命の子




前編:幸せと不幸…


ずっと貴方と一緒に居た日々も、
貴方の優しい声も、そのかっこいい眼差しも……
貴方が私に伝えた「いってきます」の言葉も……全てが懐かしくて。
会えなくてもいい。
声が聞けなくてもいい。
もう、多くは望まないから。
ただ、ただこの同じ空の下に………
この同じ空間の中に………
あなたが居てくれたなら…………
元気に歩いて、笑って、犯罪者を捕まえるために走り回って……
あなたが、どこかで私と同じ空気を吸っていてくれたなら……
それだけでも、とても、幸せなことでした。



「え?本当ですか!?」

明るい声が響く。
ここに来る人たちの多くは、そんな声を発するのだ。
もちろん、それは彼女も例外ではなく。

「ええ、おめでとうございます。」

にこやかに告げられた言葉に、彼女は幸せに包まれた。



どうやって、彼に伝えよう……
彼の喜ぶ顔が眼に浮かぶ。



APTXうんたらは、もう過去の話で。
全てが解決した今、新一と蘭は共に家族として一つ屋根の下で暮らしていた。
もう21になった二人。
やっと、幸せを掴んだ二人。
そして、今日蘭が行って来たのは、病院………
といっても、病気……ではなくて、ちょっと特殊な。

「新一……驚くだろうな。」

今日は、それほど難しい事件でもないから、夜前に帰るといっていた。
昨日平次に私用があって大阪に行った新一が、
今日の朝帰ろうとした時に、例によって事件が起きて、そこに留まったと。
けれど、いつもは夜遅くまでかかる事もあるのに、そんなのはかなり珍しくて。
神様が、苦労した自分達に贈ってくれたプレゼントだろうと、幸せを感じていた。

もうすぐ、新一が…帰って来る。

時計を見て、蘭は嬉しそうに微笑んだ。



TRRRR・・・TRRRR・・・



突然鳴った電話の音に、蘭は慌てて電話機の前に走った。
多分、新一からだろうと思いながら、受話器を取った。

「はい、工藤――」





電話の相手が告げた言葉に、彼女は目の前が真っ暗になる思いをした。
次の言葉を発する事が出来ないまま、先ほどの反動で半分口を綻ばせたまま……
受話器を持つ手の握力が無くなり、それはその場に滑り落ちた。

紐の反動で、ビヨーン、ビヨーンと上下する受話器……
彼女はそれを直す事も出来ないまま、その場にストン、と座り込んだ。
立とうとしても、足に力が入らなくて、中々立ち上がる事が出来ない。


―どうして?



―どうして??




『姉ちゃん、落ち着いて聞いてや。
……工藤が、逆上した犯人に刺されてしもて、今救急車で運ばれたんや。
大阪の病院やから、大滝ハンが和葉乗せてパトカーでそっち向うてる。』




―工藤が、逆上した犯人に刺されてしもて………



―救急車で運ばれて行った………



神様は、優しくなんかない。
どうしていつだって、幸せになる直前に引き離すのだろう。
どうして、正しい事をやってるのに、たった一つの願いがいつも叶わないのだろう。
ただ、ささやかな……普通の家庭の幸せが……それだけが欲しいだけなのに。



和葉が、工藤家にやって来たのは、それから少し時間が経った後だった。
急いで、蘭をパトカーの中に押し込んで、大阪の病院へ向う。

「蘭ちゃん、しっかりしぃや。工藤君……きっと助かるて。」

パトカーが病院に向う間中、和葉は必死で蘭に言葉をかけていた。
蘭は、聞いているのかいないのか……
ずっと、小さい声で愛しいその人の名を呼んでいた。



病院に辿りつくと、蘭は走った。
和葉に案内されながら、新一の元へと。

その、手術中のランプがついた場所に辿り着いた彼女達に、平次は言った。

「工藤、まだあん中やで。」

くいっと、手術室の方を指した平次に、蘭は真っ青な顔のまま尋ねた。

「しんいち……新一の、容態は?」
「……分からへん。けど、かなり深く刺されとったみたいやから……」

蘭は、その言葉を聞いて、俯いた。
今日は、折角いい日だったのに。
新一に、どうやって話そうかと……色々考えて。
とりあえず、豪華な食事を用意して、彼の帰りを待っていたというのに。
そんな蘭をイスに座らせ、和葉は平次を軽く叩いた。

