先ほどから、ぺろりぺろりとその口元に、見惚れていた。前を歩く灰原さんは、ずっと憧れの女性で。
 段々、アイスクリームがうらやましくなってきてしまった。

「は、灰原さん……そのアイス、僕にも一口……」
「あら、どうして?」

 ぺろぺろとなめながら、答えた灰原さんに、ぐっと言葉がつまる。
 恥ずかしい……こんな事、考えてしまう僕は、とっても、恥知らずないけない男なんでしょうか……
「いや、それは……おいしそうだなぁ、と」

 とりあえずあまり考えても居なかった繕い文句を口にして。すると、前からくすり、と小さく笑う声が耳に届いた。


「間接キスになるわね? ……それがしたいの?」

 なんてことを、さらっと言うんですか、灰原さん!!

「い、いえ!断じてそういうわけではっ!!」

 どうしよう、どきどきがとまらない。
 いつも、そうやって僕よりずっと大人っぽい彼女に、僕はかなわないんです。
 顔が、熱いけれど。どきどきしながら、前の彼女を伺った。
 彼女は、くすりと一笑。

「い、や、よv」

 楽しそうに、そう答えて。
 くすくすっと、小さく笑って、桜の花びらが落ちたソフトクリームを、また一なめ。

「……でも、間接じゃなくて、ほっぺにキスならしてあげてもいいわよ?」
「い、いいいいえ、そんなっ!!」
「冗談よ」

 慌てた僕を一言で黙らせながら、再び手元のソフトクリームを舐めながら歩く灰原さんの後を追った。

 ……かわいすぎますよ、灰原さん。

 願いなんてかなわなかったけれど、ただただ、そう思った。


「お願いしますっ、一口だけっ!!」
「だめ」

 くすくすと、灰原さんの口元からこぼれる笑い声が、桜並木の下で、楽しそうに響いていた。



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 さて、光哀の日、今年はしっかり参加させていただきました〜vv
 こちらは春、のイメージで。光哀度が低い気もしなくはないですが、ほんわか、ほのぼのとしたイラストが描きたかったのです〜vv

 光哀の日企画開催中限定で、フリー配布しておりました。(現在はフリーではありません)
 それでは、素敵な企画ありがとうございました〜vv

 2006.3.21 蒼い月の夜@朧月