Dangerous excuse







 例えば、一生のうちにどれほど死を体感する程の危険を伴う出来事があろうか。
 そんな問いに答えはない。だが、この世に生きる殆どの日人は、平和に生きて、病気か事故かと至極普通の死を迎える事であろう。九死に一生なんてものは、テレビで見て初めてそれを知り、自らとはさほど関係がないように思うであろう。

 それは、危険と常に隣り合わせにあるような、一部の人間とは違う。あなたは、どちら側の人間であろうか。

 ほんの一例だが、”彼”は稀にいる一部の人間の一人であった。




 その日はそこそこの快晴で、欠伸交じりに起きて来たその少年は普段と同じ平日の朝を送っていた。食卓に用意された、ハムエッグとトーストと、デザートのヨーグルトを口にした彼は、普段と変わらずランドセルを背負って出かけた。
 ランドセルの中に、教科書や筆箱や、給食袋を詰めている所も、普段どおりの光景として、小五郎も蘭も不審には思わなかった。
 家を出たのは、朝七時の事だ。蘭と並び笑顔で「行って来ます」と言い残して、学校へ向かった……筈だった。


 娘と居候が出かけてから四時間が経とうとしていた。その日は依頼もなく、小五郎にとっては暇な時間、何もする事がなく呑気に煙草をふかしていた。すぐ手元に置いたラジオから聞こえる競馬中継を聞きながら、時折灰皿に煙草を押し付け、彼は暇を潰していた。

「あのー、コナン君いますか?」

 突然聞こえた声は、そばかすの少年から発せられたものだ。
 いつの間に、勝手に入り込んで来ていたのか。目を丸くしてちょこんと立ち尽くす三人の子供達に、小五郎はぎょっとして、一歩二歩と後ずさった。

「な、ななな、なんだお前ら! どこから沸いて出やがった!?」
「どこって、ドアからに決まってんだろ? 相変わらず鈍いなおっちゃん」
「あんだと〜? 誰が鈍いって……お?」

 呆れ眼の元太の言葉に青筋立てた小五郎だが、頭に浮かんだ違和感に首を捻る。

「オメーら、こんなとこで何堂々とサボってやがんだ。学校はどうした、学校は」
「学校って?」

 当然の事を言った筈が、きょとんと首を捻った歩美に尋ね返され、眉をしかめる。

「コナンの奴なら、もうとっくに行っちまってるぞ」

 今一反応の鈍い子供達に小さく息をついた小五郎だが、次の元太と光彦の台詞で、それは覆された。

「おっちゃん、何言ってんだよ。そんなわけねーだろ?」
「あ〜?」
「……今日は、帝丹小は休みですよ?」
「はぁ?」

 思わず、素っ頓狂な声を上げた小五郎を、半眼が三人分見上げた。
 子供達が言うには、その日帝丹小が休みだったのは、先日に行われた学年交流遠足会の振り替え休日の為だ。学校はない筈だ、と必死で主張する子供達が、嘘を言っているようには見えず、小五郎は更に顔をしかめた。

「だってアイツ、朝いつも通りに出てったぞ? 教科書つめて、ランドセル背負って、蘭と一緒に手ぇ繋ぎながら」
「……じゃあ、もしかしてコナン君、今日学校だって間違えて?」

 数秒考え込んだ歩美の言葉に、子供達二人は賛成したが、小五郎だけは鼻で笑った。

「ありえねぇな、これだからガキは。今何時だと思ってんだ? 学校行ってもやる事ねぇなら、いい加減帰ってくるに決まってんだろ」
「で、ですが、間違えた事が恥ずかしくて、途中で寄り道してる事も……」

 頬を膨らませ、むっとした顔で異論を唱えた光彦にも、小五郎は嘲笑を返した。

「はっ、大体どこの世界に休日を平常授業だと勘違いするガキがいんだよ。オメーらもガキならわかるだろうが。ガキってのはなぁ、学校の休みには敏感に出来てんだよ。……夏休みの登校日を休日を勘違いすんのとは、わけが違うんだぞ?」
「そんなの、勝手な思い込みじゃないですか」
「黙れ黙れ! それにアイツは仮にも、この名探偵毛利小五郎の家に居候してんだぞ? いけ好かねぇガキだが、んなドジかまされてたまるかってんだ」

 自信満々に高笑いした小五郎だが、子供達は白い視線を彼に向けた。

「どこの世界に自分を名探偵なんて言う奴がいるんだよ」

 元太がぼそっと呟いた言葉は耳に届かなかったようだ。高笑いをやめない小五郎に、光彦が再び呟く。

「だったら、どこに行ったって言うんですか」
「知らねーよ! 言いにくい場所にでも行く口実なんじゃねえか?」

 答えた小五郎は、はっとして机に放置されたラジオに耳を済ました。そして、そこから流れる音声に溜息をついた。

「だー、お前達のせいで、どの馬が勝ったのか判らなくなっちまったじゃねーか! 判ったらさっさと帰った帰った!」

 小五郎は彼らを振り向きもせず、猫を追い払うように、しっしっと手を払う。そんな様子を見て、子供達は重い重い溜息をついた。

「判りました、自分達で探しますよ」
「おっちゃんを頼ったオレらがバカだったぜ」
「コナン君、何処行っちゃったんだろー」

 探偵事務所を後にした彼らは、相談しあって二丁目の方に足を向けた。探偵事務所にいない場合の彼は、博士の家に居る事が比較的多いのは実証済みだ。和気藹々と談笑しながら、彼らはそこへ向かった。



  ***



 数名の、帽子を被った黒スーツの男達が、イラついた様子で辺りを走っていた。そんな横を、探偵団達は何も知らずに通る。男達は探偵団に見向きもせず、ばたばたとあちこちを見回していた。

「くそ、くそっ! どこ行きやがったんだ!?」
「近くに居る筈だぞ、探せ!」

 男のうちの一人は「ちっ」と舌打ちして、咥えていた煙草をはき捨てた。草にあたった火が燃え上がりそうになるのを見て、慌てて足で踏み潰す。

「おい、イラつくのは勝手だが、冷静になれよ。怪我人がさほど遠くには行かねぇだろ、いずれは……」
「ああ、判っているさ」

 答えた彼は、汗が滲んだ帽子を一旦ぬぎ、気分転換に熱くなっていた空気を入れ替えた。



  ***



「ハァ、ハァ、ハァ……」
 抑えてもつい口から漏れてしまう荒い呼吸が、静かなその場所にやけにうるさく響いた。すりむいた足を微かに引きずりながらも、足音を殺し、注意深く進む。
 彼の小さな身体の少し奥に、女性が座り込んでいた。彼女を庇いながら、ずっと必死で身を隠し、一歩一歩と前進する。

「ごめんね、まさかこんな事になるなんて」

 彼女が、小さな背中に声をかけると、彼は振り返り、切なげな笑みを浮かべた。

「大丈夫だよ、だから安心して」
「でも、いずれここも……今の内に、あなただけでも逃げなさい」

 眉をひそめた彼女に、返ってきたのは先ほどよりもどこか頼もしく感じる微笑だった。

「いいから僕を信じてよ。ちょっとずつ逃げよう?」

 優しさと強さの篭った笑顔だ。ぼろぼろに擦り傷だらけの顔でする笑みは、やんちゃ坊主のそれにも見えたが、その落ち着きは、子供というには少し違う。  先ほどから、そんな会話の繰り返しだった。少年の優しい言葉には嬉しさを感じながらも、彼女は内心とても困り果てていた。自分よりもずっと小さな、十にも満たない男の子を、巻き添えにはしたくなかった。

