ずっと、待たせてた。
やっと、この姿で再会できたんだ。
だから、絶対に幸せにしたいと思った。
君が嬉しそうに笑ってくれていたから、
何で怒らせてしまったのかどうしても分からなかった。



So long as you love me...


第3話、〜回想(新一)〜『あの日』

やっと、全てが終わって……
灰原が解毒剤を作ってくれて…
元の身体に戻ってすぐに蘭に会いに行った。
まだ体調が安定している状態ではなかったけれど、
一刻も早くあいつに会いたかった。
一刻も早くあいつの顔が見たかった。

毛利家に…ついこの間まで俺が住んでいた所の前に立って…
蘭の携帯に電話して…

『もしもし?』
「よぉ、蘭か?」

一瞬黙り込んだ蘭だったが、次には嬉しそうな声が聞こえた。

『新一!?久しぶりじゃない。どうして連絡くれなかったの?』

随分の間、新一として連絡していなかった。
蘭を、危険な目にあわせたくなかったから。

「悪いな、蘭…それでさ、俺今何処にいると思う?」
『え?何処にいるって、私が聞きたいくらいよ。』
「窓、開けてみな。」

その後2秒も経たないうちに、窓ががらっと開いた。
驚いた顔で俺を見つめている蘭に、俺は軽く微笑んだ。

「し、新一?新一!!?」

電話はどこにいったのやら、蘭は嬉しそうな顔で俺の名を呼んだ。
そこで待っててと言って、ばたばたと階段を下りてくる。

「新一、あんた一体今までどこで何してたのよ!!」

蘭の瞳から、ぼろぼろと零れる涙。
勘弁してくれよ、お前の涙はもう見たくねぇんだ。

「ばーろ…泣いてんじゃねえよ。もう、どこにも行かねぇから。」

そう言った俺の顔を、蘭が大きな目を更に大きく見開かせて見つめた。

「本当?」
「あぁ。」

すると、蘭の顔が笑顔に変わった。
柔らかい、とても綺麗な極上の笑顔。
蘭は、目に涙を溜めたまま、その最高の笑顔で俺に言った。

「新一!お帰りなさい!!」

その『お帰り』という言葉が、とても温かく感じて…
やっと、帰って来れたんだなぁ…と実感した。

「ただいま、蘭。」

そう言って、俺も蘭に微笑んで見せた。
もう、ずっと大切にしたいと思った。
絶対に、一生離れたくないと思った。
心の中で、俺はそれを決心した。

「新一、外にいるのも何だから、家入って。
美味しいコーヒーでも入れてあげる。」

そう言った蘭の言葉に甘えて、蘭の家へ入った。
おっちゃんは、今仕事でいないらしい。
まぁ、居たら絶対家に入れてくれなかっただろうけど。
蘭の家の中で、俺は蘭に今までずっと隠してたことを打ち明けた。

「蘭、話があるんだ。」
「何?」
「俺……本当は、ずっとお前を騙してたんだ。」
「………コナン君の、事?」

蘭の言葉に、俺は少なからず驚いた。

「お前……」
「何年新一と一緒に居たと思ってるの?
私をあんまり甘く見ないで。」

蘭は、俺を責める様子は全くなく、ニッコリ微笑んでいた。
気付いてたのか…こいつ。
あれだけ何度も疑われて、その度に納得させて来たってのに。

「ああ、そうだよ。工藤新一は、江戸川コナンだ。」

全く驚かない所を見ると、半信半疑ってわけでもなくて…
確信してたって事か。
蘭は、次の俺の言葉を待っていた。

「ごめんな、蘭…今はそれしか言えねぇんだ。
いつか、時が来たら全部話すから…待っててくれねぇかな?」

もしかしたら、まだ組織の残党が残っているかもしれない。
警部が今必死で調べてくれてるけど…絶対に安全だと分かったわけじゃない。
だから、その報告があるまで蘭に話すわけにはいかねえんだ。

