04.「あったかい」





「ねぇ、新一! 早くかえろうよ!」
「ちょっと待てって! もう少し……」
「あんまり遅くまでいると、怒られちゃうよ?」
「見つかるようなヘマするかよ!」

 新一と私が、それを始めてから四時間半。ずっと新一は、しゃがみこんでごそごそするばっかり。
 学校終ってからより道で来たから、もう八時すぎ。外は、もちろん暗くなってて、私達がいるこの中ももう暗くて。

 ただでさえこんな気味悪い所いたくないのに、新一は目的を達成するために必死だから。見つからないように出入り口も閉めて、電気もつけないで、新一はペンライト片手にごそごそとさぐっている。

「もういいよー。しょうがないもん。あきらめる」
「ばーろ。おめーはよくても、俺はよくねぇんだよ!」
「じゃあ、明日にしようよ。明るい方がいいし」
「だって、明日必要なんだろ?」

 そもそも、新一がこんなに頑張ってくれてるのは、私のためだ。
 なくしてしまった園子ちゃんからのお誕生日のプレゼント。

 赤くて可愛いリボンだったから、明日学校につけて行くのを楽しみに、ポケットにしまっていたのに。
 そんなものポケットなんかにいれとくからいけないんだって、新一が呆れた顔で言ってたけど……でも、結局こうやって一生懸命探してくれてる。
 私が動き回った場所、全て探してくれた。で、今は体育倉庫。体育係で、用意をしていた時に落としたのかも知れないと、ここに来てから既に十数分。

 ……本当は、私が探さなきゃいけないのにな。
 私が手を出そうとすると、危ないからやめろって、止められるから。

「じゃあ、おめー帰っててもいいぞ? おめーんちまでそんなに距離ねぇし。後でオレがちゃんと届けてやっから」
「い、いいよ! だ、だって、もし私が帰った後、新一が変な人に誘拐されたりしたら、何か寝覚め悪いもん」
「……ったく、じゃあもうちょっと待ってろよ」
「う、うん」

 返事をして、壁にもたれて座りこむ。ペンライトでちょっとだけ照らされた新一の顔が見えるのが救い。
 暫くして「あった!」と声を上げた新一が、私の前に嬉しそうにそれを差し出した。ペンライトに、プレゼントされた時の可愛い紙袋が映っている。

「これだろ?」
「わぁ、ありがとう!」

 嬉しくてにっこり笑ったら、新一も嬉しそうに笑った。でも、いざそこから出ようとした時に、ようやく私達は異変に気付いた。

「ね、ねぇ……開かないよ?」
「嘘だろ? ……鍵、しめられてる!」

 こっそり倉庫の鍵を開けて入ってきた私達が、数十分の探し物をしている間に、誰か――大方警備のおじさん――がそれに気付いて、鍵を閉めてしまったみたいで。二人で、蒼くなった。

「どど、どうするの!? 私達、朝までこのまんま?」
「……警備のおじさんがもっかい見回りに来てくれるの祈るしかねぇよな……」
「え〜っ?」

 それから、一時間待って、二時間待って。誰も来てくれる気配がないまま、時間だけが過ぎてく。
 私が少しでも不安を感じないように、新一はさっきから色々と、なんでもない日常の話をしていた。それに相打ちしながらも、段々と下がってきた気温に小さく震える。
 半袖と、短いスカート。外の空気が壁の隙間から漏れてくるこの場所でじっとしているには、薄着過ぎたかも知れない。

「あんだよ、寒いのか?」
「新一は寒くないの?」
「……ん〜……」

 少し考え込んだ新一は、突然私をすっぽり抱きかかえた。  驚いて、体がこわばったのも一瞬。何だか、胸がどきどきしてきて、新一の体温が伝わってきて。

「……あったかい」

 他の男の子でも、そうなのかな? それとも、抱きしめてるのが新一だから?
 体の中も外も、暑いくらいあったかくて……安心できるこの暖かさに時間を忘れて、気がついたら、開かなかった扉から、光がさしていた。

「蘭ちゃん、新一君!? 何やってるの? こんな所で」


゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:


こちらは、□■Chibi-Festa■□様参加作品。
イラストと、文章つきで投稿させていただきましたv
色鉛筆画なのは、単にパソコン画描く余裕が無かったからという理由^^;;
素敵な企画を、ありがとう御座いました。



・感想つっこみ大歓迎♪・