「元はと言えば、私のせいなのよ。頼りになるからって、君にあんな相談しちゃったから」

 そう言うものの、彼女は少年を逃がす術を持たなかった。足を撃たれ動けなくなった彼女は、何とか少年の力もかりて、引き摺られつつも逃げてきたのだが。いかんせん、今居る場所が限界だった。
 眼を細めて、彼女は少年の身体を眺める。先ほど、彼女を庇うように派手に転んだせいで、その小さな顔にも身体にも、擦り傷だらけだった。

「怪我、大丈夫? 痛くないの?」
「うん、僕のはただのかすり傷だから」

 歯を見せて笑う少年を見て、彼女はすっと眼を伏せた。たまに思うが、彼は今まで自分が見てきた子供達とはどこか違った強さを持っている。
 もしかしたら本当に、彼が何とかしてくれるかも知れない……一緒にいてつい全てを任せそうになる安心感に甘えないようにと、彼女は必死で自分に言い聞かせていた。



  ***



 阿笠邸地下。来客を告げる音を聞いて、彼女はパソコンを打つ手を止めた。哀は一旦欠伸をしてから、階段を上り玄関の戸を開けた。そこに立つ子供達を見て、彼女は小首を傾げる。

「来てないわよ、江戸川君なんて」

 クールな口調であっさり応えた彼女は、乱れていた髪をかきあげた。
 今、この阿笠邸には、彼女が一人きりだった。そんな状況下で彼が来ても追い返したくなる、というのはさすがに言いすぎだが、博士が居ない事は彼も知っていた筈だ。滅多な用事がない限り、哀を訪ねてわざわざその家に来る事など、そうそうない。

「で、彼がどうかしたの?」
「いえ、実は探偵事務所に行ってみたら、ランドセル持って出かけたなんて毛利探偵が言ってましたから。だったらこっちには来てないかと思ったのですが……いないなら仕方ないですよね」
「ええ、そうね」

 丁寧な口調で応えた光彦に、腕組をしながら返答する。
 彼女の頭には、一つの仮定が浮かんでいた。どうせ、何かの事件に首を突っ込んでいるのだろう、と。

「あの、よかったら灰原さんも……」
「哀ちゃんも一緒に遊ぼうよ!」

 いつも通りのノリで誘ってくる光彦と歩美に、哀は一瞬だけ考え込み、口を開く。

「悪いけど私、やる事があるから」

 抑揚のない声で告げると、三人は残念そうに項垂れた。コナンを探すことも諦めたようで、とぼとぼ帰っていく後姿を見送ると、哀は地価には戻らず、ソファに腰掛けた。

 わざわざ、学校に行くフリをしなければならないような事という。それが一体何なのか、少々気になったのだ。
 数分はそのまま考え込んでいた彼女だが、思い立って立ち上がると、地下室へ走った。引き出しを開け、今でも尚持っていた追跡めがねを耳にかける。
「ピポ」という電子音と共に起動されためがねの点滅されている方角は、あまり行きなれていない場所だ。

「一体、どんな事件に首を突っ込んでるのよ」

 小さく呟き首を捻った彼女は、出かけ支度をして阿笠宅を後にした。



  ***



 そこに来てから、どれ程の時間が経ったろうか。そろそろ、いつ見つかってもおかしくはない。柱から身を乗り出しながら、コナンはじっと神経を張り詰めていた。とりあえずの隠れ家として選んだ廃ビルのようなこの場所だが、所々錆びていて老朽化している。怪我人には、さほど良い場所とは言えない場所だ。

「ねえ、江戸川君」
「え?」

 座り込んでいた彼女に呼びかけられたコナンは、くるりと後ろを振り向いた。

「どうしたの、もしかして、傷が痛む?」

 尋ねると、彼女は苦笑を返す。

「違うわよ、私じゃなくて」
「僕のは大丈夫だってば。擦り傷だって言ったでしょ?」

 声を潜めながらも、けらけら笑ってみせる。だが、彼女はそんなコナンの、ただ一点をじっと見つめていた。

「擦り傷の話じゃなくて、その腕……」

 指差されて、コナンは初めてぎくりと顔色を変えた。向かい合う彼女は、その変化も見逃さない。

「もしかして、酷い怪我してるんじゃないの?」

 真剣な顔で問いかけられて、コナンはバツが悪そうにそっぽを向いた。

「別に、怪我なんかしてないよ。擦り傷はそこら中ついてるけど」
「……でも」

 中々話を逸らさせてくれない彼女に、コナンは微かに居心地の悪さを感じた。

「さっきから、ずっとその左腕動いてないでしょ? あなたは必死で隠してるみたいだけど」

 そう言った彼女は、コナンの肩から力なくぶら下がる左腕に手を伸ばす。びくっと身を引こうとしたコナンの左腕を、逃すまいと力強く掴んだ。途端、彼は顔を思い切りゆがめ、声を上げる。

「って……ぇ!」

 きつく食いしめられた歯が、物事の重大さを語る。先ほどまで涼しい顔をしていたコナンの額からは、汗がどっと吹き出した。よほど酷い怪我をしているのは一目瞭然だ。

「どうして黙ってたの!」
「……い、いや。そんなに大した怪我でも……」
「何処が!? 充分大した怪我ですよ!」

 左腕を触りながら、彼女の顔色が変わる。恐らく、触った箇所に感じるものがあったのであろう。少し怒気を孕んだ言い方に、コナンは苦笑した。

 確かに、その腕は軽傷などではなかった。
 怪我をした彼女を庇うように逃げた時に、男達に発砲されたのだ。それを避ける代わりに派手に転び、同時にもたれかかって来た彼女の体重と自分の重みが、不自然によじれて地面についた腕に全てかかった。早く起き上がらねばと再びその腕に力を込めて立ち上がったその時に「ぐき」だか「ぼき」だか、ありえない音が左腕から直接頭に伝わったのだ。
 何とか、平静を装って逃げてきたが、その時からずっと左腕は動かせない。動かないわけでもないが、微かに動かす度に、激痛が走るのだ。

「服の上からじゃ判らなかったけど、骨折してるわ。この不自然な曲がり方」
「そ、そんな大事にする事ないよ。ちゃんと二人で逃げられたらお医者さんにも診て貰うから」

 下唇を噛み、眉を寄せた彼女を見て、コナンはふっと微笑した。しかし、彼女は強く首を振った。

「お願い。もういいから逃げて。今ならまだ間に合うはずよ。……だから、逃げなさい」

 話す彼女のきつく握り締められた拳は、カタカタと小刻みに震えていた。それを見つめながら、コナンは小さく息をつく。

「逃げられねーよ。オレは、探偵だから」

 言いながら、コナンは服の袖口を破く。そして、彼女の前に座り込み、その足に巻きつける。

「大丈夫。何とかなるから、信じて」
「江戸川君……」

 彼女は瞳を揺らし、じっと手当てするコナンを見つめた。使える右手と口で足に巻いた布をきつく縛ると、彼は顔を上げた。外に視線を送り、眼を細める。

 この間降った雨の影響だろう。時折、天井からは水が雫となって零れ落ちる。実際ただそこでじっとしているわけにも行かないが、足に負傷している彼女を連れて外に出たら、恐らくそれこそ二人共捕まってしまうであろう。
 外では、遠い所で男達の駆けずり回る音が聞こえる。白昼だが、ここは元々人通りも少ない上、近くの住人達は皆仕事に出ている。住人達が家に居るであろう夜よりも、その状況は性質が悪い。
 助けがない以上、自分達の力で切り開くしかないのだ。

