幸せを伝える、一通の手紙が……
ずっと二人を心配してた彼らの元へ届いた。
全ての解決と、やっと来た平和な幸せを伝える、一通の手紙が……

二人が苦しむ姿をずっと見てきたから……
二人の強い想いをずっと見てきたから……
とても、とても……喜びが溢れた。



So long as you love me...


エピローグ、幸せを告げる手紙〜永遠の愛を〜


「あれから、もう二年も経つんやな。」
「ホンマ、早かったね。」

郵便受けに届いた一枚の封筒の中身を見て、彼らは柔らかに笑った。
二年前は、本当に大変だったと思う。
和葉が久しぶりに東京の親友の元へ電話すると、
暗い声で泣きながら電話に出た蘭。

「和葉ちゃん……新一が!!新一が!!!」

話を聞くと、その日の朝にアメリカにたってしまったという。
突然の報せに、和葉は驚いた。
そして、平次は何か知っているのではないかと、
平次の家に駆け込んで、事情を話した。
しかし平次も何も聞かされてはいなかったようで、
驚いて放心した後、カンカンに怒りながら和葉を引っ張って東京に行った。

探偵事務所に行くと、蘭は出かけたという。
どこに、行ったのか………心当たりは、ある。
二人は、そこに向かった。
昔子供達の間で、幽霊屋敷との噂が立った洋館……
門のところには、『工藤』の文字……
無断で入るのも気が引けたが、平次は構わず入って行った。
和葉も、申し訳なさそうにその後に続く。

屋敷に入ると、すすり泣く声が聞えてきた。
知らない人が聞いたらば、それはとても不気味なものではあるが。
そこは事情を知っている平次と和葉の事……
誰のものなのか……容易に予想がつく。
鳴き声が聞こえてくる部屋に、二人はそっと入った。

そこで、蘭は封筒らしきものを握り締めて泣いていた。

「蘭……ちゃん。」

和葉が声をかけると、蘭ははっとしたように振り向いた。

「服部君……和葉ちゃん……」

驚いたように瞳を見開かせて、彼女は呟いた。
平次は再び真実を確かめようと、蘭に尋ねた。

「姉ちゃん、工藤がアメリカ行ったて、ホンマなんか?」
「……うん。」

蘭が悲しそうに頷いたのと同時に、和葉が平次を後ろからつねった。

「いたっ!!…何すんねん、ドアホ!!」
「アホはそっちや!!直球過ぎるやろ!?
今その事で蘭ちゃん苦しんでるんやん!」

和葉は小声で言った。
しかし、蘭にもしっかりその言葉は届いていたようで、
蘭は悲しげな顔で微笑んだ。

「いいよ、和葉ちゃん。……あのね、服部君に新一から。」

蘭は、自分が持っていたのとは別の、未開封の封筒を平次に渡した。
平次は、その封筒を眺めた。
封筒には、『服部へ。』と書かれた文字。
平次は無言のまま、封筒を開けて中の手紙を見た。

『服部へ。

  多分、お前はこの手紙…凄く怒りながら見てるんだろうな。
  お前にまで何も言わないで消えて悪いと思ってる。
  アメリカに行く事に決めたのは、急なことでもないんだ。
  前から、その話はあったから。
  どの大学に行くか…どこに住むかは、悪いけど言えない。
  けど、またいつか会う事があったら、
  その時はまた一緒に暗号でも解いて、
  また一緒に推理できるといいな。……じゃあな。
                             工藤新一より。』

蘭の話では、新一の家に来た時に、志保に手紙の存在を聞いたという。
新一は、たくさんの人に手紙を残して、日本から消えた。

「私ね、新一からの手紙見るまで、ずっと沈んでたの。
新一が、私の事誤解したまま……私のせいで傷ついて……
私の事、嫌いになって……
私のせいでアメリカに行っちゃったんだっ……て。」

「でも……」

そう言って、蘭は自分宛の手紙を二人に差し出した。
二人は僅かに戸惑って、その手紙を受け取った。

「蘭ちゃん、ええの?」
「……うん。」


『蘭へ。

  蘭、本当に……ごめんな。
  俺、ずっとお前がそこまで怒ってる理由考えたんだけどよ、
  結局どうしても分からなくて……探偵、失格かもな。
  でも、これだけは信じて欲しい。
  俺は、例えどんなに離れた所に居ても、
  お前の事が好きだって気持ちに変わりはない。
  指輪だって、中途半端な気持ちじゃなくて、本気で渡したんだ。
  お前は、ガキの頃から……一生一緒にいたいって思ってた女だから。
  どうしてお前が怒っているのかは分からない。
  けど、このままじゃ駄目だって思ったんだ。
  だから、アメリカ行きを決意した。

  それから、ありがとな。
  俺が病院運ばれて、目が覚めた時置いてあったあのポカリ、お前だろ?
  冷やしといて、ころあい見て分かるように
  わざわざ出しといてくれたんだよな。
  あれ飲んだら、本当に楽になったよ。
  じゃあな、蘭。……もう二度と会わないと思うけど、
  こんな男忘れて幸せになれよ。

                                    新一より。』


平次と和葉は、その手紙をじっとみつめていた。
新一は心から、蘭の事を大切に思っていたのだと……
それがとてもよく伝わってきた。

「本当に、馬鹿でしょ?新一……」

二人が読み終わったのを確認して、蘭は言った。
二人が驚いた顔で蘭を見ると、彼女は悲しげに…
しかし柔らかい顔で微笑っていた。

「私が、新一の事忘れられるわけ無いって言うのに……
私にとって、新一がいない幸せなんかあるわけないって、
コナン君だった時に散々分かった筈なのに。」
「蘭ちゃん……」

