていた。
十分前にはここにいたため、
寸前にくる受講生の声に邪魔される事なくすんなり眠れたのだが…

しかし、突然隣に座ってきたその女に、彼は数秒で起こされた。

「……何だよ?」

だるそうに目をこすりながら隣を見た彼は、一気に眠気を覚まされてしまった。
驚きのあまり、夢の延長戦ではなかろうかと、目をこすった。
その彼女は、真面目な表情を浮かべていた。

「死ぬ気で勉強して苦労して入った私と違って……あなたは推薦されたんだから。
授業ちゃんと聞かないのは、失礼だと思うんだけど。」

新一が知っていた彼女とは、比べ物にならない流暢な英語…
一年前よりも、より綺麗で女らしく成長している彼女……

「お、お前………」

新一は、目を見開いた。
だって、信じられない……ここに居る筈はないのだ。
彼女は、その大きな瞳で…じっと新一を見つめていた。






〜最終話へ続く〜










作者あとがき。
こんばんはっv朧月です。
さて、ついにここまでやって参りました。
ついに……ついに最後の時が!!
さてさて、一体恋の行方はどうなるのでしょう!!
…今回はあんまり喋らない方がよろしいかもね。
やっと……やっとですよ。
次回、ついに最終話!!
今回も読んでくれて本当にありがとうございます。
あと少しだけ、お付き合い下さいませ。

それでは、感想などなどお待ちしてますっvvv
ではでは〜vvvvv