 彼は歯を食い縛り、この八方塞な状況に、ただ拳を握り締めた。



 ***



 全ての始まりは、先日の交流遠足だった。
 たまたまコナンたちの班を担当していた、担任の小林澄子は、小さく溜息をついた。そのどこか元気がない様子に、コナンは首を傾げた。隙を見て探偵団たちから離れて、彼女に理由を尋ねる。

「え? 誰かに狙われてる?」

 彼女の答えを、そのまま聞き返す。すると、彼女は頷いた。

「そうなのよ、昨日は突然車に襲われるし、一昨日は、家に鍵がこじ開けられた後があって……だから、遠足を楽しんでるどころじゃなくって」

 彼女の話を聞きながら、段々とコナンの表情に真剣さが篭った。

「狙われる覚えは?」

 尋ねると、彼女は首を捻って考え込んだ。

「何でもいいんだ! 何かあったら思い出して」

 すると、彼女は心当たりをぽつぽつと話し始めた。
 なんでも、先日彼女の友人が、とある相談をしてきた時からだという。先日起きた、四人グループでの銀行強盗が事の発端らしい。逮捕された強盗の人質になっていた彼女の友人は、後日偶然にもその場を通りかかって、強盗時に犯人が持っていた私物を拾ってしまった。
 それは、黒いケースに入っている四角いものだ。大事に包まれている為中身は定かではないが、大きさからするとフロッピーディスクのようだという。ケースは接着剤で固まっており、無理やりあけるわけにも行かず、最初はそのまま警察に届けるつもりだったらしい。しかし、直前に犯人から脅迫の電話がかかってきて、怯えた友人が、親友である先生に相談した、との事だ。怖いから預かって貰えないかと手渡されてしまったその少し後から、先生の身の回りで妙な事が起き始めたという事だ。

 そのケースは、今や巡り巡ってコナンのランドセルの中にある。そして、それは今彼の手元にはない。



 ***



 道を歩く茶髪の少女は、つけた眼鏡の光が点滅するままに歩を進めていた。
 予備の眼鏡は、組織と接触したあの日にコナンの手によって没収されたが、実際彼が知らないところに、いくらでも隠し持っている。

「でも、おかしいわね」

 目的地に向かいながらも、哀は首を捻り呟いた。先ほどから、点滅しているその光は、何ら動きを見せない。自分が歩けば歩くほど、勿論中心部には近づいているが、てっきり何かの捜査で動き回っているものと思っていた。
 おかしい事はそれだけではない。自分が向かっている光とは別に、もう一つの光が、先ほどから隅の方で点滅していた。こちらもまた、動いている様子はない。

「……どういう事なのかしら」

 あごに手を当て小さく呟いた彼女だが、いささか不安を覚えた。動きがないのは、彼に何にかがあったのでは、と。とにかく、一刻も早くそこへ向かおうと、彼女は足を速めた。



 ***



「でも、どうしてランドセルなんかに?」

 尋ねられた言葉に、コナンはふっと笑った。

「もちろん、目くらましだよ? 犯人だってまさか、ランドセルにそんなもの入れておくとは思わないでしょ?」
「でも、毛利さんに渡せばもっと早かったんじゃ……」

 まぁ、確かに『毛利さん』が名を売っている通りに、名探偵ならば……そして自分がただの子供ならば、恐らくは渡していたかもしれない。しかし、とコナンは長息を漏らした。

「生憎だけど、その毛利さんはオレが居なきゃただの迷探偵……もといただの酔っ払いのおっさんだよ」
「え、何か言った?」

 ぼそりと小声で呟いたコナンの言葉に、向かい合う彼女は首を傾げた。なんでもないと軽く笑って見せたコナンは、再び真面目な顔つきに変わった。

 現段階で、犯人の正体も曖昧だ。下手にケースを警察にまわして、失敗するわけには行かなかったのだ。もし、その後に警察の手に渡ってしまったと犯人達に知られれば、小林先生もその友人も、当然の如く危険な目に晒され、恐らくは殺されるだろう。

 更に。ランドセルは身内への時間稼ぎのための目くらましでもあった。
 もし、自分に何かあった場合、ランドセルを持ったまま帰らなければさすがに不審に思うであろう。信用できる相手にランドセルが渡って、警察の元へそのケースが届けられるのは、それからでも遅くはない。

「小林先生、実はね、勝算がちゃんとあるんだよ」

 小さく呟き、ウインクしてみせると、彼女は目を丸くした。
 そう、こんな状況になってしまったら、もうそちらに賭けるしかない。出来れば、自分の手で解決したかったが、自分の意図を気づいてくれる存在に後を託すのだ。
 それは、今日だから出来る、作戦だ。



 ***



「……ロッカー?」

 そこにたどり着いた哀は、怪訝な表情で首を傾げた。だが、点滅する光は間違いなく自分の居る場所のすぐ傍にその存在を示している。
 随分と大きめのロッカーだ。会社員達には使われていて、比較的混みやすい。

「まさか、またロッカーの中で……?」

 呟いた彼女は、顔をしかめた。一度ロッカーに丸く収まっていた前科がある彼はありえない事ではない。
 その時は、恐らく何か事情があったのだろうが、ならば今回は……

「まさか、趣味?」

 呟き、思わず半眼になる。ロッカーに閉じこもって仮眠を取る趣味なんて、よっぽど危ない人だ。
 冗談めいた仮定を打ち消し、彼女は更に発信機の範囲を狭め、奥へと進んだ。進むたび、中はどんどん蒸し暑くなっていく。

「……熱中症やら、酸欠になっても知らないわよ?」

 汗を拭いながら、彼女は呟き、特定のロッカーに手をかけた。だが、鍵がかかっているため開く様子はない。となると幽閉されて閉じ込められた可能性も考えられるが、中に人が居る気配も感じられない。念のため、ロッカーの戸をノックする。

「工藤君? いない、わよね?」

 やはり返事もない事を確認して、哀は小さく息をついた。そして、再び発信機の受信範囲を広げる。

「もう一つ、点滅している方に行ってみたら……何かがわかるかも知れないわね」

 ロッカーを出て、そちらへと歩み始めた彼女は、まだ何も知らなかった。そんな自分の存在が、隙などなかったコナンの考えに生まれた、唯一の誤算だという事を。
 彼女が発信機に気づいて動くのは、あまりにも早すぎたのだ。



