突然の知らせに、私は心臓が止まったかのように思えた。


遺された者の哀しみ…

お姉ちゃんが死んだ………
組織で薬の研究をしていた私の元に、信じられない知らせが飛び込んできた。
自分にとって唯一の肉親であり最も大切な存在である姉、明美が殺された………
何故…?どうして……??
お姉ちゃんは本当にもう居ないの??
本当にもうこの世から消えてしまったの……??
嘘だよね………お姉ちゃん?
だって、だって……大丈夫だって言ってたじゃない………
あんなに元気に笑いかけてくれてたじゃない……
あんなに明るくて優しくて……そんな笑顔を見せてくれてたじゃない……
いつも通りに別れて………それから何があったの!?
どうしてお姉ちゃんが殺されなきゃならないの……!!?
殺したのは……誰!?
どうして私はお姉ちゃんを殺した組織のために薬を作っているの……!?
お姉ちゃんは…いつも私の事を考えてくれてたのに……
お姉ちゃんは私を組織から抜けさせる為に、組織の仕事に手を染めるまで、
普通の生活をして、普通の女の子と同じように暮らしていたというのに……
どうして殺されなきゃならないの……!!?

私に渡された一枚の新聞。
そこにはお姉ちゃんが死んで運ばれる時の写真が写されていた。
その傍らには、見知らぬ顔の人が居た……
一人は中年の男。最近テレビなどで噂の眠りの小五郎。
そして、小学一年生ぐらいに見える眼鏡の少年と、
自分と同い年くらいの少女が悲しそうにたたずんでいた。
それを見たとき、私はお姉ちゃんの言葉を思い出した。
彼が………江戸川コナン。
子供のくせに落ち着いていて、大人っぽくて、工藤新一の近所の探偵事務所の子………
まさか、彼が工藤新一?
そう考えればつじつまが合うわ。彼がお姉ちゃんの死を見とったの?
どうしてお姉ちゃんを助けてくれなかったの?彼は、名探偵なんじゃなかったの??

お姉ちゃんが死んだ以上、私は生きる意味を失ったわ。
お姉ちゃんが居ない世界で生きていても、仕方が無いもの。
どうしてお姉ちゃんを殺したのか彼等に問い詰めても、何も教えてくれない。
お姉ちゃんは私を組織から抜けさせようとしていた。
お姉ちゃんが死んだ理由を教えてくれるまで、薬の研究なんか中断してやる。
それで例え死んだとしても、あの世でお姉ちゃんに会えるだけだわ。
組織に対抗した私は、研究所の個室に拘束された。
後は上からの処分決定を待つのみ………待つまでも無い……私は分かっている。
裏切り者には死を…………これが組織のやり方。
どうせ殺されるなら、あの薬を飲もうと思った。
飲んで、私は死ぬ筈だった。
身体は熱くなり、心臓の鼓動が段々と激しくなってきて、
骨が溶かされているようなそんな感覚を覚えた。
死ねる……そう思った。

………………でも…………………

全ての発作がおさまったとき、私の身体は縮んでいた。
私の手は、手かせから解放されて、
十八歳だった筈のこの身体は、小さなダストシュートから脱出できるほど縮んでいた。
私はそこから脱け出した。
私は必死で走った。何処にも行く当てが無い私は、彼の事を思い出していた。
…工藤新一…。彼の家まで行くしかなかった。
私と同じ状況に陥った彼なら、私の言う事を分かってくれる。
……………それに、彼なら何か知っているかも知れない。
お姉ちゃんが死んだ時の事。その場にいた彼なら何か知っているかもしれない。
お姉ちゃんの最期を知っているのは彼だから……
お姉ちゃんに最期に会ったのは、彼だから……
彼がどんな人なのか……お姉ちゃんと最後に交わした会話は、彼の話だった。
「お姉ちゃんは、大丈夫だから」……「大丈夫だから」…………
そう言っていたお姉ちゃんはその後殺された。
そしてそこには彼が居た。どうして……??大丈夫って、言ったじゃない!!
彼に会ったら、彼を試そう。そう心に決めた私の目の前に『工藤』と書かれた表札。
着いた…………ここよ……。安心した時、気が遠くなってきた。
そして、私はその場に倒れた。雨に打たれて、とても冷たかった。

 
                                         〜Fin〜












・・作者あとがき・・

いかがでしたか?ここでは、志保が明美さんの死を知って、組織を裏切る所ですね。
志保ちゃんの哀しみと、明美さんへの思いというテーマです。
志保ちゃんから哀ちゃんの話です。
最初の話と逆で、今度はお姉ちゃん思いの妹を書きたかったのですが、
これを読んで、分かっていただけましたか?
彼女が哀ちゃんと言う名前になって、
コナン君と会うのは、この話よりもう少しだけあとの事。
で、しぶとくもまだ続きがあります。
次の話は、哀ちゃんを見つけた阿笠博士。彼のお話です。
そして、その次にまた哀ちゃんの話を入れるつもりです。
そしてそれぞれの思いというか、
そういうものをうまく表現できたら……と思うのですが。
……出来てますか?
そういうのは読者次第ということもあるので、なんともいえません。
とりあえず、ここまで読んでくれて、有難う御座います。次回作も…乞うご期待!!
…あんまり期待しない方がいいかも知れませんが。
次もよろしくお願いします。