真実の姿
〜An unpainted face〜





第6話、情報収集

あたしは、一歩ずつ……
けど確実に、真実へと続く階段を上ってった。

とりあえず…整理してみよ。
今分かってんのは、朝の電話の相手がコナン君やっちゅう事……
平次がコナン君の事『工藤』て呼んどる事……
コナン君が何でか平次より立場が強いっちゅう事……
それから何でか平次とコナン君がいつも仲良ぉて…
コナン君が蘭ちゃんに、何か重要な隠し事してるっちゅう事………

「皆ー、紅茶できたよー。」

考えとるうちに、蘭ちゃんが紅茶を運んできた。
あたしと、平次とコナン君に紅茶を渡して、自分の分もとってあたしの隣に座ってきた。
蘭ちゃんは、優しくて…明るくて……ホンマにええ子や。
こんな優しい子に言えへんくらいの隠し事………
一体、何なん???

「和葉ちゃん?紅茶冷めちゃうよ?」
「あ、そやね。」

蘭ちゃんの声で正気に返って、紅茶を一口飲んだ。
温かくて、美味しい……
コナン君も平次も、喜んで紅茶を飲んどった。
いつもみたいに、二人仲良く……
兄弟みたいやて思うてたけど、さっきの会話考えると、
兄弟っちゅうより対等な、同い年の親友みたいや。
同い年の…………

平次は、何でコナン君の事『工藤』って呼ぶんやろ。

そんな、まさか……

あたしの頭の中に、一つの仮説が生まれた。
それは、信じられない事やけど…
もし、そうやったとしたら、全てのつじつまが通るんや。

何で、コナン君がそんな頭がいいかっちゅう事も……
平次がコナン君の事いっつも『工藤』って言うてるのも……
コナン君が、平次と話す時は口調が変わっとるのも……
朝の電話のことも……
平次が東京行ってから、『工藤』が〜って言うようになったんも……

コナン君が、工藤君やから?
平次は、その事知っとって、協力しとるから……?

「…はちゃん……和葉ちゃん、どうしたの?」

蘭ちゃんが、不思議そうな顔であたしの事見とった。

「紅茶、冷めちゃうよ?」

コナン君が、向かいのイスでそんな事言うとる。
これが、ホンマに工藤君?

「なぁ、コナン君って……両親どこに居るの?」

あたしの突然の問いかけに驚いたんか、コナン君が目を丸くして答えた。

「ど、どうしてそんな事聞くの?」
「……ちゃんと連絡取り合ってんのかな…って思うて。寂しくないん?両親に会えへんの。」

コナン君がもし工藤君やったら、そんな疑問も解決するんや。
だって、こんな小っさい子が、親に会えへんの寂しくないわけないやん。
けど、コナン君は……何でもないことみたいに、答えた。

「全然寂しくなんかないよ。」

寂しくない……て。
無理してる様にも見えへんし……
そやったら、ホンマに?

…けど、身体が縮むなんて、考えられへんやん。

ほんまに、工藤君がコナン君なん?

コナン君と平次が、何か神妙な顔で内緒話しとる。
余計怪しいわ。
やっぱり、何か隠しとる事は間違いないみたいやね。



 「なぁ、蘭ちゃん…ちょお頼みがあるんやけど。」

平次とコナン君は、また二人で部屋に篭ってしもた。
多分、またあたしの事話し合ってるんやね。
蘭ちゃんは、あたしの方を見て首を傾げた。

「何?和葉ちゃん。」

平次、コナン君……
何か手ぇ打とうて言うても、そうはいかへんよ!!
こっちも真相に近づいて来てるんやから!!

「あんな、アルバム見せてくれへん?」
「アルバム?」

蘭ちゃんが不思議そうな顔であたしを見とる。
あたしは、なるべく怪しまれないように、頷いた。

「うん、そうや。蘭ちゃんと工藤君の子供の頃の写真…見せてぇな。」
「いいけど、どうして?」

理由は、言えへん。
蘭ちゃんに伝えるんは、全て分かってからて決めてたんや。
確認したいから…何て、言えないやろ?

「ちょお、見たくなってん。ええやん、今度あたしのも見せたるから。」
「う、うん…分かった。」

蘭ちゃんはそう言うて、本棚からアルバムを出して、あたしの目の前に見せた。

「はい。これでいい?」
「うん。ありがとな、蘭ちゃん。」

蘭ちゃんは、もしかしたら不審に思ったかも知れへんけど…
(だって、あたしやったら、絶対不審がるやろし…)
けど、もしこのアルバムに写っとる工藤君の顔とコナン君の顔が一緒やったとしたら……
そしたら、コナン君は……やっぱり工藤君やっちゅう事に。

あたしは、緊張しながらそのアルバムを開いた。


…と、出て来たのは、

ホンマに愛らしい、赤ちゃんの写真…?