 ***



「小林先生、どう? 傷の具合。ちょっとは治まった?」

 気遣うように尋ねられた彼女は苦笑を浮かべ、答える。

「大分ね。それよりあなたの方が酷いでしょ? だから本当にもう」
「駄目だよ。さっきも言ったでしょ? 絶対二人共助かる道があるんだから」

 そう言うと、コナンは彼女の前に跪き、足の怪我を確認する。

「うん、出血ももう殆どないね。結構、布きつく縛ったから。そろそろ、手貸したら立てそう?」

 そう話して右手を差し出す彼の左側を見ると、やはりそちらの腕は肩からぶらんと下がっている。
 足の銃創は、痛みはあれど、先ほどのような力すら込められない痛さではない。彼の手当ての、あまりの手際のよさに驚いていた所だ。そんな彼が、自分の腕はまるで関係ないという顔で話すのが、不思議でならなかった。
 彼女は小さく息を吐き、答えた。

「立てるとは思うけど、あなたの力を借りてもゆっくりしか歩けないし、走る事も出来ないんだから意味はないでしょ。だから、ここが見つかる前に、あなただけでも」
「しつこいなぁ、小林先生も。大丈夫だよ、何度も言った通り、必ず助かる」
「どうするつもりなの、私みたいな動けない足手まといを抱えて……こんなんじゃ、守ってあげる事も出来ないのよ?」

 守る立場にあるのは、大人であり担任である自分の方だと思っていた。けれど、彼は「必要ないよ」と答える。

「もし見つかったら、とりあえず先生には隠れてて貰って、僕が多少は時間稼ぎ出来るから。その間に、全てが終わるよ」
「どういう意味なの? それが、さっき言った勝算と何か関係が?」
「……まぁね」

 こんな状況なのに、どこか余裕を感じさせる顔で笑う彼の真意が、まだ彼女には判らなかった。



 同一時刻。一通の郵便物が、かしゃんという音を立て、阿笠邸のポストに放り込まれた。



 ***



 舞台は変わって、米花駅。電車を降りる頃からずっと騒がしい口論を交わしていた二人の高校生は、そのままホームを通過した。
 急かされたせいで忘れ物をした、と耳元で言い続けるポニーテールの少女に、色黒の彼はついに耳をふさぎ、大声を上げた。

「じゃかぁしいわ、このドアホ! 何でお前までついてくんねん!」
「ええやんか、アタシかて久しぶりに蘭ちゃんに会いたかってんもん」

 関西弁で言い合う二人は、周りに思い切り引かれていた。
 外に出ると、陽は既に沈みかけていた。赤みがかった深い紫に染まりかけた空が、ちょうど美しい時間帯だった。

「よーわからんわ。今日は授業も早よ終わって買い物付きおうて、て頼んだだけやのに、これから飛行機で東京まで行くんや、て。なんで平次が一人で学校帰りにこっちまで来るん? 明日休みなんやから、改めてゆっくり来たらええやん」
「あーほぅ。こっちにも事情があるんや」

 そう告げると、平次はそっぽを向いた。そんな彼を、和葉はじと目で見つめる。

「大体、あんたそんなに蘭ちゃんと仲ええのん?」
「は? な、仲ええで? そら、工藤の女やからなぁ、親友としては、仲良ぅせなあかんやろ」

 慌てる仕草に、彼女は顔をしかめ、首を捻る。

「……アタシ思うんやけど。平次、蘭ちゃんよりコナン君と仲ええんちゃう?」
「えっ」

 不自然に歪めたまま凍りついた顔を、和葉は訝しげに見つめた。

「あぁ、あの坊主なぁ。……そら、あれや。事件に興味があるみたいやしな。色々教えてくれ言うて、やかましぃて敵わんから、色々と教えたってるっちゅうわけや」
「別に、平次が教えんでも、毛利のおっちゃんに聞いてんのとちゃうん?」

 しどろもどろと答えたものの、鋭い突っ込みに平次は再び冷や汗を流した。

「せ、せやから。あんなヘボ探偵に聞いた所で、なんも……」
「ヘボ探偵?」
「あ、ちゃう。そうやのうて、おっちゃん中々教えてくれへんみたいやで? それでオレに聞いとるんや」

 思わず口から滑った真実に、余計窮地に追い込まれた。慌てて訂正したものの、逆に怪しませたようで、彼女は更に横でぶつぶつ話しかけてきた。面倒くさくなって気づかないふりで流しながら、彼はぐっと堪えた。

「ちょ、聞いてんのん? ドアホ!」

 ばこっと、飛んできたバックに頭を叩かれても、彼は理不尽さを感じながら耐えた。そして、そんな道中に溜息をつきながら、彼は和葉と共に探偵事務所に向かっていった。



 ***



 冷たい音が、響いた。音を作ったそれは、同時にちゅいんと気分の悪い音を立て、金属製な柱にめり込んだ。
 コナンは驚いた顔で、そこを見つめていた。既に男が来る気配を察知して一緒に行動していた彼女を隠した所までは良かったが、目線の先にある光景は全くの予想外だ。
 視界には、三人映っていた。にやり、と酷く歪んだ笑みを浮かべる男が二人と、その手中で困惑した視線を彼に送る少女が居る。

「見つけたぜ、小僧」

 低い声でほくそ笑んだ男は、赤みがかった茶髪の少女を、逃げないように押さえつける。

「は、灰原……お前なんでっ!」

 コナンは叫んだ。光景には驚きを隠せない。哀の存在は、彼の中に微塵もなかった。いや、せいぜい阿笠邸でコーヒーでも飲んで、夕方帰ってきた博士と一緒に、その送りつけた鍵に気づいている位だ。
 しゅんとした彼女は、押さえつけられたまま答える。

「ごめんなさい、あなたがランドセルを持って出かけたなんて聞いてしまったから。あなたがどんな事件にかかわってるのか少し興味を持って、見に行くために予備の眼鏡を……」
「ば、ばーろ! 危険な事件だとは思わなかったのかよ!」
「危険な事件だと思ったからよ! だから……気になって」

 コナンは、頭を抱えた。彼女の心中は十分伝わる。だからこそ何も責められず、彼女の話を黙って聞きながら、ただ冷や汗が流れた。
 顔を歪めて押し黙ったコナンに、男の一人は言った。

「一緒に居た女は何処だ? どこかに隠したのだろう」
「……知らねーよ。彼女ならおめーらが来る前に逃がしたからな」

 敢えて強気に答えたコナンの返答に、もう一人の男はにやりと笑んだ。

「足に怪我をしていて一人で逃げられるわけがあるまい。言え、どこだ?」
「ばーろ。例え知ってても、教えられっかよ」

 ぎっと男を睨みつけたコナンに、冷たい銃口が向いた。

「なめるなよ、小僧。教えないなら貴様を殺して女を捜すさ。……勿論、このお友達もな」
「はっ、オレを殺す? 出来るもんならやってみろよ。その代わり、おめぇら全員破滅するぞ」

 挑発的な口調で、笑みを浮かべて返す。哀を捕まえていない男の方はいささか短気なようで、怒声と共に容赦なく発砲してきた。
 避けたものの、頬からすっと一筋の赤が流れる。避けなければ、恐らくそれは致命傷にもなりうる部分に命中していただろう。