「待ってて…か。新一、あんたいつまで私のこと待たせとくつもりなのよ?」

ジト目でそう言った蘭だったけど、別に怒ってる様子も全くなくて……
しょうがないなぁ…と呆れたような声で溜め息をついた蘭が…
何だかとてもいとおしかった。


俺はずっと蘭を待たせてたから、だから決めたんだ。
もう、蘭を待たせたくないって。
その後しばらくは平和な日常だった。
蘭も、俺がコナンだった時とは違って凄く幸せそうで…
俺はいつも蘭と行動をともにしていた。
今までの分も、一緒に居てやろうと思っていた。
こいつを、安心させる形になるモノが欲しかった。
だから、俺は…あの帰り道…………

「蘭、あのさ…俺…………」
「どうしたの?新一?」

蘭の家の前で、別れようとした蘭の手を掴んで、話があると切り出した。

「俺、ずっと……お前の事が好きだったんだ。」
「えっ?」

蘭が驚いた顔で、俺を見つめた。
俺は、そんな蘭を抱きしめた。
きつく…きつく……
もう、俺は何処にも行かないから。

「ずっと、ガキの頃から……俺はお前が好きだった。」
「し…んいち??」
「決めてたんだ。戻ってきたら、お前に言おうって。」

やっと、言えた。
俺はしばらく蘭をそのまま抱きしめていた。
蘭を放した後、俺はポケットの中から、そっとそれを取り出した。
蘭に渡す為に、この一週間ほど必死で悩んで購入した、その指輪を。

「新一……これ?」
「高校、卒業したら……俺と結婚して欲しいんだ!!」

蘭は嬉しそうに微笑んだあと、けれど少しはにかんで言った。

「ごめんね、私も新一が大好き。だから凄い嬉しいんだけど……
返事、もうちょっとだけ待って。」
「あぁ、いつでもいいよ。」

そりゃあ、普通の告白じゃねえんだ。
プロポーズされたら、女だったら少しは迷うよな。
心の準備とかも、いるだろ。
そう思って、そのまま蘭と別れて……

俺は家に帰った。
けれど、まさかその後あんな事になるなんて、思ってなかったんだ。
何を怒っていたのか、全く分からない。
次の日蘭と約束してて…家に会いに行ったら……
蘭は何故か凄く怒ってて、泣きながら俺に本気で空手技を使ってきたんだ。

「新一のばか!!最低!!!」
「お、おい…蘭?」

わけが分からずに、何とか避ける。
本気で当てるつもりで繰り出してきた蹴りだ…
見慣れてた俺でも一瞬くらいそうになった。

「酷いじゃない。私は…アンタのこと……っ」
「おいっ、全然意味がわからねぇよ!!お前、何怒って……」
「私にそれを言わせるつもりなの!?心当たりあるんでしょ!?」

必死で考えたけど、全く思い当たる事がない。
だって、前日にプロポーズした時だって、お前は幸せそうな顔で…
俺と笑顔で「またね。」って言って……
俺が、何したってんだ?

「いいからっ…落ち着けよ!!一体何が……」
「落ち着けないわよ!!新一なんか、大嫌い!!」

プロポーズの返事を待ってるときにその言葉を聞くのは…
正直凄く辛かった。
けど、何か理由があるに違いないと思って…

「何でだよ?わけ教えろよ。」
「新一……本当にしらばっくれるのね。
ごめん…今は何も話す気になれないの。今日は、帰って。」

そう言って、俺の背中を強引に押して家の中から出そうとしている蘭。
俺は何が何だかわからなくて、冷静に話し合いがしたくて……
だから、蘭の手を振り払った。

「いいから落ち着けよ!!何が何だか分からないまま帰れるかよ!!
俺がいつお前に酷い事したってんだ!?」

いや…コナンの時はたくさん嘘ついてたけど………
でも、ここ最近で蘭をそこまで傷つけて怒らせるような事した覚えはない。
けれど、蘭は昨日俺が渡した指輪を、俺に投げつけた。

「その指輪だって、嘘なんでしょ!?」

何で、そんな事思ったのかは分からないけど……
俺の真剣な気持ちは伝わってなかったようで…
昨日はあんなに嬉しそうにしてたのに、何でだ?と思いながら…
ただ、もう一度蘭に伝わらなかった気持ちを伝えたくて…
俺の気持ちを聞いて欲しくて…
俺はあいつに言ったんだ。

「おい、蘭!!話聞けよ!!」

けれど、あいつは泣きながら耳をふさいだ。
傷ついた顔で…俺と目を合わせないように俯いて……

「言い訳なんか、聞きたくない!!」
「言い訳じゃねーよ。いいから、聞いてく………」


「お願いだから!もう私の事ほっといて!!話し掛けないで!!!」


俺の言葉を遮って言った蘭。
その言葉には、結構ショックを受けた。

何でだよ?
俺がいつお前に話し掛けられるのも嫌なほど怒らせる事したんだ?
俺がどうしてそこまでお前を傷つけたんだ??

