☆キラキラのひととき☆ 「蘭姉ちゃん、ほら、こっちだよ!」 優しい声が、私を呼んでる。 コナン君――新一が居なくなった代わりみたいなタイミングで、私の所に現れてくれた。 可愛い、弟みたいな存在で。でも、弟って言うのとはちょっと違うのよね。 私に見せたいものがあるって、案内してくれる背中は、まるでアイツみたい。 大きさは、子供の背中なのに。ずっと付いていきたくなる。ずっと、見ていたくなっちゃうの。 「蘭姉ちゃん、どうしたの?」 「ううん、ごめんね、何でもない」 覗き込んで来るあなたに、私はちょっぴり苦笑いで返すの。首をかしげながら、またあなたは前を歩いてく。 ホントはね、ちょっぴり判ってるの。あなたがいつか、どこかに消えてしまうって事。私が新一との再会を果たしたら、きっとその時にはもう、居ないんだよね? あなたとの、この一瞬一瞬は、きっと幸せな幻みたいなものなの。 神様が……それとも新一が、ほんの限られた時間だけ私にプレゼントしてくれた、凄く大切な幻の時間。 「でね、もうすぐ新一兄ちゃんも帰って来れそうなんだって」 「……うん、電話で聞いたよ」 凄く嬉しい気持ちと、凄く悲しい気持ちが湧き上がってくる。自然と声のトーンが下がっちゃったせいかな? コナン君が、不思議そうに見あげてきた。 「嬉しくないの?」 そう。いつか、夢から醒める時が来たら。"コナン君"とは永遠のお別れ。 別れたくないよ、コナン君。あなただって、私にとってかけがえのない存在なんだから。 落ち込んでる時、苦しい時、それに嬉しい時も。いつだって傍に居て、いつだって私を励ましてくれてた。私の心の中を、優しさで満たしてくれた。 一歩、一歩と進むごとに、少しずつ近づいてく。 「蘭姉ちゃん?」 この、ちょっぴり高い声も、顔も、見納めなのかな? 「うん、嬉しいよ。ずっと待ってたから。……コナン君も、新一が帰ってきたら三人で色んな所遊びに行こうね?」 声が、震えちゃった。 何言ってんだろ、私。こんな事言っても、コナン君を困らせるだけじゃない。ほら、さっきまで笑ってくれてたコナン君の顔が、ちょっぴり寂しそうに変わってる。 「……うん、そうだね。ボクと新一兄ちゃんと蘭姉ちゃんの、三人で」 俯いて、小さく口元だけ笑って、そう答えたコナン君の表情がよく見えないの。考えてる事も読み取れないけど、くるっと目的地に体を向けたあなたが、妙に大人びた背中を見せたの。 「嘘じゃないからね、蘭姉ちゃん」 「え?」 唐突なあなたの科白に、そんな間抜けな聞き返ししか出来なかったよ。あなたの声は、凄く落ち着いてて、でも凄く強い意志が篭ってる。 「姿形がどうだったとしても。ボクは、いつだって"ここ"に居るよ。寂しくなんかないよ。いつだって、三人一緒だから」 振り向いたあなたの顔が、ほんの少しだけ悲しい笑顔を浮かべてて。でも、すぐにいつもの優しくてちょっぴり子供っぽい笑顔に変わってく。 「行こ、蘭姉ちゃん! もうすぐ着くからさ」 行く先を指差しながら、明るい声で私を呼んだ。 「うん」 私も、気がついたら微笑んでて、もう一度あなたの後ろを歩き始めたの。 もう少しだけ、一緒に居られるよね? もっとずっと、隣に居てくれるよね? 限られた時間の幻なのかも知れないけど、それでもあなたはここにいるから。 私の中で、今もこれから先も、ずっと大きくキラキラ輝いてる。 コナン君、あなたと一緒に居るこのひとときは、凄く大切な宝物だよ。 だから。この一瞬一瞬を、ずっと大事にしていたいな。 ****************** ちょっと切なくコ蘭もどきを。蘭ちゃん視点のコナン君風味で。 つくづく私は突発文が苦手だなーと実感した瞬間^^; ええ、イラスト描いてた時は、文章つけるつもりなんかさらさらなかったです。でも、描き終わったら何かこんな雰囲気の文が欲しくなって。 こんな短い文にも関わらず、一時間弱かかってます(^_^; 思い出の中での一瞬一瞬をイメージしたくて、敢えてセピア調で、レトロに色鉛筆で。 ペン入れのときに、蘭ちゃんの目をしくじったというエピソードつき(苦笑) 少しでもお気に召していただけたなら幸いですv |