「……当たらなかったね。でも、じゃあ判ったよ。教えてあげるよ、おじさん達が知りたがってる事を」
「ほーう? やっと言う気になったか」

 にやりと笑った男が、隣で激昂する短気な男をなだめた。その様子を確認しながら、コナンはゆっくりと口を開く。

「実はさ、僕と一緒に逃げてた人は本当に何も知らないんだ。あの、黒いケースのありかも、何もかもね」

 コナンの言葉に、男はあごをしゃくりあげた。

「何言ってやがる。ケースがあの女に渡ってる事は判ってるんだ」
「だから、それをオレが隠したって言ってるんだよ。彼女には、隠した場所は教えてない。……その隠し場所は、その子を放したら教えてやるぜ?」

 コナンの瞳に、子供の姿とは不釣合いな、鋭い光が一筋輝く。だが、男達はそんなコナンを嘲る。

「バカだな、小僧。おめぇみたいなガキに、そんなもん渡す大人がいるか。それに、もしそうだとして、体よく人質を奪い取るつもりなんだろうが」

 その手には乗るか、とばかりに、哀に銃を突きつけた。そんな行動を眺めながら、コナンはゆっくり俯き、目を閉じる。

「それで、何の得がある……?」
「あ?」

 男が聞き返すと、コナンは顔を上げ、目を開いた。

「どっちにしろ、そいつがオレの所に来たところで、オレもそいつもお前らの人質である事に変わりはねーんだ。俺らは子供二人……そっちは二人だが銃も持ってる。その子をこっちによこしてからでも、どうにでもできるじゃねーか」

 短気な男は今にも切れそうだったが、もう一人は黙ってそれを聞いていた。

「今の状況で、逆に本当にオレを殺すことが出来るのか? それを隠した場所を知ってるっていうオレを。いくら拷問させられても、オレはんな事吐くつもりはない。おめーらにとっても、無駄な労力な筈だぜ」

 きっぱりと男達にそう告げると、哀を抱えていた男は、目を細め呟いた。

「解せねえな……」

 彼はコナンに銃を向けながら言う。

「それが俺らの状況を全く不利にしないと理解して、何故そんな取引を持ち出す?」
「どうせ殺されるなら、せめて早く放してやって欲しいって言ってんだよ。その子は友達だ。そうやって捕まえられてる所見てると気分わりーんだ」
「……尚更解せねぇな。なら、何故逃がしてやれという条件を言わない?」

 当然の指摘に、コナンは気だるげな溜息をついた。

「そりゃ、オレだって勿論その子を逃がしてくれたら教えるって言いたい所だけどよ、んな事言ってもおめーらが聞く筈ねえし、そいつは一人で逃げろっつっても、逃げてくれねーんだよ。……天邪鬼だから」

 言われた言葉に、男の腕に拘束された哀はぴくりと眉を動かした。不機嫌に白い目をコナンにむけ、声には出さずに「わ・る・か・っ・た・わ・ね」とぱくぱく口を動かす。それに気づいて、彼も微苦笑を浮かべた。
 そんな様子を眺めながら、男はふっと笑った。

「まぁ、いいだろう。確かに小僧の言うとおり、どう考えても俺らに損はない。仮に本当は知らなかったとしたら、お前らにはすぐ死んでもらうがな」

 男からじっと目をそらさずに、コナンはどこか余裕ある笑みを浮かべた。
 コナンは小さく息を呑む。一瞬でしとめなければならない。それを逃せば、自分も彼女も殺されると、理解していたから。

「早く、放せよ」
「ああ、そうだな」

 男の手から、哀が放されるその刹那。コナンは、右手でゆっくりと動かない左腕を引き込み、そこにはめられた時計の蓋を開けた。痛めていた左腕に、強烈な痛みが走る。それでも、左目をぎゅっと瞑り、奥歯を噛み締めてなんとか耐えた。
 男に解放された哀が小走りで走ってくるのを確認するなり、コナンはその腕を思い切り持ち上げ、男に向けて麻酔銃を発射させた。針が男の腹に刺さった時には、腹部のベルトから既に白黒のボールが膨れ上がっていた。

 本当に一瞬の出来事だ。コナンが彼女に目で合図すると同時に、完全な形になったボールがベルトから離れ、地面についた。
 凄い勢いでまわされた靴のダイヤルによって、振りあがった彼の足からパリパリと光が走る。ベルトから離れたボールに思いっきり振り下ろしたその瞬間に、哀は横にずれた。

 ボールは無防備に銃を構えていた男に、避ける暇も引き金をひく暇も与えず、ヒットした。男は泡を吹きながら、眠る仲間の上にどっさりと倒れこんだ。

「ふぅ……」

 一部始終を見届けてから、コナンはざっと膝を突いた。無茶をして動かしすぎた左腕が、酷く熱く、意識を奪いそうになるほど痛む。

「え、江戸川君!?」

 すぐ目の前まで来ていた哀は、驚きコナンに駆け寄った。そして、コナンの前にしゃがみこむ。

「どうしたの、大丈夫?」
「……あ、あぁ。奴ら倒したら、何かどっと疲れがきただけだよ。ずっと気を張り詰めてたからな」

 痛みから来る息苦しさとめまいを感じながらも、答えた。話しながら、ゆっくりと、左腕を後ろに隠す。しかし、それに気づいた哀は、すっと手を伸ばした。

「この腕……」
「くぁっ……!」

 伸びた彼女の手に掴まれて引き寄せられ、コナンは思わず声を上げた。しかし、彼女は構わずその左手を眺め、調べた。

「……早いとこ手当てした方がいいわよ? 放っておくと動かなくなるかも。腕の骨折も酷いようだけど、手首もぱんぱんに腫れて熱持ってるわ」
「ち、ちょっと捻っただけだよ。それより、早く離せって! ……頼むから」

 引っ張られている状態は酷く痛みが響く。コナンは顔を歪めながら懇願したが、彼女は離すどころか冷静にその腕を掴んだまま様子を診た。

「……よっぽど酷い捻り方したのね、神経無事かしら」
「なあっ、灰原! 離せよ!」
「……自分じゃ出来ないでしょ。応急手当してあげるから、じっとしてなさい」
「だ、だったらせめてもっと優しく持てよ!」

 声を上げながら、歯を食い縛るものの、彼女には全く通用しない。
「これくらい我慢しなさい」とクールに言いながらも、手当てをする様子はどこか楽しそうだ。そんな態度にむっとしつつも、とりあえず脱した危機に緊張感は薄らいでいた。

「終わったわよ」

 そう告げると同時に、彼女はそっと手を離した。コナンは、酷く響いていた痛みから多少解放されてほっとした顔を浮かべる。一息ついてから、疲れた顔で彼は笑った。

「ありがとな、助かった。……あと、まだ外にあいつらの仲間が居るだろうから安心すんなよ。実は足怪我してる小林先生を隠してて。オレ達で運ぶのはちょっときついから、ココ出るのはもう少し待……っ」
「く、工藤君!?」

 コナンの言葉をさえぎるように、哀の悲鳴がその場に響いた。
 突然の事だった。入り口から現れた影に気づいて、コナンが顔色を変えたと同時に、ぶしゅっと、彼の腹部から血が吹き出して、コナンはその場に倒れた。

