あの日からずっと……



第9話、消えゆくもの……




銃声が服部の声とともに建物の中に響いていた。
俺は一瞬驚きのあまり声が出せなかった。
灰原の悲鳴が建物の中で何度かこだました。

俺は……俺は……本当に頭が真っ白で、何も考える事が出来なかった。
俺の身体が緋色に染まっていく。
俺のものじゃない…緋色で……
顔も、服も……赤く染まってゆく…………
ただその光景が信じられなくて、信じたくなくて……
目を丸く…大きくして、じっとその緋色の出所を見詰めた。

何で、どうしてだよ………?

その俺よりも大きな身体は…
本来の俺と同じくらいかわずかに大き目のその身体は、
この俺の小さな身体にゆっくりとかぶさった。

その瞬間、体が痛んだけれども、そんな事はどうでもいい。
その身体は……妙に生暖かくて……嫌でも現実だと思わざるを得なかった。
いくら邪険に扱っても、何をしても、本当は……
本当は、一緒に話して、これほど楽しかった奴はいない。 大切な、恐らく唯一の……無二の親友で、ライバルの身体は……
色黒のその身体は……緋色に変わっていった。
その手はピクリとも動かなかった。
動いてはくれなかった。

「………っと………り………?」

俺が呟いても、返事を返してくれない口…
俺が動かない筈の手を必死で動かしてその身体を揺すってみても、何も反応が無くて……
ついさっきまで、日本刀持って乗り込んできて…
拳銃相手に勝利を収めたそいつの身体は……今何故動かない?

「おい……う…そだろ………?……うそだよなぁ!!??
……冗談……なんだろ………!?服部ィ!!!!!
目………開けろ……よ…!!……頼む、から。
……何か………言ってくれよ!!!」

上手く出ない声を必死で絞り出して…こんなに頑張って呼んでるのに…
何も返事しないそれ。

……傷口が広がったのか、二,三回ごほごほとむせて……
それでも俺は必死で血みどろになった手を動かして、
抱きかかえるような感じで服部の身体を揺さぶった。
しかし、やはりなんの応答も無い。
色々な感情が、ぐるぐると渦巻きながらこみ上げて来る。
何度も、何度も…俺の身体にかぶさっているその重い大きな身体を揺さぶった。
そのたび、何箇所もある傷口から血が噴出して…
けれどそんな事忘れて、必死で服部に呼びかけた。

灰原がそんな俺を悲しい目で見ていた。
「なあ……服部……。前みたいに……実は、眠かっただけだとか、言うんだろ。
じゃかあしい…………とか叫んで……起き上がるんだろ?
……ばーろ、お前いつまでやってんだよ………。早く、起きろよ!!
笑って……冗談だったって……そう、言ってくれよ………
なあ……服部ぃ……………!!!!」
「…………工藤君…………。」

灰原が見てられないとでも言った顔で、這って近寄ってきた。
けれど、俺は今は服部の事しか考えられなくて…
だって、俺も服部も、多分探偵としてある程度の覚悟はしていたと思う。
自分の命が、いつ失うか解らないだけの……
けれど、こんなのあるか?
俺を庇って……こんな!

なあ?お前は……何で俺を助けたんだ………?
なあ?何で………血みどろになってんだ………?
なあ?何で………胸から血出して倒れてんだよ……?
なあ?何で………動かないんだよ……?
…………何で……何も言わないんだよ………?
………答えろよ………!!
………服部ぃ!!!!!!



少しずつ、薄れてゆく意識……
血を、流しすぎたのか。目が霞む……



遠くから足音が聞こえる…。
何人か…大勢の……足音…。
こっちに向かってくる…それは分かった。
……でも、少しずつ…少しずつ……小さくなって……
何か……灰原が俺のこと呼んでる声が聞こえるような気がするけど……
よく分からなくて……
必死で呼んでる声も、今の俺の耳には届かなくて……
最後に………蘭の声も………聞こえたような気がしたんだ。

幻聴…だったかな?

そう思いながらも、俺は深い闇の中に落ちていった。
もう、何も聞こえなかった。何も見えなかった。

俺……死んだのかな…?
ごめんな、蘭……帰ってやれなくて………約束、守れなくてごめん。
もう…、こんな男の事………忘れろよ………?
蘭………?幸せに………なってくれよ…………?
灰原に……今までのこと、全部聞いてさ…………
蘭?……ずっと嘘ついてて、ごめん。

…それから……ごめんな……服部………
せっかく助けてくれたのに……
無駄にしちまって……ごめん……
お前……馬鹿だろ………
こんな………ほっといても死ぬようなやつ助けるなんて………
……会って、一年も経ってないような数回しかあった事無いような奴助けるなんて。
……彼女、和葉ちゃん………どうするんだよ……?
なあ……!!西の名探偵!!!!!


俺は、真っ暗な中で、叫んでいた。
俺が巻き込んだ、親友。
本来なら、ずっと元気に探偵をやってた筈の、大切なライバル。
俺が、巻き込んで、俺をかばって…………そして。

本当に、ごめんな。




〜第10話へ続く〜













作者あとがき〜〜♪♪


おこんにちはv朧月です。
あ〜っ、暗っっ(滝汗っ)
……今回の話が、この話で最もシリアスな部分ということになります。
次からは、幾分シリアスから脱出するはず。そう、多分!!
さて、コナンは一体どうなってしまうのか。
そして、平次は???

何か、本当に朧の描く話は痛いのばっかりだなぁ…
一度でいいから、誰も一度も苦しむ事ない話書いてみろよって感じですね。
が、頑張りますサ。
リク小説では…リク内容によりますが出来るだけ努力しますさ。
まぁ、関係ない話に突入しつつありますが……
この話も、50M走で言えば、
30M地点という所でしょうか。(えっ?まだそれだけ??)
最後まで、よろしくお付き合いお願いしますねvv

PS.そしてやっぱり感想はいつでもOKですよvv(だから、せびるなって。)
ではでは、次回も是非見てくださいねっ!!