ENGAGE RING
〜Takagi&Satou version〜

SIDE:Miwako Satou




私、佐藤美和子。警視庁捜査一課の女刑事。
今まで仕事一筋だったけど、今、気になる人が居るの。
こんなの、自分でも信じられないんだけど、
白鳥君とのお見合いの時以来、私の頭からこびりついて離れない人。
何で彼なんだろうって思うけど、
でも如何し様も無いくらい、私の中では彼が大きな存在になってるの。

彼は警察官としてはとても半人前で、
いつもどじばかり踏んでて警部に怒られてばかりだけど、
あれで結構冴えてる所もあって…頼りないけど優しくて。
あたふたしてるけど、やる時はちゃんとやれる人だと思う。
でも、何であんな人好きになっちゃったのかな…。
私、もてないほうじゃないのよね。
皆が私の事、アイドル的に扱ってる事なんか、私にだって分かる。
でも、私はそんなの関係ない。
彼が、ずっと生きて私の側に居てくれるなら、それだけで充分。


私の大好きな人って、皆死んでっちゃうんだ。
お父さんも、それから松田君もそうだった。
彼は大勢の人の命を救って死んだ。
私にたった一つの悲しいメールを残して。
私は忘れてしまいたかった。彼の事も、お父さんの事も。
松田君は、生きてた時に私に言った。
忘れる必要はないって…
私が忘れたら私のお父さんは本当に死んでしまうって……。
でも、彼が死んだ時、私は彼の事を忘れようとした。
けれど、また同じ言葉を聞けるとは思っていなかった。

「ダメですよ忘れちゃ…それが大切な思い出なら忘れちゃダメです…
人は死んだら人の思い出の中でしか生きられないんですから。」

忘れさせてと泣いて叫んだ私に彼が言った言葉。
あの松田君と何処か似た雰囲気が漂っている彼が言った言葉。
その時、私は松田君の最後のメールを消す決心がついたの。
前へ進む決心がついたの。
でも、お父さんも松田君も絶対に忘れないからね。
この考えにたどり着けたのは、彼のおかげ。

それなのに、彼はいつも自信なさげで度胸が無くて…
私はあなたが大好きなのに。
高木君、もっと自信持ってよ。言いたいことははっきり言ってよ。
私はあなたの言う事なら何でも聞けるんだから。
あなたの言葉を待ってるんだから。
私達、新一君と蘭ちゃんみたいに若くないのよ?
分かってるんだから。あなたが最近そわそわして様子がおかしいのは。
その理由もわかってるのよ。
私の近くに来るたびにあなたがかばんの中から
指輪を取り出そうとしてること。
そして、私に何か言いかけて止めちゃうこと。
それ、私のなんでしょ?早くよこしなさいよ。
わざと気付かない振りするの結構大変なんだから。


「あ、あの…佐藤さん」

柱の陰から高木君が突然現れた。
はぁ…通りで目線を感じると思ったけど、高木君だったのね。

「何?高木君。」

高木君はなにやらもじもじしながら私と自分のポケットを交互に見つめた。
あ〜〜っ、じれったいわね!!いい加減それよこしなさいよ!!!
私は余りにはっきりしない彼の態度に内心苛つきながら、彼を睨んだ。

「さ、佐藤さん……??」

彼はそんな私の視線に気付いて怖気づいたように弱々しい情けない声を出す。
全く、男ならはっきり言いなさいよ。
私が今更断わる理由なんて無いじゃない。
それなのに、高木君は私の態度をどう誤解して受け取ったのか、

