お星様、綺麗だね。
夜空にキラキラ、かがやいているの。
ねぇ、私あなたの中で……”一番星”に、なれるかな?
★★★
「新一の家でおとまり会するの」
そう言った私の言葉に、お母さんは複雑そうな顔をして、お父さんは思いっきり顔をしかめた。
「やめとけ蘭! 何されるかわからねーぞ!」
「何されるって、どんな事?」
「どんなって、決まってんだろーが! 変な事だよ!」
「わかんないよ!」
何をされるって言いたかったのか分からないけれど、反対したいことはとっても伝わった。
「お父さんのわからずやっ! とまるって、もう約束しちゃったんだから〜」
どうして反対されなきゃいけないのか、悔しい。
押し切って、あっかんべー、と舌を出して。勢いのまま、家を飛び出してきた。
だって、新一とらんの事だもん。お父さんが口だす事じゃないもん。
そんなこんなで、予定より早く家を出ちゃったから、約束の時間より三時間も早く、新一の家についちゃって。
迷惑かなぁ……そう思いながら、ブザーを押すと、新一のお父さんもお母さんも、それから新一も、私の事を快く迎えてくれた。
「へ〜。それでそのまま飛び出してきちまったんだ」
「うん。だって、お父さん意味わかんない事ばっかり言うんだよっ」
夜、新一の部屋で遊んでいた時に、三時間も早く来たわけを聞かれて、答えた。先ほどの、お父さんとのやり取りの全部。
「それでおめー、機嫌悪かったんだ」
「……えっ? そんな事なかったよっ」
新一の言葉に、驚いて否定した。機嫌悪くなんて、してるつもりなかったのに。
「でも、今はどーせ後悔してんだろ。言い過ぎたって」
「……う、うん」
何だって見透かされちゃう。新一は、いっつも推理小説に出てくるっていう、ホームズさんみたい。
「わからずやって言って、べ〜ってしちゃったの。お父さんショック受けてるよね」
「……大丈夫だよ。大人は強いんだって」
そう言って、にっこり笑った新一。それから、しばらくは何事も無かったように、二人で遊んだ。
そんな新一の態度は、私の事を元気付けるためだったのかも知れない。
しばらく遊んで、新一はふっと、窓の方を見た。窓を開けて、身を乗り出して空を見てる。
何だろうって思って、私は首をかしげた。
「蘭、ちょっと来いよ!」
「どーしたの?」
「ほら、空見てみろ。星が綺麗だよ!」
窓まで歩いていって、空を見て……
「うわぁっ」
その満天の星空に、心奪われた。たくさんの星が、キラキラキラキラ、真っ暗な空に輝いていて、うっとりしてしまうくらい綺麗だった。
「きれいだね」と言うと、「だろ!」と返事が返って来て。それから新一は、ちょっとだけ考え込んで話を切り出した。
「星って、人間みたいだよな」
「えっ?」
「ずっと広い空の上で、それぞれ違った輝きを持ってて。でも、どの星も全部綺麗で」
「う、うん……?」
新一は、たまに難しいことを言ったりする。この時もそう。言っている言葉は、少し難しくて、一瞬、理解できなかった。けれど、そんな私にかまわず、新一は続けた。
「おれ達も、頑張って輝いて、誰にもないそいつだけの、綺麗な光を灯すんだ。そうする事が、おじさんもおばさんも、一番嬉しいんじゃねーか?」
「どうするって事?」
「いつも幸せで、笑ってろって事だよ」
そうやって笑った新一の笑顔が、私には最高の一番星に見えた。
心の中から、暖かい何かが沁みてくる。
いつもそうやって、私を優しい気持ちにしちゃう新一が、私には世界一輝いている一番星に見えた。
「ねぇ、新一……」
「あん?」
「お星さま、本当に綺麗だね」
「ああ、きれいだよ」
もっともっと、幸せな笑顔でいよう。私も、新一の中で一番星になりたいから。
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