「ちょ、ちょっと、しっかりして!」
「く、うぅ……」

 うめき声を出しながら、コナンは右手で傷口をぐっとおさえ、辛そうにくるりと後ろを振り向いた。そこに立つ男は、不満げに舌打ちする。

「反射神経の良いガキだぜ! けど、即死は避けても長持ちはしねぇだろうがなぁ」

 くくくっと喉の奥から笑みを浮かべた男は、先ほど発砲した銃口に息を吹きかけた。煙がふわぁ、と息と共に空気に溶ける。
 男の後ろからは、更に四人ぞろぞろと入ってきた。コナンを撃った男が言う。

「俺ら、強盗で金を山分けしようって集まったんだよな。実行犯は四人だけど、計画立てたり、下見役や見張り役なんかも集めて。ちなみに、あのケースには大事なデータを入れたFDが入ってるんだ。返してくれるよなぁ? そうしたらまぁ、命ぐらいは」

 話す男を、僅かに身体を起こしたコナンはじっと睨みつけていた。

「まぁ、顔も見られてる事だし、口封じに殺してやっても良いけどな。でもたかがガキの記憶なんざ、生かした所で怖くはねぇし。素直に言うなら、なぁ?」
「……なら、教えてやってもいいけどよ……」

 苦しげにコナンが呟いた言葉を聞いて、哀は「え?」と小さく呟き目を丸くした。

「そうか、ならさっさと教えろ。こちとら、時間はあまりとれないんでなぁ」
「ああ、そうだな……けどちょっと待ってくれよ……この、体勢だとだるいんだ」

 途切れ途切れに言った後で、コナンは数回咳き込んだ。左手がまるで機能しないため、右手で傷を支え、その手で身体も支えながら上半身を起こした状態……はっきり言って、かなり辛い。
 じっとコナンを眺めた男は、「いいだろう」と短く答える。

 ふぅ、と辛そうに一呼吸あけた後、コナンはちらりと哀を見た。

「は、灰原……悪いけど、身体起こしてくれねーか? ……じ、自分じゃ起き上がれそうにねーんだ」
「え、ええ」

 返事をして彼の身体にそっと手をかけた彼女は、ゆっくりとコナンの上体を持ち上げた。たまに痛そうに顔をしかめる彼に気遣って、丁寧に起き上がらせた身体を、自分にもたれさせる。

「わ、悪いな……」
「いいけど、大丈夫なの?」
「ああ」

 大丈夫、とは言ったものの、顔面蒼白で苦しげに呼吸を乱した様子は、傍から見てまるで大丈夫には見えない。顔をしかめた哀だが、コナンはお構いなしに小さく笑った。

「言う準備は出来たかよ」

 男は、コナンと哀に向けた銃の撃鉄を下ろす。男とまっすぐ向き合ったコナンは、ふっと辛そうな息を漏らした。

「そんな急かすなよ。こ、こっちは……おめーに撃たれた傷のせいで、今、殆ど動けねーん、だからよ」

 苦しそうに話す彼だが、瞳にはいつもある光がちゃんと存在していた。

「いいからさっさと言え! 時間稼ぎでもしてるつもりか!」
「い、今の状況じゃ、稼いだって……ご、五分にもならねーよ。んじゃあ、ちゃんと教えてやっから、よく聞けよ?」
「ああ、なんだ!」

 声を荒げる男を、コナンはゆっくりと見上げた。一呼吸置いたのち、コナンの口元に笑みが浮かぶ。

「あのケースね、実はコインロッカーに預けてきたんだ。もちろん、鍵はかけて」
「……どこのコインロッカーだ?」
「駅の、すぐ近くに、お、大きいコインロッカーが、あった、でしょ? そこだよ」

 説明するコナンと男を交互に見つめる哀の表情は、とても険しかった。男は苛立たしげに地面を踏みつける。

「それならさっさと鍵をよこせ! 確認するまで逃がさねぇぞ!」
「……うん」

 小さく呟いたコナンは、目を瞑って俯き、呼吸を整えた。

「わ、悪いんだけど、鍵は持ってないんだ。……もちろんこっちの子も」

 さらりと言ったコナンは、子供らしい笑みを浮かべてもう一言付け加える。

「鍵、逃げ回ってる時に、落としちゃったみたい」
「な、なんだと!?」

 銃を握り締めた男達の顔がぴしっと強張る、男の、銃を持つ手がわなわなと震えた。

「なら、何番のロッカーだ!! それだけなら判るだろ!」

 鍵などなくても、一つロッカーを破壊する位は容易い筈だった。しかし、銃を突きつけられたままのコナンは一瞬困った顔で考え込んだあと、言った。

「実は……あの時、夢中だったから」
「ま、まさか、覚えてないとかぬかすんじゃねぇだろうな?」

 ひくひくと顔半分を痙攣させる男に、小さな笑みを返す。

「そのまさかだよ。……ごめんね?」

 甘えるような声を出したコナンに、男は青筋を立てた。
 どこに入れたか判らなければ、どうしようもない。駅前のロッカーはとても大きくて、よくサラリーマンに利用されている。とてもじゃないが、特定できない限りは探し出す事など不可能だ。

「ふ……ふざけるなぁ!!」

 怒りに震えていた男は、ついにその引き金を引く。黒い塊から鉛の弾が飛び出した。咄嗟に、哀がコナンを後ろから抱きしめて庇おうとしたが、弾は哀の腕の間を通って、彼の右肩に当たった。コナンの顔は苦しげにゆがみ、着ていた服は段々と緋に染まっていった。

「江戸川君……っ」

 哀の震える叫びが、その場に響いた。コナンを庇うように抱きしめていた彼女の腕からは、すぅと力が抜け、俯いた彼女の瞳から、一粒二粒雫が零れた。小さく震える手に支えられ、コナンは目を細めた。
 ぴくり、とコナンの右手が動く。撃たれた肩に痛みが走ったが、構わずゆっくりと持ち上げて、ちょうど肩の後ろにある哀の頭を引き寄せ、頬に触れた。表情は横目でも見えないが、触れたその手に、彼女の涙が伝わるのが判った。

「はい、ばら……」

 彼女の耳元で、極小の声でささやいた。口元のすぐ右側にあるその耳に声を届けるのには、ひそひそ話程度の音量で十分だ。

「だ、大丈夫だよ……んな泣くなって。……ぜってー、助かるからよ」

 哀はゆっくり顔を傾け、コナンの表情を覗いた。途端、彼女の瞳が大きく見開く。彼の息は絶え絶えだが、その顔には優しい微笑みが浮かんでいた。

「助かるさ……お、オレも、おめーも……必ず、な」
「……バカ」

 哀は小さく呟き顔を逸らすと、唇をぎゅっと噛んだ。

「慰めあいは終わりだ! あれを持っていないなら、もう用はない!」

 男は再び二人に銃を向け、狂ったように歯をむき出しにして笑った。
 銃を向けられた少年もまた、顔に強気な笑みを作った。冷や汗を頬に伝いながらも、負けまいとして強気を装った。そして後ろでは哀も、男をきつく睨みつけていた。

 ゆっくりと、撃鉄が下ろされる。後は、引き金にかかった指を手前に引くだけで、コナンと哀の命は奪われる筈だった。

「ぐあ!?」

 飛んできた石が、男の銃を握る右手の甲を掠め、短い悲鳴があがった。同時に、その後ろに居た男達は、石の飛んできた方向に発砲した。

「きゃあっ」

 小さな悲鳴と共に、柱から恐る恐る顔を出したのは、コナンが先ほど隠した筈の彼女だった。

「こ、小林先生……」

強く柱に捕まった彼女を、哀とコナンは目を大きくして見つめた。手を貸してようやく立ち上がり移動していた筈の彼女が、まさか自分の力で助けに来られるとは思っていなかった。作戦だからと称して、事が終わるまでずっとそこに居させるつもりだったというのに。