「何すんねん!」

平次が文句を言うと、彼女は怒った顔で平次を見つめた。

「あんな言い方する事ないやん。大丈夫やって……言ってあげたらええやん。」

涙を滲ませてそう言った彼女に、平次は目を細めて答えた。

「アホ……気休め言っとっても、しゃあないやろ。
あの姉ちゃんには、工藤の様子知る権利がある筈や。」
「けど、蘭ちゃんパトカーん中でずっと震えてたんよ!!
『新一、死なないで…新一』って、何度も呟いて、ずっと震えとったんよ!?
それやのに、余計不安にさせる事……言わんでもええやん。」

震える声で……そう訴える彼女。
平次は、「アホ…」と一言呟いて、彼女の頭に手を乗せ、彼女を自分の胸に引き寄せた。

「へ、いじ…………?」
「……オレが何言うても、姉ちゃんは工藤の事信じとるやろ。」

わざと蘭に聞こえるように言った平次の言葉に、暗い顔をして俯いていた蘭が、すっと顔を上げた。
眼からぽろぽろと涙を流しながら……平次を見つめた。
平次は、苦しげに微笑みながら、しかし強い意志を込めた瞳で、彼女を見つめ返した。

「な、そやろ?」

優しい声でそう呟く彼………
蘭は、僅かに考え込んだ後、力強く頷いた。

「だって、新一は………新一は、プロポーズの時、言ってくれたもの!!」


―蘭、俺はもう何処にもいかないから………
ずっと、ずっとお前と一緒に居て、絶対お前を幸せにしてやっから……
だから、俺と、結婚してください。

二年前……組織の残党も全て片付いたと言って、
新一は雨に濡れながらも、真っ先に彼女の元へ報告に行った。
『もう、何も心配はいらないから。』と、その言葉を伝えに………
とりあえず、濡れた身体を温めるために、彼にお風呂場を貸して……
その後、二人で夕食でも食べに行こうという事になって……
その帰り道……彼は、彼女にそれを伝えた。
もう何処にも行かないと言って、ずっと一緒に居るといって……
指輪を受け取った彼女を、きつく抱きしめた。


「その言葉は……嘘じゃないっ…て。私……そう、信じていいんだよね?」

嘘じゃ、ないよね……新一?
ずっと、一緒に居てくれるって……ずっと一緒にいて、私を幸せにしてくれるって……
嘘じゃ、ないでしょ?

「当たり前や。……工藤が、大切な約束破った事なんかなかったやろ?」

平次は力強く微笑んで、蘭に言った。
そう。一度たりとも、そんな事はなかった。
いつか必ず帰って来ると言ったのも、不可能に近い状況の中で、彼はそれを守った。
いつだって、どんな事件に会っても、彼は帰って来てくれた。

「今度も、守ってくれるよね………」

蘭は、そう呟いてお腹に手をやった。
そこにある、新しい命……
自分と彼の…………大切な、愛の証。

今度も、帰って来てくれるよね?
この子の誕生を、二人で楽しみにしてようね……
いつか生まれるこの子を、優しく抱いて……くれるよね……

手術室の方を見て、蘭は泣きながら微笑んだ。

「新一、私ね……あなたに伝えたい事があるんだよ。」

だから、絶対死なないで。
絶対、還って来て。



そんな蘭の様子を見つめながら、平次は事件の時の事を思い出していた。
それ程、難しい事件ではなかった。
別に自分達の手も要らないだろうと思えたが、
どうせならと言って捜査に協力をする事を決めたのは、他でもない新一だった。

「けど、工藤…東京で姉ちゃんが待ってんねやろ?」
「大丈夫だよ、こんな事件そんな時間かからないだろうし……
これ以上犠牲者が出ない為にも、一刻も早く解決した方がいいだろ?」