「い、いえ…何でもないんです!!また今度!!!」

と言って慌てて逃げていってしまった。
私ははぁーっと重いため息をついた。

そして、今日もやっぱり事件が起きた。
例によって例の如く、そこに居たのは江戸川コナンと、少年探偵団たち。
あなた達…子供のうちからこんなに事件に遭遇してたら
ろくな大人にならないわよ……。
でも、私は一番の疫病神はコナン君のような気がしてならない。
彼が居る所に事件は起きる。
だって、少年探偵団の皆と一緒に居る時でも、毛利探偵と一緒に居る時でも、
蘭ちゃんと一緒に居る時でも、
必ず事件が起こるときに彼の姿があるのだから。
でも、コナン君は他の子供達とは違う。
妙に大人びていて、でもそれが凄く自然で……
そしていつもズバズバと言い当ててしまう。
クールで大人っぽいって言うのは、哀ちゃんにも言えることなんだけど……。
コナン君って、何か凄い信用できるのよね。
本当に、不思議な子だわ。

いつも通り、かなりズバズバと的を射たことを言うコナン君。
そして、さっきから高木君と一言も話していない私を、心配そうに見つめている。

「佐藤刑事、高木刑事と何かあったの?」
「あ、ううん。何も無いわよ。」

私はなんでもないような口調で言った。
コナン君はまだ心配そうにしている。
…こんな子供に恋の事で心配されるようになったらお終いね……
高木の奴ぅぅーー!!!

それから数十分後、犯人を見つけて捕まえた。
私は犯人に手錠をかけると、連行しようとした。
いろいろ考えて、ボーっとしていたのかも知れない。
犯人が私の拳銃をとりあげて私に向けた。
不覚だった。こんなミスを犯すなんて…。
もうダメだ!!諦めて目をぎゅっと瞑った瞬間だった。
誰かが私の名前を呼んで、私の身体を抱きしめた。
そして、銃声が聞こえた。

…何……?何が起こったの?
恐る恐る目を開けると、私は高木君に抱きしめられていた。
それだけではない。彼の体から血が出ている。

「………嘘………」

私は驚いて高木君を見つめた。彼は動かない。

「嘘……嘘でしょ?………高木君!?高木君ーー!!!」

私は必死で彼を揺さぶった。
目から自然と涙がこぼれ落ちる。
お父さんや松田君の顔が浮かんできた。
どうして私の大切な人は皆死んじゃうのよ!!
しかし、次の瞬間私は凍りついた。

「さ、佐藤さん……服が引っかかって、起きれないんです。
た、助けてくださ〜い」

聞えてきた情けない声。
良く見ると、器用にも彼が持っていた指輪が、私と彼の服に絡まっている。
…ちょっと、まさかそれで動けなかったの…?
じゃあこの血は何?
私は絡まっている指輪をとり、彼を起こすと、その血の発信源を探した。
すると彼の足に、余りたいした事がなさそうな、
一応拳銃で撃たれた並みの出血だけはしている感じの怪我があった。
私は、高木君の怪我がたいした事が無くて安心した。

「この傷、大丈夫?ごめんね、私がボーっとしてたから。」
「あ、いえ……あの………」
「え?何……?」

私が首をかしげると、高木君は私の手の中にある指輪をじっと見つめた。

「あの……それ。」
「それって……ああ!これ?これがどうしたの?」

私はあくまで気付いてない風に装って、
手の中の指輪を高木君に渡そうとした。
しかし、高木君は受け取らなかった。

「それ、佐藤さんのです!!
…あのっ、こんな渡し方したくなかったんですけど、
僕と結婚してください!!」

私は突然のプロポーズに驚いた。
いや、そりゃあ男が女に指輪を渡すときは
そういう時だって事わかってたけど、
高木君…こんな事件現場で言う事ないんじゃない?

全く、ムードも何も無い人ね。
死体が目の前に転がってて、殺人犯を仲間の刑事が連行してる最中に。
はぁあ、先が思いやられるわ。
でも、助けてくれたから許してあげる。

