ねえ。君がいないと、俺は駄目なんだ。
どんどん、壊れてくんだ。何も、出来ないんだ。
だから、俺の元に……帰って来て欲しい。



So long as you love me...


第2話、君が居ないと…

あれ?ここは、どこだろう………

見回しても、どこか幻想的な世界。
それなのに、何故か温かくて優しいものに包まれているような、
そんな感じがして。
とても……、とても温かく感じる。

あれ、蘭……?

前方には、蘭がいた。
後姿は、どこか穏やかで。
もし、今話し掛けたら……もしかしたら普通に話せるだろうか。
そう思って、声をかけた。けれど。

「蘭?何してんだ?こんな所で。」

振り向いたその顔は、何故か怒ってて……
おい?何怒ってんだよ?

「おい、蘭?」

俺が話し掛けようとすると、蘭は目に涙を溜めて耳をふさいだ。
ズキン、と心が痛む。

「お願いだから!!もう私の事ほっといて!話し掛けないで!!」

そう言って、走って行ってしまった蘭を、俺は慌てて追いかけた。

「おい待てよ、蘭!!何で、そんなに……」

けれど、その後姿はどんどん消えていって……
ついには、いなくなってしまって…

「蘭?どこ行ったんだよ?返事しろよ!!蘭!!!」

俺は、お前がいないと……
お前がいないと、駄目なんだ!!

必死で、伸ばした手は……どこにも届くわけがなく、
どこか、寂しい……真っ白な天井に向かって伸びていた。
はぁ、はぁと荒い息が、それが現実なのだと、思い知らせる。
彼は出した手をそっとベッドに下ろした。



目が覚めた時、そこは病院だった。
横を向くと、もう外は暗くなっていて……
起き上がって見ると、何故かその戸は僅かに開いていて……

「あれ?俺何でこんな所に……」

ぼんやりとした頭をすっきりさせようと、ぶんぶんと勢いよく首をふって。
思い出そうとして、考えを巡らせる。
微かに、覚えている……落ちていくビジョンが、頭に浮かんだ。

「そうだ…俺……」

階段で足を踏み外して、そのまま…

思い出してあまりの情けなさに苦笑した新一だったが、
ふと自分の隣を見て、首を傾げた。

そこに置いてあったのは、見るからに冷えた……

一本のポカリスエット。

「何で…誰がこんなもの?」

困惑しながらも、それを手にとった。
ひやっとした感触に、思わず目を閉じる。
案の定、それはとても冷えていた。
運ばれてきた時に先生が置いたとは思えないほどに。
誰か、ついさっきまでそこにいた人が、
目を覚ます時間を見計らって冷蔵庫から出しておいたとしか思えない……

「園子、とか?いや、あいつはそんな気の利いた事するヤツじゃねえし。
じゃあ…………」

彼は頭の中に浮かんだ人物を意識的に削除した。
彼女のわけがない。
彼女とは、ずっと口を利いていないのだから。
許して、看病してくれていたなら、彼女はまだここにいる筈なのだから。
もしかしたら、彼女が……なんて、自分にとても都合のいい考えだ。

「馬鹿みたいだな。俺……」

自嘲して、そのペットボトルを見つめる。
ふぅ、と一息ついて、フタをあける。
とりあえず、ここに置いてあるという事は飲んでいいという事だろう。
あけたフタを隣の、さっきまでそれが置いてあった位置にことりと置いて、
飲み口を口元へと持っていった。
ごくりと飲むと、それは渇ききっていた喉を潤してくれた。
ゆっくりとした動作で、再びキャップを締める。

「こんな事してくれんのが、アイツしか思い浮かばねぇなんてな。」

新一はそのポカリを見つめ、優しく微笑んだ。
まだ若干頭痛はすれども…気分は大分よくなった。
ふぅ…と一度だけ溜め息をついて、彼は再びベッドに横たわった。
元に戻った日の事を、思い出す。






〜第3話へ続く〜










作者あとがき。
こんにちはっv朧月です!!
第二話も読んでくれてありがとうございます!!
それにしても、何なんだろうこの短さは…(汗っ)
いや…次回は長くなる…筈。
ここで区切らないと、区切りが悪くなっちゃうから
次回、彼らのに何があったのか、ちょっとだけ解明いたします。
一体、どうして二人はこんなになってしまったのか……
次回、お楽しみに!!
感想、お待ちしてます!!
ではでは〜vvv