貴方が月なら私は…




第一章 私の……夢


「おはよう、哀ちゃん!」
「あぁおはよう、吉田さん。」
「…どうしたの?」
「え?」
「元気…ないよ?」
「そんなことないわよ。」
「そお?ならいいんだけどさ!」

そういって歩美はかけて行った。
そして誰もいなくなった後に、ふと哀が見せた悲しげな表情をコナンは見逃さなかった。
そして…

「おい、灰原。ちょっとこい。」
「な、何よ?」

ま、まさかもうバレた……?
工藤君、探偵だものね………

そしてコナンに手を引かれ、哀は屋上へきた。

「おい灰原。なんかあったか?」

やっぱり……
でもここはひとまず…

「何もないわ。」
「嘘つくな……俺にはわかるんだよ……探偵なめんなよ?」

そういって真剣に……けど不敵に笑う彼の顔に少しドキッとしてしまう自分がいた。

「ふっ……貴方にはかなわないわね……。」
「当ったりめーだ!」
「笑わない…?」
「あ、あぁ。」
「……寂しいのよ。」
「え?」
「…寂しくて、悔しいの……。」
「は?」

「最近…いえ随分前から思うの…どうして組織になんかはいっちゃったのだろうって……。
もし入ってなかったらも今頃"白"のままでいられたのにって…
私が薬なんか作ってなきゃ誰も苦しまなくてすんだのにって…。
……彼女がうらやましいの。」
「彼女って…蘭かよ?」
「えぇ。彼女は綺麗過ぎるほどよ。…時々傷つけたくなるくらいに……」
「えっ?ちょ……」
「だからって傷つけたりはしないわ…。」

わからないけどね…とふふっと笑って言った。

「でもうらやましいのは本当よ……?彼女は私の欲しいモノをすべて持っているのに
まだ足りないと泣いている……それが悔しいのよ……」

彼が、
なにがほしいんだ?言ってみろよ。買ってやるぞ?
といったから、
馬鹿ね…お金で買えるものではないわ……
と返した。

「はぁ??」

と言っていたがそれを無視した。

「……もういいかしら?」
「えッ?」
「もう話すことは話したのだし……」
「あ、あぁ。」

そして私たちは教室へと戻った。


そして算数の授業。

「は〜い!この問題、分かる人〜?」

担任の小林先生の声と、その声に答える子供たちの声が響きあう。
哀はこんな時が…好きだった。
組織にいたときにはのんびりと過ごせなかった、小学校での時間。
なんだか…自分が優しくなれる気がして。
自分の罪が許される気がして。


でも、そんなことはありえないと、自分で自分を……自分の殻に閉じ込めてしまう。


ふと隣から、探偵の声が聞えた。

「ったく…こんなのやってられっかよ……。」
「何故?私は好きよ。こういうの。」
「ん?何故って……つまんねーだろ、高二の奴が、小学生にまじってお勉強とは
…泣けてくるぜ……。」
「あら、今は小学生ではなくて?」
「うっせーよ!」
「…悪かったわね。」
「あん?」
「私のせいで……。」
「バーロ!もういいって言ってんだろ?元々は奴等が悪いんだし。」
「…えぇ。」



彼の言葉は、
なんて心強いのだろう。
なんて心に響くのだろう。

彼の言葉はいつも勇気に変わる。
彼の言葉は薬になる。
いつも上手に私の罪(きず)を癒してくれる。

貴方の瞳を見ていると………
私を見てくれてなくてもいい……なんて時々思ってしまう。
それほどに貴方の瞳は蒼く、吸いつけられるから………

私、まだ貴方に言ってないことがあるわ……
私の……夢。

でもまだ言わない。
まだ?その時?ではないし、
それが?本当の夢?ではないかもしれないから……

でもいつか話してあげる。

呆れられても笑われても拒絶されてもダイジョウブな自分になれるまで……


待っていて…………






〜第二章へ続く〜


管理人より…というか叫び?

美奈さんからいただいた素敵小説第一章です!!
うふふふふ……vvv(←怖っっ)哀ちゃんが素敵だわvvv
コナン君を思う彼女の気持ちが、とても伝わってきますっっvvv
そうですよね……哀ちゃん寂しいですよね。
蘭ちゃんは哀ちゃんが欲しいものほとんど持ってるんですよね……
それは例えばコナン君からの愛だったり……
生まれてからずっと、何の汚れもないままだったり……
(いや、哀ちゃんが汚れてるって言ってるわけじゃなくて…)
色々持ってるんですよね。
哀ちゃんが羨む気持ちがわかるわ…
では、第二章も是非!!

H16.8.6 管理人@朧月