「あ、あ、あなた達! 私の生徒達になんてことしてくれたのよ!」

 震えながらも、彼女の声は強く響いた。
 恐らくは、聞こえてしまったのだ。サイレンサーがつけられた筈の、極僅かな銃声や男の怒鳴り声が。そして、生徒を助けたい一心で、無理やり這って来た。こんな目にあった事などない筈の彼女にしては、怖いだろうに。腰が引けて震える

「……なんだ、居たんだな。貴様も。用済みと思ったら、すっかり存在を忘れて居たさ」

 くっと喉の奥で笑んだ男は、彼女に興味がなさそうに、拾った拳銃を再びコナンと哀に向けた。後ろに居た男達の数名は、彼女にも銃口を向けた。

 震える瞳で、澄子はコナンと哀に視線を送った。血を流して哀にもたれかかるコナンと、彼を支えながら呆然と目を見開く彼女を見て、拳をきつく握り締めた。

「は、恥ずかしくないんですか! そんな小さな子供達に、よってたかって、銃を向けたりして!」

 すると、男達はけたけたと笑う。

「何言ってんだセンセー。俺達の邪魔をする奴はガキだろうと女だろうと殺してやるのさ。大体、こんな小さなガキを関わらせたのは、元はと言えばあんただろ? センセー」

 言われた言葉に、彼女の表情は曇った。男達はまっすぐに、哀とコナンと彼女に銃を向け、冷たい笑みを浮かべていた。
 それは、もう絶体絶命の状況だった。

「終わりだ。この世に別れを告げるがいいさ」

 男は、口元に歪んだ笑みを浮かべた。彼はゆっくりと、銃の引き金を引いた。



 ***



 最初に目を開けたのは、誰であっただろうか。最初から、苦しげに目を開けていた彼は別だが。彼を絶対に守ろうと、ぎゅっと抱きしめた哀は、男達を驚いた目で見つめていた。そして、少し離れた場所にいる澄子もまた然り。

「ど、どうして……」

 小さく呟いた哀の声に、ただ小さく口端を緩めて、彼は答えた。
 コナン一人だけが、さほど驚いた顔もせず、霞む瞳に彼を捉えると、安堵した顔でふっと笑った。

「おせーんだよ。バーロー」

 一同の視線を集めながら、彼はその色黒の顔から白い歯を覗かせ、手に持った木刀を方に軽く置き、にぃと笑った。

「あんな回りくどい方法で伝えるお前が悪いんやぞ? ちゃぁんと間に合うてやったんやから、感謝せぇよ」

 引き金を引いた男は、その場に倒れていた。あの刹那、すさまじいスピードでやってきた彼は、男達が自分の存在に気づくよりも前に、今にも引き金を引く男に向かって踏み込み、痛い一発をお見舞いした。
 そして、何事だ!? と初めに驚いた顔で自分を振り返ろうとした男のわき腹へ、思い切り木刀を振った。後残った男が二人、何事かと驚いているうちに、彼は男達の前へ立った。

「な、なんだ貴様はぁっ!」

 二人のうち、一人がはっとして平次に銃を向けたが、彼はそんな事はお構いなしに、銃を持った手に向けて小手を一発。痛みでその手から銃が離れると同時に、もう一方の男にも、木刀で同じ部位に一発。落ちた二兆の銃を彼はコナンたちの方へと蹴転がせた。

「だ!?」

 片方の銃が平次のつま先に引っかかり暴発した。その弾が頬を掠めたのに、コナンが短い悲鳴を上げる。

「ば、ばーろ……! 殺す気かよ」
「あー。すまんすまん。……当たらへんかったんやし、許しとけや」

 軽く笑いながら謝る平次を、コナンと哀は白い目で眺めた。

「く、くそぉっ!」

 尚向かってこようとする男と向き直った平次は、笑っていた目を一瞬で鋭く切り替え、男の腹部に胴をかました。痛みでうずくまった男に木刀を突きつけ、彼は勝ち誇った顔で笑う。

「あんたら、全然判ってへんなぁ。もうあんたら終わりやで? ほれ、聞こえるやろ、パトカーの音が。フロッピーやったら、回収させてもろて今頃は警察の中や」

 少しの間を置いて、外から車のドアが一斉に開き閉まる音と、十数名ほどの足音がばたばたと聞こえてきた。先頭を切ってやってきた目暮警部や、佐藤、白鳥、高木などによって、犯人達の手には手錠がかけられた。

 傷だらけになって彼女にもたれかかる彼は、安堵した笑みを浮かべながらも、その様子を見つめていた。



 ***



「江戸川君、怪我……大丈夫なの?」
「ああ」

 辛そうに閉じた瞳をそっと開いた彼は、哀の問いに、微笑しながら答えた。駆け寄った澄子は、コナンの元にしゃがみこむ。

「ごめんね、巻き込んだりして」
「だ、大丈夫だよ。……それより、助けに来てくれて、ありがとう。先生」

 コナンは、子供っぽく微笑んだ。薄れていた意識の中にも、演技をするべきだという思いは、確かに存在していた。

「ぐ……げほっ、げほ」

 喋りすぎたせいで、めまいを感じると共にコナンは激しく咳き込んだ。少量の血液を吐き出した。呼吸を整えながら俯きかけた身体を起こすコナンを、哀は慌てて支える。そんな様子を眺めながら、平次は小さく息をついた。

「まぁ、救急車が来るまで余計な事喋らんと、じっとしとき。姉ちゃんも心配しとったで」
「……ら、らんの事、か?」

 コナンが尋ねると、平次はこくりと頷いた。

「大変やったんやで。姉ちゃんや和葉ら誤魔化して助けに来るんは。東京着いて探偵事務所で紅茶もろてたら、あの阿笠っちゅうじいさんが携帯に電話してきよって」

 それもこれもお前が、とぶつぶつ独り言のように、平次は文句を愚痴った。まあ、それも仕方がない。

「大体まどろっこしいねん、お前」

 二時間ほど前、郵送されたロッカーの鍵が、封筒に手紙とともに入れられて届いた。封には、平次だけに上手い事読ませてくれという内容と、平次の携帯番号がしたためてあった。そして、連絡があってからが平次の苦労は始まった。
 帝丹小が休みと知って、ならばランドセルを持ってコナンがどこに消えたのかと心配している蘭や、あからさまに怪しむ和葉らを誤魔化して、博士の家に行く羽目になり。更にその手紙に書かれた内容によって、あちらこちらへと走りまわされる羽目になるのだ。

