あの日からずっと……



第12話、それぞれの思い




「…………服部君…………死んで無いよ???」
「……………………………………は????」

蘭の言葉に、俺は思わず間抜けな声を出した。
もう、何が何だか…驚きに満たされていた。
蘭は苦笑しながら、俺に言った。

「…………だから、誤解してるって…………」

再び、あの時の事を思い返してみる。
確かに、あの時服部は……
息も…してなかった、よな??

「………………で、でも……あの時確かに左胸撃たれて………
出血がひどくて…何言っても反応ないし………
ピクリとも動かなかったし…………!!呼吸だって……っ!!???」

俺はすっかり混乱していた。
蘭はそんな俺を見て、ため息をついた。
そして、俺の隣のカーテンをゆっくりと開けた。


そこにいたのは………安らかな顔した………

死んだ筈の………

いろぐろ………


………………………………………………………????


「服部ィ!!!!!!!????????」




紛れも無く、そこにいたのは……
他の誰でもなく…

一瞬、俺の思考回路は停止した。
目の前で寝てる人物………確かにあの時死んだ筈の男だった。
じっとその姿を見詰めて、人形じゃない事を確かめて………
死体じゃない事を確認して…………………
それでも、どうしても信じられなくて…
髪を触ってみたり、頬をつねってみたり、頭を叩いてみたり………
とにかく、放心状態のまま、周りから見れば
遊んでるようにしか見えないような行動を繰り返した。

服部…………だよな……………?
これはどう見ても………………

べしべしっと頬を叩くと、微かに嫌そうな顔をして、
俺の手をうざったそうにはねのけた。

はねのけられた感触が、手に残った。
俺はそれすらも信じられなくて…自分の手を見つめてみた。
確かに、今こいつは俺の手をはらったんだよな??


生きて…………る?…………何で…………?
あの時……………確かに左胸撃たれて…………
心臓のところ撃たれて…………
いや………確かにちょっとはずれてたかも知れないけど………
でも、あの出血は……
どうなってるんだ!!!!!?????

もう、既に頭の中はごちゃごちゃに混乱していた。
自分の身体の状態が、思考を鈍らせているのかもしれないけど……
俺はとにかく混乱しきっていた。


俺が呆然と服部の体を見詰めていると、突然ドアが開く音がした。

「蘭ちゃん!!どうや?様子は…………ってコナン君!!目ぇ覚めたん??」

花束を片手に…明るい声で入ってきたのは、西の名探偵の幼馴染み、遠山和葉だった。
彼女はポニーテルを揺らしながら…
驚いた顔で俺を見つめた。

「あ…………うん。」

蘭が返事すると、彼女は嬉しそうに声をあげる。

「よかったわーーー。平次は…………まだみたいやね。具合どうなん?コナン君。」
「あ、何か結構元気みたい。さっきから大声出してるから………」

彼女は俺に聞いたんだろうけど……
混乱しきって何も話せない俺の代わりに、蘭が答えてくれた。
和葉ちゃんは、安心した顔をした。

「そうなん?よかったな。」

それから彼女は鼻歌交じりに服部のベッドの前のいすに座った。
手にもっている花束を、花瓶にさし替えて…
ご機嫌そうな顔で、こちらをみてにっこりと笑った。
俺は呆然とその様子を見ていた。
すると、蘭が小声で話し掛けてきた。

「あのね、新一……勘違いしてるよ。
確かに出血……ひどかったけど、でも死ぬほどじゃなかったのよ?
左胸の心臓付近撃たれて……
一瞬ショック症状で呼吸も止まって動けなくなっちゃったって……
新一、その時死んでると思ったんでしょ?
私達が行った後だったから。服部君が微かにうめき声をあげてピクピク動き出したの……
あなたその時、自分の怪我のせいで意識朦朧としてたでしょ?
だから早とちりしちゃったんだと思う。」

苦笑交じりにそういう蘭。
ショック……症状??
確かに、あの時は意識も朦朧としてたけど……

「…………生きて………たのか?でも…まだ意識戻ってないんだろ?
ただ寝てるだけならとっくにさっきの俺の声で目覚めてる筈だもんな。
やっぱり、危ないんじゃ……」

そう言った俺に、蘭はどこか複雑そうな顔をして答えた。

「……ううん。本当は新一の方がやばかったのよ。
服部君……容態も安定してて…………
もういつ気付いてもいいくらい回復してる筈なんだけど、全然目が覚めないの………。
でも絶対あなたより服部君のほうが気付くのは早いって思われてたんだから………」

そう言っている蘭の目元に、また涙が滲んでいた。
俺も、随分辛い思いさせてたみたいだな。
そう思いながらも、もう一度服部の方に視線を戻す。

「……………でも、それなのに気付かないって事は……植物状態とか…」
「ううん。全然そんなことないって。脳波にも全く異常なかったし………
お医者さんが言うにはただ寝てる状態と全く変わらないっていうのよ。
たまに、寝返りするような仕草するみたいだし……」

ただ……寝てるだけ?