か……

「可愛いやん!!何やの、これ!!蘭ちゃん!?それとも工藤君??」

出て来た写真のあまりの可愛らしさに、思わず声を上げて叫んでしもた。
蘭ちゃんは驚いた顔で苦笑しながら、あたしに言った。

「あ、それは私。…新一はね、そこの…青い服着た……」

く、工藤君も可愛いやん!!
平次とどっちが可愛かったやろか…何てあほな事考えて、あたしはその写真をじっと見つめた。
こんな可愛い子が、17年後に蘭ちゃんの事騙して子供のフリして…
蘭ちゃんと一緒に同棲してるん!!?

い、いやや……
そんなん、詐欺やん!!

って、ちゃう!!
あたしが見たいんは、こんなんやない!!

次のページ、次のページてめくっても、
出てくるんは赤ちゃんの写真ばかりやった。

「二人共可愛かったんやね。…あ、蘭ちゃんは今でも可愛いんやけど。」
「そ、そんな事ないよ〜。他に何か見たいのある?」

照れながらそう言うた蘭ちゃん。

「えっとな、今のコナン君くらいの歳のアルバムとか…ないんかな〜て。」
「コナン君くらいって、小学一年生の頃の?」
「あ、うん…そうや。ある?」

笑い方がぎこちなくなってしもたかも知れへん。
けど、蘭ちゃんは突っ込んでくる事もなく、アルバムを広げてくれた。

「これよ。」

そこに、写っとった工藤君……
眼鏡は、かけてへんけど……
その顔は……

「コ、コナン君に似てへん?工藤君て。」

つい口に出してしもた言葉に、蘭ちゃんがどんな反応するか怖かってんけど…
蘭ちゃんはどっか恥ずかしそうな顔で笑った。

「うん…実はね、前に一度その事でコナン君は新一なんじゃないかって疑ったことがあったの。」
「え?」

蘭ちゃんも、疑うてたん?
コナン君が、工藤君やて。

「何で、疑惑解けたん?」
「あ、あのね…偶然新一のお母さんが来て、コナン君の子供っぽい所見せられちゃって…」
「どんな風に?」
「だからね、新一のお母さんの影に隠れて、困った顔で…『蘭姉ちゃん怖〜い』って。」

そんなの演技ちゃうん?
って、思ったんやけど………
あたしも、その姿を工藤君に変換してみて、寒気がした。

「ほ、ほんまに言うたん?」
「うん、それで誤魔化されちゃって…」

けど、そん位の子供らしさなんて、今までも見てきたやん。
何で、誤魔化されてしまうんやろ。

「なぁ、蘭ちゃん…工藤君のお母ちゃんて、どうしてるん?」
「えっ?今外国に行ってるけど…」
「お父ちゃんも?」
「う、うん…」

蘭ちゃんが、困惑した顔しとる。
当たり前やね。あたしも多分同じ事聞かれたら、同じ反応しとったやろし。

「工藤君の両親て、工藤君が急に居なくなってしもて、心配してないん?」
「そんな風には見えないけど…連絡取り合ってるんじゃないかな?」

そんな風には見えへん……
やっぱり、コナン君が工藤君やて知ってるからちゃうん?

「…それやったら、コナン君は?」
「え?コナン君??」
「コナン君の親て、連絡とかして来ないん?」

何かあたし、蘭ちゃんに事情聴取してるみたいや。
でも、本当の事、突き止めんと……前には進めないやん。
皮肉やけど、初めて推理しとる時の……事件解こうとしとる時の平次の気持ちが分かった気がした。
蘭ちゃんは少し考えてから、苦笑して答えた。

「う、うん…そだね。一度コナン君のお母さんが来て、コナン君引取ろうとしたんだけど……
結局、うちで住む事になって、1000万の養育費渡したっきり、連絡は……」
「い、いっせんまん!!?」

思わず、声が上ずってしもた。
そんなもん、突然ポンて出せるもんやの?
口ぱくぱくして驚いとると、蘭ちゃんがまた苦笑して付け加えた。

「そうなのよ。後でお父さんが預かった通帳見て知ったんだけどね。
ちゃっかりもらって……図々しいんだから、うちのお父さん。」
「あ、そうなん……コナン君って、相当お金持ちなんやね………」
「ふふっ、本当だね。」

