☆☆☆3、昼休み? 親友☆☆☆ 「ねぇ、園子……新一って、私のことどう思ってるのかな?」 すれ違いの続く日々を思い、蘭は溜め息をついた。 太陽がさんさんと照りつける中、彼女は園子と学校の格技場に面した壁に向かい合って腰掛け、昼食を取っていた。 先ほど二人で購買で買って来たパンを一欠けらちぎって口に運びながら、隣で小さく呟いた親友を見て、園子も心配そうな顔を浮かべた。 「どうしたの、蘭……新一君と何かあった?」 園子は身を乗り出し、彼女の顔を覗き込んだ。 蘭は元気のない顔で、そのパンを再び一欠けら口に運ぶ。 ゆっくりと、静かにそれを丁寧に咀嚼し、重々しげに飲み込んだ。 そのまま辛そうな顔でちぎれたパンを見つめた彼女は、やがてその口を開いた。 「うん、新一って……私の事小さい頃からいつも守ってくれててね。喧嘩することもあったけど、優しくて、頼りになって……いっつも強くて。気がついたら、私アイツの事好きになってたの」 そう話す彼女から、いつもの恥ずかしそうな、照れているような、そんな様子は全く伝わってこない。 伝わってくるのは、どこか暗い雰囲気だけ。 「う、うん……」 園子は、怪訝な顔で隣の親友の話を聞いていた。 何年も、長い付き合いだけど……彼女がこういう話をするのは非常に珍しい事で。 相談されてる事自体には嬉しさを感じたが、同時に大きな戸惑いを隠せなかった。 蘭は悲しげに微笑み、話を続けた。 「……私ね、何だかんだ言ってても、皆に色々からかわれてるうちに、心のどこかで思ってたみたいなんだよね。新一も、もしかしたら私の事……なんて」 「蘭……新一君は…………」 園子は、蘭の言葉を遮って、彼女に伝えようとした。 どう見ても、彼は蘭の事をそういう対象としてみていると。 蘭と新一が長い付き合いなのと同時に、園子と新一もまた長い付き合いなのだ。 彼が他の女を見ている目と、彼女を見ている目が明らかに違っている事は、もうずっとずっと昔から知っていた。そして、蘭もまた彼の事を想っているということも。 だからこそ、この二人にはずっといいカップルで居て欲しかった。お互いに、結ばれて欲しくていつもからかいながら二人を見守っていた。 これだけ男に弱い自分が、相当女にモテる筈の新一の事は全くそう言う対象として見れないのも、もしかしたら、そう言う感情が元からあったからかもしれない。 新一は、蘭だけのもので、蘭は新一だけのものだという、 勝手だけど間違いないはずのその感情が。 蘭は俯きながら話す。 「新一ね、私の気持ち知ってても、何も言わないの。きっと、困ってるのよ。あいつあれで結構優しいから……どうやったら傷つけずにふれるかなんて、そんな事考えてるのよ。新一にとって、多分私は恋とかそういうんじゃない、妹みたいなものなの」 「ら、蘭、そんな事ないよ! 新一君は……蘭のこと!!」 言いかけて、止めた。蘭が悲しい顔で微笑んでいるのを見たら、園子の口からそれ以上、言葉が出なくなってしまった。 「ありがとう、園子。……ごめんね、心配ばっかりかけて」 彼女は悲しい顔で微笑みながら言った。 そんな顔は、見たくない……いつも幸せそうに笑ってて欲しい。 新一が帰ってきたとき叶ったはずだった親友としての願いは、再び未来へ先送りされてしまった。 彼女が悩んでいる原因は、園子にも大方検討がつく。 恐らく、最近転校してきた飯島希美。 (新一君は、蘭のものだってのに、隣の席になったのをいい事に馴れ馴れしくしてるあの図々しい女よ!) 蘭をここまで苦しめていることに気付かない新一への怒りも、ふつふつと湧いてきた。 (飯島希美に、新一君……蘭を悲しませたら、私が許さないんだからね……!!) 彼女の心に、怒りの炎が燃え上がり…… 考えたら即実行に移すべく、手元にある、一口分しか欠けていない、まだ少なくともソフトボール大はあるパンを、一気に口の中に押し込んだ。 隣に座る蘭の驚きの視線を浴びながら、園子はそれを噛む事もなくミルクで流し込んだ。 立ち上がり、もの凄い速さで教室へとかけて行く。その時間、合計して僅か三〜四秒。 残された蘭は、何が起きたのか理解など当然出来ずに呆然としていた。園子がかけて行った後の煙が舞ったその道を見つめて、ぽかんとした表情をそのままにパンをもう一ちぎり口に運んだ。 〜第四話に続く〜 作者あとがきっ!!! 4869番、倖希様のリクで… 「新一と蘭ちゃんの間に割って入ろうとした女の子の話」 第3話ですっ! 今回は、初の園子と蘭二人だけ! だからか、短い……^^;この間、微妙に加筆してまあましになったかなって感じで。 次の話に行くつなぎの役割してます。……園子ちゃんの心情を書きたかったの。 園子ちゃんは、私より新蘭に思い入れがあるだろうと(笑) 何せ、小学校の頃からずっと二人を見てきたんでしょうから。 次も実は出来てます。(加筆修正、するだろうけど。) それでは、今回もありがとうございました! |