穏やかに笑って、「でも…」と懐から携帯を取り出した。

「蘭の奴、心配症だから…電話しといてやらねーと。」

頬を染めながら、幸せそうに家へ電話をかける様子を見て、平次もどこか幸せな気分になった。

……こいつ、高校の頃は組織だなんだ言うて、まともに恋愛も出来ひんかったんやもんな……

結婚式を挙げて、幸せになった親友を、当時何度もからかった覚えがある。
けれど、いくらからかっても頬を染めた彼の口からのろけが聞こえてくるだけで……
こちらの方が恥ずかしくなった。
電話を切って、「じゃあ、早く解決させちまおうぜ!」と明るく言った新一と、
共に推理して犯人を割り出した。
しかし、いざ事件解決というときに………



「犯人は……あなたですね?」

そう問いただした彼を俯きながらも睨みつける被疑者の顔が尋常でない事に……
もっと早く気付くべきだった。

簡単な事件とは言え、犯人は4人も手にかけた凶悪犯だったのだから……

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「工藤!!」

発狂したかのように叫びをあげ、新一に突進したその男。
同時に、『ドスンッ』という鈍い音が響いた。
新一は大きく目を見開いて………しかしそのまま男にもたれかかり……
それまでは、傍から見てる方は何が起こってるのかは分からなかったけれど……

「工藤……?」

男が離れた瞬間に、新一は苦悶の表情を浮かべてその場に倒れ……
男の手にはナイフが握られていて、そのナイフからは真っ赤な血が零れ落ちていた……
倒れた新一の周りに段々と広がるその血液を見て、
周りに居た野次馬達は状況を理解して悲鳴を上げ……
一瞬あっけに取られていた警官が、「確保だ!!」と叫び……
男は逮捕されて行った。

「おい、工藤……工藤!!」

平次は慌てて新一を抱き起こした。
どろどろと、まわりの色を赤く染めていく鮮血………
相当な出血量だ。

「工藤!!!」

平次の呼びかけに、「うぅ…」とうめき声を上げ、彼は辛そうに目を開けた。

「………はっ、とり………?」

恐らく、彼自身何が起きたのか分かってなかったのだろう。
「どうしてそんな顔してるんだ?」とでもいいたげな、不思議そうな声で平次を見上げている。

「おい、しっかりしぃ!!」

平次がそう言うと、新一はゆっくりとその口元に笑みを浮かべた。

「らん……蘭が、待って……るんだ。………はやく、帰ら……」

途切れ途切れの声で、言葉を紡ぐ新一……

「じけん……解決、した……ら、あいつが………」
「しっかりしぃ!!もう、解決しとるわ!!犯人、今捕まったで!!!」

刺された所為で、混乱しているのだろうか………
しかし、新一は平次の言葉に、安心した顔をして再び話し出す。

「そ……か。はっと、り……蘭に、やくそ……く………」

自分に、何を伝えたかったのだろう。
そのまま、大量に吐血した彼は、意識を失う刹那、柔らかく微笑んでいた。



現場に居た救急車に運ばれて行く時も、
ずっと…どこか微笑みを浮かべているようにさえ見えた。




手術中というランプが消え、
中から新一を乗せたベッドが運ばれたのは、それから数時間後だった。
弱々しく、呼吸器に命を預ける新一を見送った蘭は、医者に不安げな顔で尋ねた。