「………………そっ、か………………」

俺は安心したせいか、脱力してベッドに倒れこんだ。
目が覚めたばかりで、暴れすぎたかも知れない。
起き上がろうとしたけど、身体がいう事を聞かなかった。

「………ちょっ!!??大丈夫!!!???」
「……………ああ……………何か気が抜けちまって……………」

慌てて心配そうな顔で俺の様子を確かめる蘭に、俺は微かに笑って見せた。
ずきり…と身体中に激痛が走り、その笑顔が歪む。
今まで忘れていた当然あるべき痛みが蘇っただけ……
ただそれだけだけど、蘭はさっと顔色を変えて……

「………お医者さん……呼んでくるね………!!!」

そう言って、踵を返した。

「…………あ…………ちょっ………………」

反射的に蘭に手を伸ばすと、蘭は一瞬戸惑った後でこっちを振り返って、微笑んだ。

「今度こそ、また…ね。…………『新一』……」

和葉ちゃんに聞こえないようにと小さな声だったけれど……
確かに、俺の耳にはしっかりと届いた。
蘭の、その気持ちと共に…しっかりと、届いた。
そして、蘭は急い病室から出て行った。
蘭が出て行った後、和葉ちゃんがカーテンの向こう側から慌てて話し掛けてきた。

「何!?コナン君具合悪いん??大丈夫???」
「……………あ、うん。」

俺は苦笑しながら、答えた。
はっきり言って…「大丈夫」というには、身体中が痛かったのだが…
それでも、これ以上彼女に余計な心配させるわけにはいかないだろう。
彼女は、まだ心配そうな顔で言った。

「あんまり無理せんといてね。蘭ちゃんも、すごい心配してたんよ!?
あんなふうに明るく振るまっとったけど…
コナン君、意識が無い間…何度か容態が急変して……危篤状態になっとったんや。
そのたびに蘭ちゃん『お願い、死なないで』って言うて
顔真っ青にしてカタカタ震えとったんや。
せやから……具合悪うなったらすぐ言うんやで!!
黙っとって倒れたりしてしもたら…蘭ちゃん悲しむよ。」

俺はそれを聞いて納得した。
だからか……目が覚めた時、俺が『僕…生きてるの?』なんて言った時、
あいつがあんな過剰に反応したのは………
悪い事しちまったな………
そう思うのと同時に、和葉ちゃんの優しさにも、俺は感謝した。
自分だって相当辛い中で…ずっと蘭を支えててくれたんだな…と。
感謝しながら、ゆっくり頷いた。

「………うん。そうだね。ありがとう。
ねえ、和葉姉ちゃん?僕…どれ位意識無かった?」

何となく、冷静になり始めて…気になりだした事だ。
もし何年か経ってたらどうしようとか思ったけど…

「………約一ヶ月や。その間何度か危篤状態になっとったんよ………
ホンマに、こんな事あるんやろかって、先生も困ってたんや。
コナン君、知らへんのやろ……?昨日の夜も、一度心臓止まったんよ。」

……本当に、何で俺生きてんだ?
彼女の話を聞いていて、我ながら不思議に思う。
しぶといんだな、俺も。

「………今何時?」
「昼の二時過ぎたとこや。でもホンマ良かったわー、コナン君気ィ付いて!!」

嬉しそうに、そう言って満面の笑みを見せた彼女。
服部は、まだ気付いてないってのに……
優しい…子だよな。
その後、医者が来て、俺の身体を見た。
彼は俺が服部より早く目が覚めた事をとても驚いていた。
蘭が終始不安そうな顔で見ていたが…
医者から、
「まだ安静は必要だけど恐らくもう危篤状態になったりする事は無いでしょう」
と言われて…ほっと安堵していた。




〜第13話へ続く〜













作者あとがき〜〜♪♪


どうもこんにちはっv朧月です!!
ようやくご対面〜〜〜vvv
ね?涙と感動とはかけ離れてるでしょ?
そして和葉ちゃんも出てきちゃいました。
次回は出来れば哀ちゃん絡めたいなぁ……
この話ね、実はもうかなり前に短編として書いた話の再録だったりするんですよ。
印刷したんだけど、それなくしちゃって…一から作り直した話で…
でも、最初の話には哀ちゃんとのあのバースデーエピソードも全く入ってなかったし、
コナンが哀ちゃんかばったり平次が助けにきたりする所も矛盾だらけで…
かなり変わってますよ、その最初の話より。
でも、朧こっちの方が自分なりに好きなので、消えてくれてよかったかなぁ…と。
まぁそんなこんなで、必死こいて作り上げてます。
さてさて…クライマックスまであと僅か!!
最終話見て、ふざけんなーっ!!と叫ぶ方いらっしゃるでしょう。
それがどういう意味かは、最終話見ればわかりますが……
大丈夫……わかってますよ。(うんうん。)
本当に、とんでもない終わり方するので。うふふふふvv
さてさて、今回も読んでくれてありがとうございました!!
次回も是非見捨てないでやって下さい!!
感想お待ちしてま〜すっ!!
それでは皆さん、また次回お会いしましょうか♪♪