和葉は、悲しそうに蘭の名を呟いた。
蘭は、二人に言った。

「私ね、決めたの。新一を……
アメリカの何処かの大学に行った新一を……
絶対見つけ出すんだって。一年後輩になっちゃうけど、
一年間頑張って勉強して、新一と同じ大学に入る。
それで、新一を驚かせて、分からせてあげるの。
『私は、新一が居ないと幸せになれないんだ』って事。
だから、二人共………協力、してくれる?」

蘭から協力して欲しいと言われたのは、初めてのことだった。
その言葉を、断われるわけがない。
平次と和葉は、快く了解した。

二人に蘭が頼んだのは、たった一つのことだけだった。
『新一がどこに居るのか、探すのを手伝って欲しい』と。



そして、その時からもう二年も経つのだ。
今二人の手元にあるのは、あの日見た別れの手紙ではなく……
一つのゴールと、始まりを告げる幸せいっぱいの手紙……



「工藤!!久しぶりやな!!!」
「服部!久しぶりだな。早かったじゃねえか。…和葉ちゃんは?」
「あぁ、和葉やったら、姉ちゃんの方や。」
「あ、そっか。」

頬を赤らめて、二年ぶりに会う親友はどこか照れくさそうに、
しかし嬉しそうにそのタキシードを着こなしていた。
彼は平次に言った。

「でも、お前に会ったら凄い剣幕で怒鳴られるの覚悟してたんだけどな。」

そう言って、苦笑する。
二年前、何も言わずにアメリカに行った事を、
彼は絶対に怒っているかと思っていたのに。
平次はそんな新一に言う。

「まぁ、確かにあん時はホンマ腹たったけどな……
ちゃんと俺らのことも招待しよった事やし、許したるわ。」
「お前らは、どうなんだよ?」
「何やて?」

首を傾げた平次に、まさか未だに自分の気持ちに気付いていないのかと、
新一は苦笑した。

「お前と、和葉ちゃんに決まってんだろ?」
「あぁ、俺と和葉な……一ヵ月後や。」

平次から返って来た言葉に、新一は驚いた。

「一ヶ月後!!?本当かよ?」
「ああ、そうや。その招待状も、
ついでやから手渡しで、て思て持って来とるで。」

目の前に差し出された封筒。
新一は驚いたまま受け取った。

「お前……なかなかやるじゃねえか。鈍感で奥手だと思ってたけどな。」
「あほ、お前には言われとぉないわ。」


「蘭ちゃん、久しぶりやね。おめでとぉ!」
「和葉ちゃん!!久しぶり!!!」
「凄い綺麗やね!!ええなぁ……」
「ありがと。」

一方蘭も、久しぶりに会う親友と再会を楽しんでいた。
先ほどの新一と平次と、同じような会話が繰り広げられ、
二人は楽しそうに笑いながらその部屋を後にした。


「ほな、あたしはこの辺でな。」
「ほんなら工藤、決めて来いや。」



互いの親友に送り出され、二人は赤い顔で向かい合った。
お互いの姿に見惚れながら、手を組む。

「蘭、行こうか。…俺達の、約20年越しの願いを叶えに。」
「もう、いつまで経っても気障なんだから。」


二人は、幸せの音楽が鳴り響く中……
華やかな衣装に身を包み、バージンロードを共に歩いた。

「それでは、誓いのキスを……」

ようやく、ここまで来たのだ。
これは、ゴールでもあり、そして新しいスタートでもある。

「蘭、今まで色々あったけど、これから俺達の手で幸せを築いて行こう。」
「う、うん……」

蘭は頬を赤らめながら頷き、瞳を閉じて新一に身体を寄せた。
新一は、ゆっくりと彼女のベールを上げ、彼女の頬に両手を添えて………
その唇に、自らのそれを重ね合わせた。
数秒間の熱いキスと同時に、二人はその日、結ばれた。









『服部平次&遠山和葉様


       私達、結婚する事になりました。招待状も同封しておきます。

       二人に会えるのを、楽しみに待ってます。


                              工藤新一&毛利蘭。』







キミが居ないと、何も出来ないんだ。

どんな困難も、二人で乗り越えて行こう………

離れていた分だけ、苦しんだ分だけ、幸せになろう。

キミが愛してくれている限り、ずっとどんな時でも、頑張っていける……






〜FIN〜










作者あとがき。
こんにちは、朧月ですvvv
………終わった〜〜〜(涙)
やっと連載が一つ終わったかと思うと、嬉しくて嬉しくて……
というわけで、今回エピローグ…お待たせいたしました!!
作ってて、ちょっと恥ずかしくなってきたりもしましたが…//////////
この朧にしてはかなり甘いお話も、完結でございます。
長い間、お付き合いありがとうございましたvvv
どうでもいいけど、今一しまりの無い終わり方だなぁ……
最後の最後で、何で平次と和葉が出張ってくる?
最終話まで出て来なかったくせに。
でもね、結婚式関係になると、出したかったのよ。
朧の溺愛する西の色黒様を……
そういうわけで許して下さいな(^^;

最後招待状を出したのは、
このエピローグのタイトルが『幸せを告げる手紙』だからで。
やっと、二人結ばれました。
そして、一ヵ月後には和葉ちゃんと平ちゃんも……♪♪♪
ん〜……挿絵入れたかったけどなぁ……
どうにも、朧の画力じゃあ、
『原作の蘭ちゃんよりも美人になった彼女』を描くのは難しくて…(^^;;
誓いのキスかバージンロードの部分描きたかったけど……
それは、機会があったらまた描くかも知れません。
それから……
番外編、書いて欲しいですか?
書きたかったネタはあるんですけどね;;
まぁ、気が向きましたら。
では、長い間……本当にありがとう御座いました。
感想お待ちしてますっ!!!
ではでは〜vv


H16.8.15 朧月@管理人