「新一は、新一はどうなったんですか!?」

医者は、彼女に告げた。

「今は何とか持ちこたえたけれど、油断は出来ない……」と。

命に別状はない…とか、もう大丈夫だ…とか、
そう言った事は、一切言ってはくれなかった。

暗い顔で俯いた蘭だが、再び顔を上げて、医者に尋ねた。

「あの、東京の……病院に移すのは………」

しかし、医者は首を振った。
容態が安定するまでは、動かさない方がいい……と。


「蘭ちゃん、大丈夫や……工藤君が東京に帰れるまで、ずっとうちに泊めたるから。」

和葉は優しく言った。
蘭はその言葉に感謝しながらも、遠慮がちに平次の顔色をうかがった。

「服部君、いいの?」
「え、あ…あぁ、もちろんやで!?」

平次は慌てて答えた。
蘭はそんな様子に、小さく微笑んだ。

「ありがとう。…でも、今夜は病院に泊まりたいの。」
「大丈夫や、あたしらも付き合うたる。」
「そやな。」

その日は病院の中で、二組の夫婦が夜を明かした。



翌日………
特別に頼み込んで、面会謝絶の病室の中に、蘭は居た。
平次達は、気を遣うように、病室の外で二人で色々と話し合っていた。


「新一……約束、守ってくれるよね?」

蘭は、堅く目を閉じている彼に語りかけた。
シュー、シュー……と、規則正しい呼吸器の音が病室に響く。
蘭は悲しく微笑み、彼の手をそっと握った。

「あのね、私……昨日病院に行ってきたんだよ。」

彼からは何の返事もない。

「私ね、私……三ヶ月なんだって。」

それを伝えられた時の、喜び……
新一の事を知った時の、哀しみ……
今の、信じる気持ちと、不安な気持ち……
それら全てを、言葉に込めた。

「ねぇ、私達が愛し合った証が、今このお腹の中に……居るんだよ。」

新一の顔を見つめて、語りかける。

「この子にね……名前、付けて欲しいの。」

だから、目を開けて。
ねえ、その目で私を見て……
私の名前を呼んで…………

幸せと共に訪れる不幸は………
これから再び、今よりもずっとずっと幸せになる為の準備期間だと信じたい。





「なぁ、平次……」

和葉が平次の肩に、こつんと頭を乗せた。

「何や?」

平次は短く彼女に返す。

「あんな、工藤君……あないなってしもて、蘭ちゃん辛そうやったやろ?」
「ああ。」
「あんたも、辛そうな蘭ちゃん見たやろ?」
「そやな。」
「平次も、工藤君刺された時……手術しとった時、辛かったやろ?」
「……当たり前や。」

辛くない筈が無い。
親友が、刺されて……血みどろになって、吐血して……
それで辛くない人間なんか、いるものか。
和葉は、続けた。

「工藤君が平次やったとしても……同じやで?」
「何言うてんねん、おまえ……」

和葉の言葉の意味がつかめず、平次は和葉の顔を見た。

「せやから、もし平次が刺されたら、工藤君かて辛いし……あたしも、ホンマに苦しいんやで?」
「……和葉。」
「これからも、ずっと平次は探偵続けてくんやろけど……危険な真似は、せえへんといてな?
平次が犠牲になったお陰で犯人捕まったて聞いても、あたし、全然嬉しないで?」

静かに、そう告げる彼女の顔は、角度のせいではっきりとは見えない。

「あたしらからして見れば、犯人なんてどうでもええんや。
ただ、いつも夫の帰りを……無事に帰ってくるんを信じて待ってるだけなんや。」

切ない口調でそう言った彼女。
平次が、もし突然刺されたとか撃たれたとかで帰って来なくなるのが、怖くなった。
蘭を見ていたら……そして、新一を見ていたら。
和葉は、平次にゆっくりと告げる。

「アタシな、ここに子供が居るんや。」

平次は驚いて彼女を見つめる。

「もうすぐ、誰が見ても分かるようになるんやけど……
平次が気付いてくれるん、待ってようて、今まで黙っててん。」
「ア、アホ!!そないな事、早う言えや!!」

平次は、驚いた顔で抗議した。

「そやね。今回の事で、ホンマにそう思たわ。」

和葉は、切なげに平次に言った。

「アタシだけやのうて、蘭ちゃんもなんよ。気付いとった?」

和葉の問いに、平次は首を振った。

「けど、蘭ちゃん……まだ工藤君には言えてないみたいやった。」

悲しげに、そう呟く彼女。

「それ知ったら、どうしても言わなアカンて思たんや。」

気付いて欲しいなどと、贅沢な望みは言ってはいけない。
今必死で夫の帰還を願っている彼女は、伝えたくても、まだそれを伝えられずに居るのだから。

「アタシ、ホンマに蘭ちゃんの気持ち分かるんや。
……工藤君、ちゃんと目ぇ覚ましてくれるやろ?」

和葉の言葉に、平次はこくりと頷いた。

「あいつは、姉ちゃんと、生まれてくる子ォ残して死んだりせぇへん。」
「そやね。」

平次の言葉に、和葉は笑顔で答えた。






蘭が平次と和葉の家に居候して、もう幾日経ったろうか……
未だ東京の病院にはいけない新一に付き添いながら、
蘭は二人に支えられて、夫が目を覚ますのを待った。
和葉は、もう既に誰が見ても妊婦だと分かる体系になってきた。
蘭も、あと少しでそうなるのだ。

