「名探偵、何だよ、浮かない顔してんな」
「うるせーなー、オメーこそなんだよ、ニヤニヤしやがって!」
「私は、偶然盗聴していた電話で、探偵事務所の彼女にデートに誘われて困り果てるアナタをからかいに来たわけですが……」
「判ってんなら、帰れよ。オメーの相手してやる余裕はねーんだ。アイツを、なんとか悲しませずにやりきる手段を考えねーと……」

 そう呟くなり、黙り込んだコナンをじっと眺めたキッドの顔に、怪しい笑みが浮かぶ。

「勿論、助けてやろうと思って来たつもりですけど」
「は?」

 手招きされて、怪訝な顔でキッドに歩み寄るコナンの肩を抱く。
 そして、彼はニヤケ笑いを浮かべながら耳元で囁いた。

「オレが影武者でもやってやるぜ! 工藤新一になってな」
「…………あん?」

 コナンの脳裏によぎるのは、かつて見たもっともふざけた自分に扮したキッドの姿。キュートなんて台詞を吐き、蘭にある事ない事吹き込まれたあの記憶。

「てめぇ、助けるつもりなんてさらさらねーだろ」
「心外だな、折角考えられる最高の案を持って来てやったってのに」
「オレの目の前で蘭にいかがわしい真似してみろ、オメーをぼこぼこに蹴り飛ばして、警察に突き出してやっからな」
「おやおや、よっぽど彼女にご執心のようですね、名探偵さんは」
「へっ、悪いかよ! とにかく、その案は却下だ。絶対に許さねー!」

 強気にキッドを追い払ったものの、さてどうしようかとまた悩む。
 電話越しの蘭も、いつもの数倍強気だった。

「こんなに先から言ってるんだから・・・・・・一日くらいあけてくれてもいいでしょ? たまには、事件より私との約束優先してよ、新一!」

 そこまで言われては事件という名目で断るのは叶わない。
 どうしようと悩むコナンの頭に、蘭の涙が浮かぶ。
 悶々と選択肢を彷徨った後、しぶしぶの決断が生まれるのはそれからほぼ一夜明けた後だった。



****************
こちらは、けいさんへのバースデープレゼントにv
キッドさんからの影武者立候補と、蘭ちゃんを思うコニャとw
けいさんへ、親愛をこめてーvvv←