そう言って笑った蘭ちゃんに、あたしは苦い笑みを返した。
ちょお待って……蘭ちゃん、当然工藤君のお母ちゃんの顔知っとるはずやろ?
コナン君のお母ちゃんにあったて言うんやったら、分かる筈やない?
化粧したって、そんな顔変われるもんでもあらへんし……
わざわざ別人の母親つこたなんて、せこい真似………

「……なあ、蘭ちゃん。工藤君のお父ちゃんとお母ちゃんて、何してる人なん?」

その問いに、蘭ちゃんが怪訝な顔をした。

「どうしたの、和葉ちゃん……今日、本当に何か変だよ?」

ホンマに、心配そうな顔であたしに詰め寄ってくる。
けどごめんな、蘭ちゃん。
それだけは、言えへん……

「何でも、ないんやけど、気になってしもて。
工藤君、あたし蘭ちゃんの話でしか聞いた事なかったし……
コナン君も、お父ちゃんとお母ちゃんと、離れ離れで寂しくないんかな…って思ってしもて。」

そしたら、蘭ちゃんも頷いた。

「うん、私も……コナン君って強いなって思うの。
私は、コナン君くらいの頃にお母さんが出てっちゃって……
お母さんと一緒に暮らせなくなるってだけで凄い辛かったのに……
コナン君、お父さんともお母さんとも離れて暮らして、辛くないのかなって。」

話し始めた蘭ちゃんの顔が、どっか悲しげやった。
そうや、蘭ちゃんのおばちゃん……別居してるんやったっけ。

「あ、新一の両親の話だったよね。
えっと……お父さんが有名な推理小説家で、お母さんは元女優だったの。
聞いた事ない?工藤優作さんと……藤峰有希子さん。」

聞き覚えのある名前に、思わず目を見開いた。
工藤優作っちゅう人の小説は、平次の家で見たことあるし……
藤峰有希子っちゅうあの美人な女優さんやったら、再放送のドラマで一度見たことあったわ。

「その二人やったら知っとるよ!!じゃあ、その二人が工藤君の両親なん!?」
「うん。二人共、凄い優しくて素敵な人。今は海外に住んでるんだけどね。」

そんな有名な人の息子やったん?工藤君て……
え?ちょお待って……女優さん??

「有希子さんて、変装得意やなかった!?」
「え………さあ?」

蘭ちゃんが、困った顔で首を捻った。
その後、何か思い出したみたいに、言った。

「あ、でも……変装教わった事あるっていうのは聞いた事あるよ。」
「え?ホンマに!?」

あたしは、身を乗り出して、叫んだ。
蘭ちゃんは戸惑いながら、頷いた。

「新一と、アメリカに行った時に、変装術を教わったって話聞いた事あるけど……」
「それやったら……別人になったりする事も出来るん!?」
「……分からないけど………多分。」

困惑しながら答える蘭ちゃんに、少しの罪悪感を感じながらも………
アタシの頭の中で………どんどん、工藤君=コナン君説が固定されてった。



けど、その全ての真実を理解するんは、今はまだ……証拠が足りなすぎた。
子供になってしまうなんて話……信じられへんかったからかも知れへん。
あたしは、その時酷く……混乱しとった。


〜第七話に続く〜


あとがきっvvvv

……よし、久しぶりにこの話更新出来たぞ!!
この話もまた、随分間隔空いたなぁ……(苦笑)
今まで、この六話の真ん中へんで止まってたのだけれど……
何とか、ココまで来る事が出来ましたv
もう、この話も残すところあと僅かです。
まだ続くってのにはちょっと驚いてるけど……(苦笑)
それでもせいぜい…あと2〜3話(えっ!?そんなに!!?)
いや、だって……多分次でもう決定的なものを掴むと思うけど……
そっからまだちょっと書く事あるから。
いや、だってこの話のリクが、
新一=コナンと知ったときの和葉ちゃんの反応で、最終的には友情話って事だったので。
随分、しつこい所ぐるぐる回ったけど、やっとメドがつきそうで…(よかった<ほっ)
今回も、読んでいただけてありがとうございました!

さて、大分情報が集まった和葉ちゃんの中で導き出されてく真実!
次回もどうぞ、読んでやって下さいませ!!


H16.11.3 管理人@朧月