「新一、この子が生まれるまでに目覚ましてくれるかな?」

蘭が言った言葉に、和葉は真っ先に反応した。

「当たり前や!!目覚ましたら、二人で工藤君驚かしたろ?」

妊婦二人……
新一はどんな顔でその事実を知るのだろうか。
蘭も、そんな和葉や二人を必死で支える平次が居たから、明るく居られる。
新一の病室には、毎日通った。
毎日通って、毎日語りかけて………
いつか目が覚めた時に、新一はそれを覚えているのだろうかという疑問も僅かに持ちながら。





何日も、何ヶ月も。
病院に通って、意識の無い彼に語りかけた。
時には、生まれてくる子供の靴下を編みながら……
また時には、生まれてくる子供のセーターを編みながら……







「ねえ、新一?そろそろ……目覚ましてよ。」

蘭がそんな言葉を言ったのは、彼女が既に予定日を一週間前に控えた頃だった。
既に、和葉はもう出産を終えていて……可愛い子を産み落とした後だった。
何の反応もしない新一は、変わらず油断できない状態で。

「見て、私のお腹……もう、パンパンでしょ?この子達の為にも、早く目覚まして?」

そうやって語りかける蘭に、彼は全く答えてくれる事無く………

「新一、早く起きてくれないと……この子達、名無しになっちゃうよ?」

だって、約束したから……
眠る彼に、名前をつけて欲しいと、約束したから。
必死で、蘭は彼に語りかけていた。



彼の容態が急変したのは、それから三日後だった。
突然、脈が弱まって………心拍数も危険な状態に達したのだ。

「新一!!新一!!?」

蘭が真っ青な顔で、彼の名を呼んだ。
偶然立ち会っていた平次たちも、慌てて医者を呼び……
何日もの間静かだったその場は、突如騒がしくなった。
慌しく、医者や看護婦が出入りした。
そんな様子を青い顔で見つめながら、どくん、と腹部に走った痛みに、蘭は顔を顰めた。
なんでもない……自分に言い聞かせて、必死で堪え、新一を見つめる。

心電図の音が、せわしなく病室に響いていた。
危篤状態だからと、医師は蘭や平次らを外に出そうとしていた。
しかし。







ピーーーーーーーーーーーーー









鳴り響いた心電図のモニタは、まっすぐな線を映している。
それが何を意味するか、分からない人は、その場に居ない。





「いやあぁ!!!」




大人しく外に出ようとしていた蘭が、看護婦を振り切って新一の元へ行った。
止まった心臓を再び動かそうと、試行錯誤する医師たち……
しかし、その嫌な音は病室の中で鳴り響くばかりだった。





「新一!!新一ぃ!!!!!!」





自分の痛みも忘れた蘭の叫び声が、心電図モニタの鳴らす音と共に、病室内にこだました。





〜続く〜


あとがきv

命の子前編!
命の子……本当は、一文字で『命』ってタイトルつけようと思ったけど、
そんな偉そうなタイトルをつけていいものかと思い、必死で考えてこうなりました。
あぁ、つくづく朧って……と実感した作品です(苦笑)
どうしても、新一痛めつけちゃうんだなぁ……
う〜ん……(滝汗)
大体、今このお腹の中にいるんだよって……
自分そんな経験ないくせによく書く気になったもんだ。
経験者様がみたら、どこか不自然な所あるかも知れません。
いや!違う。一応聞いたんだ。お母さんに。インタビューして!!
でもさぁっ、20歳になる一人っ子を持つ親が簡単にすらすら思い出せないでしょ?
ところどころ、「忘れちゃったわよ。」ってはしょられて><;;
それから、たまに自分でも「ん?」と感じる個所がいくつかある話です。
でも、最後までお付き合いしてやってくださいませ。

H16.8.24 管理人@朧月