………有難う、高木君。

「二つ、約束してくれるなら。」
「な、何ですか?」
「一つは、私を置いて死なないで。
いくら私を庇う為でも、私より先に死んだら許さないわよ。」

私はさっきの反動で、目に涙をためて訴えた。
さっき、高木君が死んだと思ったら、本当に怖かったのよ。
だから、これは絶対に守って欲しい約束。

「あの、もう一つは?」

高木君が恐る恐る聞いてきた。
私はそんな彼の様子に笑いながら、言った。

「結婚、するんでしょ?私、『佐藤さん』じゃなくなるのよ、渉。」
「え!!?あ、ああああの……!!!」

高木君は顔を真っ赤にしながら慌てた。
可愛いわね…男のくせに。

「ほら、約束よ。どう呼んでくれるの?」
「み、み……美和子……さん」

高木君は頬を真っ赤にしながら俯いた。
しかし、私はそれでは納得がいかなかった。

「私は『渉』って呼んだのよ?『美和子さん』じゃ平等じゃないじゃない。」
「え!!?えーと…じゃあ、あの………美和子。」
「よし!!」

私は彼の最後の言葉が嬉しくてしょうがなかった。
喜びが顔にもれていたかもしれない。
しかし、ふと気がついて周りを見ると、
少年探偵団の皆が聞き耳を立てている。

え……?ちょっと待って??

「皆、何処から何処まで聞いてたの?」

すると、元太君が悪戯ボウズっぽい笑みを浮かべて、

「全部に決まってんじゃねえか!」

と言った。
その言葉を聞いた瞬間、私の顔が熱くなる。
多分、誰に見せても今の私の顔は、真っ赤に染まっているだろう。
歩美ちゃんは無邪気に言った。

「よかったね♪結婚おめでとう。」
「あ、あのね…。」
「結婚式には是非僕達少年探偵団も呼んでくださいね。」

光彦君は相変らず丁寧な口調でそう言った。
そして、哀ちゃんは……

「あら、彼頼りないから、あなたがしっかり面倒見てあげなさいよ。」

……クールにそんな事を言ってのけた。
…小学生の台詞じゃないわ。
そして、とどめにコナン君まで。

「佐藤刑事、幸せになりなよ。僕、応援してるから♪」

そうやって子供っぽく無邪気に微笑んだコナン君だけど
……何だか楽しそうよ!!?

全く、もう!大体元はといえば高木君がこんな所で告白するから……

「渉!!私にこんな恥ずかしい思いさせたんだから、
その分幸せにしなさいよ!?」
「は、はい!!!佐藤さん…じゃない美和子!!」

この日、私達は婚約した。
結婚するのは、これからまだちょっと先の話。
そして、子供を産むのは、さらにもっともっと先の話。
最悪な場所で、最悪な状況でのプロポーズだったけど、最高に嬉しかったわよ。
これからもよろしくね、高木君…いえ、渉。

署に帰るために、パトカーに乗り込む時、
わたわたしている渉に「さっさと乗りなさい。」と言った瞬間、
後ろの方で、「ありゃあ、尻にしかれるタイプだな…」という呆れたような声と、
それに同調するクールな声が聞こえたような気がしたが、
まあ…それは気にしないでおこう。

コナン君、哀ちゃん…
こんな小さい時からそんなませた事言ってると、
ろくな大人にならないわよ。
あなた達と結婚する人の顔を見るのが楽しみだわ。






〜FIN〜











作者あとがきっっっ♪♪

こんにちはっ、朧月です!!!
エンゲージリングシリーズ第一弾、高佐バージョンです!!
本当は婚約指輪を英語でENGAGE RINGとはいわないんですよね。
でも、何となくその方がイメージ的にしっくりきたので
そうしちゃいました。

やっぱり矛盾だらけの話ですが…………(汗っっ)
まだ小説書き始めの頃に書いた駄文なので見逃してやってください(滝汗)
朧はこのカップリングが大好きなのでございますvv
一位は新蘭、ニ位は平和と来て…その次くらいに好きですっっ!!
というわけで、読んでくれてありがとうございましたっvvv
感想くれちゃうと言う心優しい方は、どうぞ掲示板へvvvvvv
小説の感想は大歓迎でございますっっっ!!!


この話の高木君SIDEもありますので、
そちらもどうぞ御覧になって下さいねっvv

ではではっvvv