もう、会えない……
こんなに、会いたいのに……、こんなに、伝えたいのに……
貴方にはもう、二度と会えない……?
………新一………こんなに、大好きなのに。

暗闇に、ぽたぽたと涙だけが零れ落ちた。



So long as you love me...


第6話、永遠のさよなら?

翌日、帝丹高校ではクラス中が集まって、ざわざわと話し合っていた。
驚いたような顔をしているもの…
悲しそうに、寂しそうにしているもの…
皆、一つの話題で持ちきりだった。
蘭が教室の中に入ってくると、教室がまたいっそうざわめいた。

「蘭……あんた学校来ていいの?」

園子は、心配そうに蘭に近寄った。
蘭は、意味が分からないと言った顔で、首を傾げる。
全く、質問の趣旨がつかめない。
蘭が園子にその意味を聞き返そうとすると、クラス中が口々に蘭に言った。

「毛利…今日みたいな日に無理して来なくていいんだぜ?」
「そうよ、蘭。確かに、最近蘭と工藤君なんかギクシャクしてたみたいだけど…」
「やっぱり、ショックだよね。気落ちしないでね…」
「元気出して。」

全く、何が言いたいのか分からない。
今日みたいな日って…どういう事なのだろう。
しかし、皆は当たり前の事のように次々と自分を励ましてくる。
蘭は怪訝に思いながら、勇気を持って聞き返した。


「あの………何の話?」


蘭の疑問に、クラス中が一瞬にして静まり返った。

「蘭、まさか……聞いてないの?」
「知らないのか?工藤のこと……」

「新一の……事?」

蘭が不思議そうに聞き返すと、周りは困ったような
複雑そうな顔で、ひそひそと話し始めた。
何となく、そんなみんなの態度に不安になる。

「ちょっと、何の話なの?」

すると、園子が蘭の目の前に立って、真剣な顔で蘭と向き合った。

「蘭……落ち着いて、聞いてね。」

園子が、珍しく深刻そうに話はじめた。
蘭は、恐々と頷いた。

「新一君の、事なんだけど……」
「新一が、どうかしたの?」

不安になって、聞き返す。
園子は、いいにくそうに一瞬躊躇したが、それを蘭に言った。


「新一君ね、退学届出して…アメリカに行ったの。」



「アメ…リカ??……何のために?」 「私たちも先生から聞いたんだけどさ、アメリカで大学入るって。
こっちの高校、ほら。出席日数がやばいから。
でもあっちなら高卒なくても工藤君の事受け入れてくれる所たくさんあるからって。
あやつ、何考えてんだか、誰にも行き先告げないで突然……
蘭なら聞いてると思ってたんだけど……」

園子の言葉を聞いた時、私の頭は真っ白になった。
アメリカって、どこの事だろうなんて、そんな事をぐるぐると考え込んだりもした。
心配そうに、周りが私を呼ぶ声が聞こえたけど……
私の耳には何も入ってこなかった。

どうして…?
退学届……?何でそんなもの?
アメリカ?どうして、そんなところに?
居てくれるって…言ったじゃない!!!
もう、ずっと一緒に居てくれるって、言ってたじゃない!!!
どうして、私に黙ってアメリカなんかに行っちゃうの?
どうして、また私の目の前から居なくなっちゃうの?

真っ白になりながら、ぐるぐると同じような考えをめぐらせている私に、
園子が言った。

「蘭!しっかりして。飛行機…AM10:00前後のなんだって。
今から急いでいけば…もしかしたら間に合うかも知れない!!」
「何処……?何処の空港!!?」

園子の言葉に一瞬正気に戻った私は、彼女に尋ねた。
焦ってるせいで、自然と声が怒鳴り声になっていた。

「成田よ!!急いで、蘭!!」

急いだとしても、ぎりぎりだ。
しかし、蘭はそのまま来た道を走っていた。
必死になって、全速力で彼女は走った。

(お願い…間に合って!!)

蘭はタクシーを拾って、間に合う事を祈った。
こんな形で、別れたくない……
頭の中はそんな思いでいっぱいだった。

AM9:58…蘭は空港に辿り着いた。
急いでタクシーから降り…空港の中に走りこむ。

(新一……まだ、まだ行ってないよね!!?新一!?)

蘭は、急いで出発予定の表を手にしながら、新一を探した。
しかし、彼女はその予定に全て目を通してから、唖然とした。
10:00前後発で新一が乗りそうな便と言えば…
10:00ちょうどか、10:00前のしかない事に気付いた。

「嘘…嘘でしょ?新一!!」

空港では、次々と出発のアナウンスが流れている。
蘭はたまらなくなって走り出した。
もしかしたら、もしかしたらまだ何処かに居るかも知れないという淡い期待を胸にして。

「新一…新一!!」

探していると、ポケットに入っていた携帯が震えた。
蘭は慌てて電話に出た。

『蘭!?私!!』
「園子?」
『新一君、AM10:00ちょうどのNEW YORK行きだって!!
間に合った?ちゃんと会えた?』
「10:00…ちょうどの、NEW…YORK?」

蘭は恐る恐る出発のパネルを見た。
『AM10:00 NEW YORK 搭乗中』

蘭は、弾かれたように走り出した。

新一!!まだ飛行機乗らないで!!

必死で、心の中でそう叫びながら、走った。
止める手を振り切って、飛行機の、搭乗口まで。必死で、走った。
けれど、そんな思いが届く事はなく、
無情にも…新一を乗せた飛行機は離陸し、空高く飛び上がっていた。
蘭は、飛び立っていく飛行機を見つめ…その場にへたり込んだ。
開けられたままの瞳から自然と零れ落ちる涙が、周りには妙に痛々しく映った。

「新一…………新一ぃ…………」

呆然とその名を呼んでも、答えてくれる人は既に空の上。

(どこにいるかわからない……私、もう、新一に……会えない………?)

「いや…いやぁ!!新一っ!!新一ぃ!!!」

どれだけ叫んでも、もうあなたは居ない。
どれだけ叫んでも、もうあなたには届かない。


蘭は、色々な人に見られているという事も忘れて……
大粒の涙を流して、泣き崩れた。






〜第7話へ続く〜










作者あとがき。
どうもこんにちは、朧月です!!
第6話ですが……暗い、暗いよっっ!!
何よ、このサブタイトル……「永遠のさよなら?」って。
さよなら系の言葉はいれようと思ってたけど……
残酷だよぉっ(焦)
やっと誤解は解けたのに、すれ違い頂点に極まる!!?
新一は蘭に黙ってアメリカへ……
一体、二人はどうなってしまうのでしょうかっ!!
朧のどこまで載せるかって言う実に下らない気まぐれで変わってくるでしょうが、
次回かその次辺りで最終話です!!(多分)
まぁ、終わったとしてもエピローグもあるんだけどね。
では、今回も読んでくれてありがとうございました!!
次回も、是非読んでやって下さい!!!
それでは、感想お待ちしてますっ!!!
ではでは〜vv