先ほどから、ぺろりぺろりとその口元に、見惚れていた。前を歩く灰原さんは、ずっと憧れの女性で。 段々、アイスクリームがうらやましくなってきてしまった。 「は、灰原さん……そのアイス、僕にも一口……」 「あら、どうして?」 ぺろぺろとなめながら、答えた灰原さんに、ぐっと言葉がつまる。 恥ずかしい……こんな事、考えてしまう僕は、とっても、恥知らずないけない男なんでしょうか…… 「いや、それは……おいしそうだなぁ、と」 とりあえずあまり考えても居なかった繕い文句を口にして。すると、前からくすり、と小さく笑う声が耳に届いた。 「間接キスになるわね? ……それがしたいの?」 なんてことを、さらっと言うんですか、灰原さん!! 「い、いえ!断じてそういうわけではっ!!」 どうしよう、どきどきがとまらない。 いつも、そうやって僕よりずっと大人っぽい彼女に、僕はかなわないんです。 顔が、熱いけれど。どきどきしながら、前の彼女を伺った。 彼女は、くすりと一笑。 「い、や、よv」 楽しそうに、そう答えて。 くすくすっと、小さく笑って、桜の花びらが落ちたソフトクリームを、また一なめ。 「……でも、間接じゃなくて、ほっぺにキスならしてあげてもいいわよ?」 「い、いいいいえ、そんなっ!!」 「冗談よ」 慌てた僕を一言で黙らせながら、再び手元のソフトクリームを舐めながら歩く灰原さんの後を追った。 ……かわいすぎますよ、灰原さん。 願いなんてかなわなかったけれど、ただただ、そう思った。 「お願いしますっ、一口だけっ!!」 「だめ」 くすくすと、灰原さんの口元からこぼれる笑い声が、桜並木の下で、楽しそうに響いていた。 ********************* さて、光哀の日、今年はしっかり参加させていただきました〜vv こちらは春、のイメージで。光哀度が低い気もしなくはないですが、ほんわか、ほのぼのとしたイラストが描きたかったのです〜vv 光哀の日企画開催中限定で、フリー配布しておりました。(現在はフリーではありません) それでは、素敵な企画ありがとうございました〜vv 2006.3.21 蒼い月の夜@朧月 |