「けど、ホンマお前、危険な場所に首突っ込むのが好きな奴やのぉ」

 腹部の傷にそっと右手を添え、その右肩からも血を流す彼を見て、平次は呆れた顔で呟いた。コナンはむっとしつつ、苦しげに答える。

「お、おめーに……、言われたくねーんだよ」
「大阪のお友達の言う通りよ。心配する方の身にもなって欲しいわ」

 反論した彼に、後ろからもクールな一言が耳に届いた。だが、そんな彼女の鼓動が早まっている事はコナンの背中越しに伝わっていた。

「悪かったな」

 コナンは敢えて、気づかないフリをしてむくれ顔のまま返した。

「あの……ところで」

 三人のやり取りを見て、何も知らない帝丹小学校の一年B組担任の小林澄子は、困った顔で言葉を切り出した。

「なんや、どないした?」

 答えた平次を、彼女は訝しげに見つめた。

「あなたは、一体誰なの? この子達とどういう知り合い?」
「え?」

 一瞬困惑した平次は、慌てて答えた。

「オレは、その……くど、やのーてこの坊主の」

 平次はそこで一旦言葉を止め、考え込んだ。友人というには歳が違いすぎる。ましてライバルなんて意味不明な事を言えるわけがない。

「ぼ、坊主の……居候しとる、家のおっちゃんの、探偵仲間みたいなもんやな」

 言った途端、哀の冷ややかな視線と、心底から呆れたような溜息が平次の耳に届いたが、彼は敢えて気づかないフリをして、平静を装った。

 そんな様子を眺めながらも、いつの間にコナンは、哀に凭れたまま意識を失っていた。程なくして辿りついた救急車が、コナンを米花中央病院まで運んだが、彼が目を覚ましたのは、それから二日後の事であった。



 ***



 目を開けたコナンは、点滴に繋がれた腕を見て、先日の出来事を思い出した。

「気がついたのね」

 上から声をかけられて、はっとそちらに目線を移す。くす、と微笑む哀に、困惑した顔を浮かべつつも、頭を起こした。

「灰原……あれから、どうなった? 犯人は……」
「安心して、全部件検挙されたわ……今頃は警察で取り調べられてるんじゃないかしら?」

 クールな口調で答えた哀は、そこに置かれた椅子に腰掛けた。同時に、コナンは枕に頭を落とす。それを眺めながら、哀は言葉を続けた。

「小林先生の事も、心配ないわよ。あのあと、ちゃんと病院で手当されて、その日のうちに松葉杖ついて帰って行ったから。……見た目よりずっと軽傷だったみたいね」
「ああ、そっか」

 ほっと溜息をついたコナンは、微かに顔を歪めた。その随分と痛々しいコナンを、彼女は見つめていた。
 悲惨な状況だ。右肩に巻かれた包帯と、左腕を固定するギブスと、腹部の傷だ。

「ほんと痛々しい様ね。これに懲りたら、少しはおとなしくしてなさい」
「……う、うっせーな。大人しくしていられるようには出来てねーんだよ……っつ!」

 苦い顔で口答えをしようとしたコナンだが、言い終わると同時に顔をしかめる。

「バカね、無理に身体を起こそうとするからよ」
「う、うっせー」

 まぁ、起き上がれるわけがない。右腕で身体を支えて起き上がろうとすれば、さほど重傷でなかったにせよ弾を取り出す手術から日が浅い肩に激痛が走るだろう。
 左腕では、支えるどころか彼の思うように動くわけはない。骨が折れただけではすまずに、上腕部から、肘、手首まで酷く痛めたその左腕に関しては、少なくとも一週間は動かさずに固定する事と、安静を言い渡されている。
 腹筋だけで起き上がろうとするなら、背中から受けて腹部を貫通した傷口に激痛が走るであろう。

「まぁ、一週間は少なくとも無理しない事ね。無理したくても起き上がる事すらないでしょうけど」
「おめぇ、冷やかしに来たのかよ」

 コナンは拗ねた声を出し、じと目で哀を睨んだ。哀はくす、と微笑む。

「お見舞いに来たように見えない? そうそう、小学校の方が高校より終わるの早いから今は私しかいないけど、彼女、嘘ついて危険な真似したことに相当腹立ててたみたいだから、一時間は説教を覚悟しておくのね」
「ち、ちょっと待て! 彼女って蘭の事か!?」

 慌てて尋ねる彼が再び歯をきつく食い縛るのを見下ろしながら、哀は「さぁ?」とだけ答えて首を捻った。コナンの顔がどんどん青ざめてゆくのが判る。

「じゃあ、私はこの辺で。彼女によろしくね」

 くすくすと笑って部屋から出て行った哀の後姿を見つめながら、コナンの鼓動は早鐘を刻んでいた。高校が終わって蘭が病院を訪れるとしたら、あと二時間程度だ。

 どれだけ、危険な地に足を踏み入れても、どれ程に危険に遭遇したとしても、必ずそれを切り抜けて帰るべき場所に戻る。今までも、これからもずっと、この一瞬一瞬が何より愛しいものだから。



 ***



 数十分後、蘭は病院にやってきた。まずコナンが目覚めた事実を喜ぶと、周りを騙して危険な事をしたコナンを、心の底から怒り、説教した。説教というよりも、恐ろしい形相で怒鳴る蘭の声を聞きながら、改めて誓った。


 早く、元の身体に戻って、嘘をつかずに解決できるようになりたいと。
 危険な目にあうことがあっても、ある意味拳銃を向けてくる男よりよっぽど怖い彼女に、これほどまでに怒られなくてもいいような、工藤新一の身体に早く戻りたいと。

 切に……切に願った。



 彼の願いが届く事になるのは、それから何日後か何ヶ月後か。
 ともあれ、彼はこれからも危険な道を突き進む。そして、命の限り何度でも、そのピンチを乗り越えてゆく。
 九死から帰還した先の、大切な人の笑顔と、たった一言の「ただいま」の声のために。



ー完ー









あとがき(という名の言い訳)

500番リク、CROWさんより「コナンが危険な目にあって、哀ちゃんも乱入させて、シリアスにすこしギャグをちりばめたみたいな話」

と、リクエストいただいたのは随分前でした。そして、書かせていただいたのはそれからかなりたった頃。
17年の6月3日と日付がされていると言う事は、それでも今より三年以上前の事なのでしたね。
いずれ全てを完全書き直し改稿するつもりでしたが、この長い短編に手をつけたのは、ちょっとこの話を思い出すきっかけがありまして。久しぶりに読み直してみて、そのあまりの未熟さに・・・泣きました(T_T)

アレを人様にと思うと、ホント恥ずかしい><
当時は、比較的私に作りやすいリクの割に、今までやりすぎたネタでもあったせいか苦労したなぁ。
今回は、改稿というよりも書き直しです。別窓に表示させた改稿前の話を見て、流れを確認しながら、最初から最後まで今の自分の意志で書き進めました。
上手いとはそれでも言えませんが、当時と比べるとやっぱりずっとマシな文章にはなったと思う。

と、言うわけでリニューアルしたリク小説。皆さんの目から見ても、少しはマシになったかなぁ?^^;
でも、当時は私よく書ききったよ、こんなもん。しかも、一話完結で。今は、無理なんだろうなぁ。

改稿作業も相当に骨折りでした(;´Д`A ```あ、反応なぞは、いつでも大歓迎です〜♪



それでは、道しるべと引き続きリニューアルバージョンの更新となりましたが、新しくなって初めて見るって方も、昔更新してたとき知ってるって方も、お読み下さった方皆ありがとうございましたーv

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします〜v




〜励ましのお言葉はBBSメールETCよりv〜



H20.07.24.管理人、朧月。(H17,06.03。改訂前)