05.「星が綺麗だよ」





 お星様、綺麗だね。

 夜空にキラキラ、かがやいているの。

 ねぇ、私あなたの中で……”一番星”に、なれるかな?


★★★

「新一の家でおとまり会するの」

 そう言った私の言葉に、お母さんは複雑そうな顔をして、お父さんは思いっきり顔をしかめた。

「やめとけ蘭! 何されるかわからねーぞ!」
「何されるって、どんな事?」
「どんなって、決まってんだろーが! 変な事だよ!」
「わかんないよ!」

 何をされるって言いたかったのか分からないけれど、反対したいことはとっても伝わった。

「お父さんのわからずやっ! とまるって、もう約束しちゃったんだから〜」

 どうして反対されなきゃいけないのか、悔しい。
 押し切って、あっかんべー、と舌を出して。勢いのまま、家を飛び出してきた。

 だって、新一とらんの事だもん。お父さんが口だす事じゃないもん。

 そんなこんなで、予定より早く家を出ちゃったから、約束の時間より三時間も早く、新一の家についちゃって。

 迷惑かなぁ……そう思いながら、ブザーを押すと、新一のお父さんもお母さんも、それから新一も、私の事を快く迎えてくれた。


「へ〜。それでそのまま飛び出してきちまったんだ」
「うん。だって、お父さん意味わかんない事ばっかり言うんだよっ」

 夜、新一の部屋で遊んでいた時に、三時間も早く来たわけを聞かれて、答えた。先ほどの、お父さんとのやり取りの全部。

「それでおめー、機嫌悪かったんだ」
「……えっ? そんな事なかったよっ」

 新一の言葉に、驚いて否定した。機嫌悪くなんて、してるつもりなかったのに。

「でも、今はどーせ後悔してんだろ。言い過ぎたって」
「……う、うん」

 何だって見透かされちゃう。新一は、いっつも推理小説に出てくるっていう、ホームズさんみたい。

「わからずやって言って、べ〜ってしちゃったの。お父さんショック受けてるよね」
「……大丈夫だよ。大人は強いんだって」

 そう言って、にっこり笑った新一。それから、しばらくは何事も無かったように、二人で遊んだ。
 そんな新一の態度は、私の事を元気付けるためだったのかも知れない。

 しばらく遊んで、新一はふっと、窓の方を見た。窓を開けて、身を乗り出して空を見てる。
 何だろうって思って、私は首をかしげた。

「蘭、ちょっと来いよ!」
「どーしたの?」

「ほら、空見てみろ。星が綺麗だよ!」

 窓まで歩いていって、空を見て……

「うわぁっ」

 その満天の星空に、心奪われた。たくさんの星が、キラキラキラキラ、真っ暗な空に輝いていて、うっとりしてしまうくらい綺麗だった。

「きれいだね」と言うと、「だろ!」と返事が返って来て。それから新一は、ちょっとだけ考え込んで話を切り出した。

「星って、人間みたいだよな」
「えっ?」
「ずっと広い空の上で、それぞれ違った輝きを持ってて。でも、どの星も全部綺麗で」
「う、うん……?」

 新一は、たまに難しいことを言ったりする。この時もそう。言っている言葉は、少し難しくて、一瞬、理解できなかった。けれど、そんな私にかまわず、新一は続けた。

「おれ達も、頑張って輝いて、誰にもないそいつだけの、綺麗な光を灯すんだ。そうする事が、おじさんもおばさんも、一番嬉しいんじゃねーか?」
「どうするって事?」
「いつも幸せで、笑ってろって事だよ」

 そうやって笑った新一の笑顔が、私には最高の一番星に見えた。

 心の中から、暖かい何かが沁みてくる。
 いつもそうやって、私を優しい気持ちにしちゃう新一が、私には世界一輝いている一番星に見えた。

「ねぇ、新一……」
「あん?」
「お星さま、本当に綺麗だね」


「ああ、きれいだよ」


 もっともっと、幸せな笑顔でいよう。私も、新一の中で一番星になりたいから。



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こちらは、□■Chibi-Festa■□様参加作品。
イラストと、文章つきで投稿させていただきましたv
こちらも、色鉛筆画なのは、単にパソコン画描く余裕が無かったからという理由で^^;;
ちなみに、蘭ちゃんが新一とそんな時間を過ごしている中、


「あなた、いつまで落ち込んでるのよ!」
「ら……らん……らんが……俺に舌出して……」
「全くもう、子供にわけ分からない話するからでしょ」

 溜息交じりに出された料理を、心ここにあらずで口の中に放り込み、反射的にふき出した。

「………ちょっと、あなた?」

 英理がジト目で睨んでも、「ああ、悪い」と心の入らない返事しか返せない。

「ダメだわ、これは」
「あいつになにか吹き込まれたに違いねーんだ……あんな反抗的な態度をとるなんて」

 涙ながらに訴える旦那を、英理は苦笑交じりに見つめた。

「ら、蘭が今頃、新一の……あのクソがきの毒牙にっ!!」

 その日の夜、そんな英理の苦労があった事など「大人は強い」と思い込んでいる新一も蘭も、知る筈が無い。



なんて、その時のコゴ英理です(笑)
素敵な企画を、ありがとう御座いました。



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