真実の姿
〜An unpainted face〜





「あ、もしもし蘭ちゃん?」
『あぁ、和葉ちゃん!久しぶりだねっ!!』

久しぶりに蘭ちゃんに電話して、久しぶりに蘭ちゃんと話した。
東京に遊びに行きたいっちゅう事で電話したんやけど、
つい気になっとった工藤君の事聞いてしもた。
蘭ちゃん、妙に吹っ切れた感じで答えたから、
もしかしてもう工藤君に恋愛感情ないんかなとか思ったんやけど……
その事聞いたら、「今でも好きだよ」て言っとった。

工藤君が居らんようになって、もう半年も経つんや……

あたしには、蘭ちゃんが何考えてんのか分からへん。
東京に行って実際に蘭ちゃんと会ったら、分かるんやろか?
あたしと平次は、明日東京に遊びにいく。
詳しい事は、それからや。


第1話、電話

翌日AM9:30………

「も〜っ、遅いなぁ…平次。」

約束時間は、9:00やった筈やん。
それやのに、30分オーバーしてる今も、あのアホが現れる気配はない。
自分は10分前から待っていたというのに、全く腹立つわ。
文句の一つも入れてやろて思て携帯取り出したら、それが突然震えた。
液晶画面には、”平次”の文字……………

「あのっ……ドアホ!!!」

あたしは怒りに震えながらそれをとった。

『もしも……』
「あんた今どこでなにやってん!!!?」

話し掛けた平次に、構わず怒鳴ってやった。
そしたら、ちょっとは申し訳ないて思ってんのか知らんけど、平次が言った。

『あ〜……すまんすまん。もうじき着くんやけど、ちょお泥棒騒ぎがあってな…
そんでそいつ追いかけとったんや。』
「泥棒やて!??」

あたしは思いっきり顔を顰めた。
………これやから探偵は嫌や。
平次は、電話の向こうで申し訳無さそうにあたしに謝って来とる。

『し、心配すんなや……もう片付けて、今駅ん中入ったところや。』
「当たり前や!!!そうじゃなかったらあたし今頃ぶちキレてんで!?」

受話器に向って、あたしは思いっきり怒声を上げた。
いっつもそうや……あたしは平次に待たされてばっかりや。
あの梅田のビッグマンで待ちぼうけくろた時から、
しばらくの間は気ぃつけとったみたいやけど………

最近はまた時間にルーズやん!!!

けど、蘭ちゃんはあたしよりずっと待ってるんや。
工藤君が帰って来るて信じて……………
もう、ずっと…………半年も。
あたし、蘭ちゃんが何でそこまで強いんか、分からへん。
あたしやったら、平次の事待ってられるんかな?
蘭ちゃんみたいに、ずっと待ってられるんかな?

「和葉!!」

突然響いた大声に、あたしははっとした。
振り向くと、平次が汗かきながら手ぇ振って走ってくる。
あたしがジト目で平次の事見とると、平次は顔の前に手を合わして
スマンスマンて言うて苦笑した。

「遅いで!!あたしが何分待っとったと思ってるん?」
「せやから、スマンって。しゃーないやろ?泥棒が……」
「それはさっき聞いたわ!!」

あたしは平次の言葉を遮った。
あたしとの約束と泥棒と……どっちが大事なん?
分かってるんよ………
平次はそういうの放って置けない性格やって事は。
だからずるいんや…平次は。
ああ言われたら、あたし反論出来へんやん。
平次の事、誰より分かってしもてるんやから。

「……………ええよ、もう。早よ東京行こ?」

いつもやったら、喧嘩してるんやろけど…
今日は何かそんな気になれへんかった。
蘭ちゃんは、もっとずっと長い間、待ってるんやから。
工藤君の事、ずっと信じて……………
あたしは、多分幸せや。

平次と二人、またいつもみたいに会話を交わしながら、
あたしは東京へ向った。

そこで、あたしは一生の中で一番って言うてもおかしくないくらい
驚く出来事に遭遇するなんて事は、こん時は全然考えてもおらんかった。

米花駅に着き、あたしは携帯を取り出した。
これから向う親友に電話をかける。
駅ついたら電話するんやって約束やったから……
コールが数回鳴って、蘭ちゃんが電話に出た。

「もしもし、蘭ちゃん?今米花駅着いたんよ。これから行くから待っとって!!」

蘭ちゃんに会うのも久しぶりやから、あたしは上機嫌やった。
用件だけ伝えて、早よ行こうと思ったんやけど……
平次の方見たら、何でかどっかに消えとった。

「あれ?平次…何処行ったん?」

きょろきょろと周りを見てみたら、平次は隅の方で隠れるようにして誰かと電話しとる。
あたしは何だかその様子が怪しくて、そっと近寄って聞き耳を立てた。

「あ〜、何やお前……まだばれてへんのか。」

楽しそうに苦笑しながら平次は電話の相手にそんな事言うてる。
あたしはむっとした。

また前の不倫相手かいな!!
平次のアホ!!変な女に騙されよって!!!
あたしが蘭ちゃんと長く話しとると思って、油断してたんやな?

