道しるべ…






目をつぶって……

思い出すのは、泣き顔と……

深い哀しみに閉じ込められた暗い顔と……

どうにも出来ない、痛みと悔しさ。


第二話⇒別れの日の記憶


―組織から……逃げましょう。


胡蝶とホームズは、組織の脱走を試みる事に決めた。
二人で作戦を立て、とりあえず逃げる手はずを考えた。
お互いに、自由を取り戻すために……
お互いの、本来あるべきだったものを取り返すために。
「胡蝶さん、本当に…いいんですか?」

深夜、こっそり起きぬけて密会した二人……
組織を裏切る時、彼は念を押すかのように彼女に尋ねた。
彼女は、こくりと頷いた。

「大丈夫。これが、私のずっと抱いてきた願いだったから。」

組織から逃げる事が……それが組織に入った時からの夢だった。
彼女の決意は、とても固いものだった。

「じゃあ、行きましょう。」

予め盗んでおいたサイレンサーつきの銃を持ち、二人は外に向けて走った。
途中それに気付いた組織の輩を次々に倒しながら、二人はそこから脱走した。
傷つきながらも、必死で二人力を合わせ………
ずっと、逃げる準備は整えていた。
日取りも、ちゃんと逃げられる日時を計算に入れて。
見張りは、何とか再起不能にすればいい。
多少傷は負っても、一時的に逃げるのは不可能じゃない。

「……無事に、逃げられたわね。」

もう安全だろうと呼べる場所につくまで、ずっと無言だった彼女は、
やっと立ち止まり、彼に笑顔を見せて言った。
しかし、彼は嬉ながらもどこか浮かない顔で、小さく溜め息をついた。

「これで、組織から命を狙われる生活になりますよ。」

彼は彼女を心配そうに見つめる。
彼女はそんな彼に言う。

「大丈夫よ。それより、安心しちゃ駄目。
一時的に逃げおおせたけど、組織の追っ手は迅速よ。見つかったらお終い。
一先ず……どこかで匿ってもらわないとね。」
「けど、何処で………?」

彼の問いに、彼女は自信ありげに微笑んだ。



「……次、平次!!」

彼に呼ばれて遊びに来たというのに、何処か上の空な幼馴染みに、
ポニーテルの少女和葉は怒ったような声をあげた。
平次と呼ばれた色黒の彼は、はっとして彼女に苦笑いを浮かべた。

「すまん……考え事しとったわ。」

そう答えた彼に、先程まで怒っていた彼女は突然深刻な顔で尋ねた。

「やっぱり、工藤君と蘭ちゃんの事??」
「ああ。もうあれから一年も経つんやな……てな。」

親友を止めきれなかった自分に腹が立った、一年前のあの日。
自らその危険を冒す事を決意した彼に、心底腹が立ったあの日。

―工藤!!お前考え直せや!!他にも色々方法はあるやろ!!
―どんな方法があるってんだよ?こうするしか、ないだろ。
―せやけど……工藤!!!

―……じゃあな。行ってくるから………

最後にそう言って立ち去った彼を、自分はどんな目で見つめていただろうか……
追いかけたくても身体は動かなくて……
とても悔しくて、悔しくて………

出て行った背中に、思いっきり「アホーッ」と叫んだ。
小さくなっていく背中……あれほど、無力感を感じさせられた事はない。
そしてその後、志保から聞かされた。

―服部君……工藤君は、結局…………

彼はぎりっと唇を噛み締めた。
再び考え込んだ彼に、和葉は溜め息をついた。

「平次……いつまでも引きずってたらあかんよ。もう、一年経つやん。
あたしかて、蘭ちゃん止められなかったんはホンマに辛かってん……
けど、あたしらが悩む事、工藤君も蘭ちゃんも望んでへんと思うんよ。」

和葉は、そう言って目を伏せた。
一年前の事を、彼女も思い出していた。

―蘭ちゃん、嘘やろ?
―ごめんね、私……もう決めたから。新一を、助けに行くって。
―警察に任せればええやん。蘭ちゃんにもし何かあったら……
―和葉ちゃんだったら、もし服部君が新一と同じ立場だった時……どうする?

必死で止めようとしている自分に問われた言葉。
同じ立場だったら……多分自分も彼女と同じ選択をしていたと思う。
その言葉一つで、黙らされてしまった。
微笑みながら「ばいばい」と言った親友を、身体を張ってとめる事が出来なかった。

―蘭ちゃん、せめて……お願いやから無事で帰ってきて!!

そう叫んだ自分に、彼女は無言のまま再び振り向いて微笑んだ。
それから……一年。

「あたし、やっぱり今日は帰るわ。」

お互い、今日は一人になって気持ちを落ち着かせた方がいいと思った。
登校日の明後日に学校で会おうと言い残し、彼女は帰っていった。

―工藤君、結局……

暗い顔で自分にそれを伝えに来た茶髪の少女を思い出し、彼はドンと壁を叩いた。

「工藤……お前自分が犠牲になれば全て丸く収まるとでも思っとったんかい!!」

その時……来客を告げるチャイムが鳴った。
「誰やろ?」等と思いながら、苛立った気持ちをとりあえず静め、玄関へ向かった。
しかし、玄関の戸を開けた瞬間。
そこに立っていたその来客に、彼は驚いて目を見開かせた。






〜第3話へ続く〜














作者あとがきv
こんにちは、朧月ですvv
道しるべ…第2話という事で……
大分ちょっとずつ謎は明かされたと思うのですが、どうでしょう?
さて、今回朧の大好きな彼が登場ですねっ♪♪
最初登場させる予定はなかったのですが……出したくなっちゃった(えへへv)
彼も絡め、ちょっとずつ、謎を明かしていくつもりですが……
これからも付き合ってやって下さい!!
さて、やってきました来訪者…まぁ誰だかは分かるかな?
次回もまたよろしく見てやって下さいませvvv
では、第2話も読んでくださいまして、ありがとうございました。
次回も是非見捨てないでやってください。
ではではっ♪♪♪

H16.08.05.管理人、朧月。