頭の中では、そんな考えだけがぐるぐる回って……
何も考えられない、真っ白になって……

「……分かった。蘭が答え出すまで、俺はもうお前には話し掛けないから。」

俺はそう言って、蘭の家を後にした。
その日は、もう呆然としてしまって…
どうやって自分の家に帰ったのかすらわからない。
ずっと、必死で考え込んでいた。

「蘭、俺…何か悪い事したか?」

真っ白になりながらソファに腰掛け、誰もいない部屋の中で一人問い掛けた。
蘭……どうして、そんな傷ついた顔してるんだ?
どうして…そんな泣いてるんだよ。
そんな考えでいっぱいで……その日は本当にそれしか考えられなかった。

次の日学校に行く時も、今日は一人で行く事になるだろうと思ったから早めに起きたけど…
ちょうどその時間になって、出ようとしたときに、チャイムが鳴った。
出てみると、そこに蘭がいて……
もう怒ってないのかな?と思って、安心して蘭に話し掛けようとしたけど…

「蘭、おはよ。」

けれど、蘭は無言のまま顔をそらせた。
そして、そのまま歩き出す。
まだ、怒ってんのか……
そう思って、俺は溜め息をついた。
そう言えば、怒った時でも、迎えに来る事あったよな……
昔、蘭と大喧嘩して、まだ機嫌が直ったわけでもないってのに、
学校行く時にうちに来て…喧嘩しながら一緒に学校行ったんだっけ?
後で、蘭のヤツ「新一の家に行くのクセになっちゃってるから。」って…
そう言ってたんだよな。
そんなに、話がしたくないなら……俺も蘭には何も話さない。
それで、ほとぼりが冷めるなら……
それで、蘭の機嫌が直るなら。

そんな事を考えながら、登校した一日目。
けれど、さすがに蘭が目の前に居るのに会話しない状態は辛くて…
他の奴等に何か聞かれても、俺には全く思い当たる事がなくて…
だから休み時間が来るたび逃げてた。
大抵屋上か図書室だったけど……
本当なら休みたかった学校も、今までの休校のせいで休むわけにいかなくて。
そんな状況でも、授業だけは出るしかなかった。

家に帰った所で、蘭の事で頭が一杯で…
食事をする気にもなれなかったし…
夜も上手く寝付けなかった。
蘭が居る時は、よく食事作りに来てくれたり…
作った食事を持ってきてくれたりしたけど…
俺は、蘭がいないと駄目なんだ。
それだけは、とても実感させられた。


「そろそろ、自分の気持ちにけじめつける時期なのかな?」

彼は苦しげに微笑み、病室から出て行った。
病院から外に出て、携帯電話を取り出し、何処かにかけた。

「あ、もしもし?俺だけど。…例の件、受けようと思うんだ。」

神妙な顔つきで、電話をし終えた彼は溜め息をついた。
いつまでも、蘭に頼ってばかりはいられない。
自分なりの、けじめ。






〜第4話へ続く〜










作者あとがき。
こんにちはっv朧月です!!
第3話です。そしてちなみに今現在執筆してるのは、最終話です(笑)
ちょっとだけ、何があったのか明らかになりましたでしょう?
けど、一体蘭ちゃんは何を怒ってしまったのでしょうか?
そして、例の件とは??
それもちゃんと明かしますので、ご心配なく(^^;;;
一気に完結までアップするのもつまらないしなぁ…
ここは朧の得意技、じらし攻撃でも(おいっ)
あの日からずっと……も、実は話作るっていう段階はもう終わってしまったので。
これと同時進行でアップしようかと。
ではでは、次回も是非見てやって下さいね!!
感想などなど、お待ちしてます!!
ではでは〜vvv