腹立てながらも、あたしは黙って耳を済ました。

「お前な、誰の協力のお陰で今まで上手くやってこれたかと思ってんねん。」

呆れた声……
何?何やの、この会話!!!
あたしの頭に浮かんできたんは、平次と人妻の仲睦まじい姿やった。
誰の協力のお陰って…………やらしいわ!!!
けど、次に平次の口から聞えてきた言葉は、あたしの想像とは全くかけ離れた事やった。

「なぁ工藤………いつまで姉ちゃんに隠しとくつもりなんや?」

え?工藤……………??
工藤君の事???
絶対そうや。平次が工藤って呼ぶんは、工藤君しかおらへん!!!
何なん!??この会話。
ばれる??協力!!?姉ちゃんに隠しとく???
姉ちゃんて言うのは、蘭ちゃんの事やろ?
何を隠してるっちゅうんや??

ま、まさか…………平次の不倫相手は……………工藤君!!!?

な、わけないし…………

あたしは、一瞬頭の中に浮かんで来よった嫌(奇妙?)な想像に自分で呆れた。
けど、そうじゃないんやったら、何なんやろ?

え?まさか……
嘘やろ?まさか…………

不倫してんのは、平次やのうて工藤君!!!?

そ…そんなん、許せへん!!!
蘭ちゃんの事あんだけ待たしといて、不倫やて!!!?
一発殴らんと気が済まんわ!!!!

あたしは、もう一度会話に聞き入った。

「……そろそろ和葉の電話終わるやろうから切るで。すぐそっち行くから待っとき。」

平次は機嫌良さそうに、電話を切りよった。

ちょお待って…さっき確か…………
「誰の協力のお陰で今まで上手くやってこれたと思ってんねん」…って。
まさか、平次も工藤君の不倫の片棒かついでるん??
し……信じられへん!!!
二人して、蘭ちゃんの事騙しとったんか!!!?

平次が不思議そうな顔で、あたしがさっきまで居った所を見た。

「……和葉?何処行きよったんや、あのアホ。」

あたしは完全にぶち切れて、平次の肩をポンポンと軽く叩いた。

「…あたしなら、ここに居るよ??」

低い声でそう言うたら、平次がビクッと肩を揺らして、
真っ青な顔で振り向いた。

「か、和葉ァ!!?い……いつからそこに居ったん!!?」

慌ててんのが、よぉ分かる。
伊達に幼馴染みやってるわけやないんやで?

「…蘭ちゃんとの電話が終わってからや。」
「ま、まさかお前……電話立ち聞きしとったんとちゃうやろな!??」

立ち聞きやて!!?
人聞きの悪い事言いよって。
聞かれて困るような事言うてる平次が悪いんやん!!!
怒りはどんどん増長されとる。
あたしは、怒鳴りたくなるんを堪えながら、
平次を睨んで、低い声で詰め寄った。

「あんた、聞かれたら不味い事でも言うてたん?」
「い、いや………そういうわけやないで?ただ、立ち聞きは行儀悪いからなぁ。」

平次の顔が引き攣っとる。
嘘つこうて思うても無駄やで?
あたしは、さっき決定的な会話聞いてしもたんやからな!!!
待っててぇな、蘭ちゃん!!!
あたしが平次を問い詰めて、不倫してる工藤君の居場所吐かして……
二人に土下座させたるから!!!

「………平次?さっきの電話の説明、してもらおか?」

あたしは平次を脅した。
平次は、二三歩後ずさって、何か言い訳を考えとるみたいや。

「せ、説明って………何のことや???」

あくまでとぼける気ぃなん?
ホンマ、最低や!!!

…………ええよ?
平次がその気やったら、今は堪忍したる。
蘭ちゃんの家に着いたら蘭ちゃんに事情話して、
二人であんたの口から全部吐かしたるから、覚悟しぃ!!!!!

「早よ、行こか。」

あたしの言葉に、平次は一瞬驚いた顔して、その後胸をなでおろした。

平次?あんたまさか、これで勘弁してもろたと思っとるんやないやろな?
今より、後の方が怖いんやで???
蘭ちゃんと一緒に絞めたるから、覚悟しいや!!!

あたしたちは、蘭ちゃん家に向った。
その道中、平次とは何の会話も交わさんかった。
平次はびくつきながらあたしに何度か話し掛けて来よったけど……
あの電話の説明以外、あたしは聞く気はなかった。

けど、まさかその疑惑があんな形で晴れるなんて、全然思わんかったんや。
だって、まさかあんな事が無かったら、多分あたしは気付く事はなかったんやから……


〜第二話に続く〜


作者あとがきっ!!!

えっと……初訪問者、明子様のリクで…
「コナン=新一と知ったときの和葉の反応。」という事で、
コナン&和葉の友情話希望という事だったのですが…………
まだ友情も何も出てきてないじゃん!!!
しかも続き物になっちゃいました;;;;;;
ごめんなさい、明子さん………(涙)
これからちゃんと友情話になるから……第一話はこれで勘弁して下さい。
朧は根っから短いのあんまり書けないらしくて………
しかも関西弁凄い自信ないっっ!!!
こんな作品ですが、どうぞよろしくお願いいたします(苦笑)